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調査研究の概況[pdf308kb] 調査研究の概況[pdf308kb] 調査研究の概況[pdf308kb] 調査研究の概況[pdf308kb] |
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佐野 真理子 さん | ||
http://greenconsumer-tokyo.net/ | ||
30万円 |
2002年12月の助成申込書から
生分解性プラスチック(グリーンプラ、GP)は、石油資源に由来しない、微生物によって水と炭酸ガスに分解し土中等に還元される「資源循環型素材」として開発され、今後の技術開発により、国内では2010年代に全プラ市場の1割を超える勢いにあるともいわれています。
生分解性プラスチックは、製造過程で微生物に対して遺伝子組み換え技術が使われたり、一般プラのように着色用添加剤が混入される、石油系モノマーが多く残留したりするなどの課題が未整理のまま市場に放出されているのが実態です。
適切な処理方法についても未確立の段階であり、かかる状況では生分解性プラスチックの普及がかえって深刻な土壌汚染を引き起こし生態系バランスの破壊に拍車をかける危険をはらんでいます。
この研究は生分解性プラスチックが循環型社会に果たす役割に期待し、その適切な生産と処理が行われるようにするための課題の整理と対応策の検討を行います。
中間報告から
生分解性プラスチックは、【1】枯渇性資源に由来しない、【2】微生物によって水と炭酸ガスに分解し土中等に還元される「資源循環型素材」として開発されてきました。
しかしこれらは製造過程で微生物に対して遺伝子組み換え技術が使われたり、一般プラのように着色用添加剤が混入されるなどの課題が未整理のまま市場に放出され、無造作に土壌に還元されるケースが今後増大するおそれがあり、生分解性プラスチックの普及がかえって深刻な土壌汚染を引き起こし生態系バランスの破壊に拍車をかける危険をはらんでいます。
本研究は生分解性プラスチックが循環型社会に果たす役割に期待し、その適切な生産と処理が行われるようにするための課題の整理と対応策の検討を行うものです。
本年度に入ってからは、従前より行ってきた文献調査を継続的に行うとともに、協力いただく学識者等を選定。生分解性プラスチックの開発動向に異を唱える天笠啓祐(市民バイオテクノロジー情報室)に研究協力を要請し、研究の枠組みや調査手法についての調整を行ってきました。
業界団体である生分解性プラスチック研究会には、本会主催の研究会への参加と情報提供等の協力を求めているところです。
完了報告から
<全体要旨>
生分解性プラスチック(以下GP)は、微生物が分解してくれる点で、従来のプラスチックに比べて環境への配慮において一歩進んだ材料といえます。しかし、業界の生き残り戦略も絡み、せっかくの利点も生かされていないのが現状です。しかもライフサイクルの観点からも環境に負荷をかける側面もあります。
GPは、【1】大量生産・大量消費を前提にせず、【2】石油を原料に用いることなく、【3】生物由来でありながら遺伝子組み換え生物を排除し、【4】添加剤も含めて安全性評価を厳しくする、などの条件が揃って始めて、環境に優しく、従来の材料に置き換わることができます。
<生分解性プラスチックの現状>
国内市場は1万6千t/年規模となっており、プラスチック全体シェアの0.1%を占める程度で、ほとんど普及していません。石油からつくる化学合成系(脂肪族ポリエステル)と、主にトウモロコシなどデンプンからつくる生物系合成系(ポリ乳酸)とに二分され、今後ポリ乳酸の割合が増えると予想されます。
GPには、主原料・副原料に用いる樹脂と、添加剤として認められている天然有機材料の総計が50%(重量 or 体積)以上であるとする、という規格が、「生分解性プラスチック研究会」によって規定されています。添加剤にはポジティブ・リストがつくられており、それ以外の添加剤の使用は認められていないものの、具体的な化学物質名が表記されていないものが多いです。同研究会は化学企業やバイオ企業によってつくられている業界団体であることから、環境保護よりも利益優先の姿勢が強くなる傾向にあります。「グリーン・プラ」マークを製品に表示できる制度の管理もしていますが、表示方法や表示義務などの面で表示本来の機能が十分生かされる仕組みとはなりえていません。
化学合成系は石油化学製品の一環としてつくられるため、製品それ自体は分解しやすくなっているものの、他の分解できないプラスチックも同時につくられており、環境保護型の製品とはいえません。生物系合成系は、主に輸入で、現在は米国のカーギル・ダウ社製のポリ乳酸が用いられています。米国でのトウモロコシの栽培状況は、今年は半分に迫る46%が遺伝子組み換え品種になっており、遺伝子汚染などが広がっている現状からも環境保護型の製品とはいえない現状にあります。
日本のメーカーでは、トヨタ自動車がポリ乳酸製造の大型プラントを建設予定です。政府は米穀の無償提供や助成金を出して、米の加工・利用促進開発を目的にしたポリ乳酸製造のプロジェクトを進めています。
<安全性評価について>
使用できる添加剤には、ポジティブ・リストが作成されている。ISO14021に基づいているが、自主的な設定を前提にしており、リストは同研究会が任意設定したものとなっています。安全性評価を課してはいるが、食品添加物は除外され、その他の添加剤に関しても、基本的に急性毒性だけの評価です。添加剤の添加が50%未満まで認められており、製品の出来ばえに対する最終製品メーカーの要求は厳しく、必然的に添加剤が多くなる傾向にあります。また、有害物質のいくつかには特定元素として含有量上限値を設定しています。例えばカドミウムについては0.5ppmと設定しているが、水質基準の0.01mg/l以下や、食品として流通を認められている規制値(コメ)の0.4ppm以下に比べて高い設定となっています。さらに非分解性有機材料が5%まで認められているばかりでなく、添加剤の分解生成物(中間体)には安全性評価が不要であること、有機体の安全性評価が急性毒性だけであるなども問題です。
<環境負荷について>
現在一般消費者が手にする大半のGP 製品は、通常のプラ製品と同様に廃棄か焼却されているのが現状です。生物由来のGPでも有機物質の炭素により、焼却によってCO2が排出され、地球温暖化防止という観点からも問題です。リサイクル識別マークにおいても「その他プラ」に分類されるというが、適切なリサイクルルートも未確立であり、現状では環境負荷低減に貢献する素材といは言い難いのです。
<理想的な使用方法について>
大量生産・大量消費を前提にしません。主原料は、石油を用いないで、生物由来であること。遺伝子組み換え作物は排除すること。添加剤は最小限にし、生分解性であり、分解代謝物の安全性が確認されていること。特定元素などの有害物質の存在は、水質基準や食品の残留基準並みとします。
例えば農業用マルチフィルムのような、明確な用途だけに使用を認め、焼却させずコンポスターで分解させます。表示が明確であり、リサイクル識別マークも「その他」ではなく、GPである旨を明示し、消費期限も明記されていること。
今後の展望
生分解性プラスチック(以下GP)は自治体の生ごみリサイクル用の袋や愛知万博の会場内で活用される予定の他、国のバイオマス・ニッポン総合戦略の一環に位置づけられ、環境負荷低減型のプラスチックとして社会的な期待は高まる一方です。しかし、現行制度の下でGPが普及すれば、新たな土壌汚染問題や、地球温暖化などにもかえって拍車をかける結果となる懸念は拭えません。
当会では、GPの適正利用が図られるよう、安全性を含めた制度面での不備については国や業界団体に問題提起を行なう他、広く市民にも問題意識を高めてもらう広報活動を行っていきたいと考えています。また、欧米においてもGPの開発は進んでおり、海外の研究者との情報交流の必要性も感じています。