沖縄環境ネットワーク | ||
砂川 かおり さん | ||
100万円 |
沖縄米軍事基地の環境問題への地域住民参加をめざします。
【 この助成先は、2003年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2003年度の助成事例 】
中間報告から
2002年4月
●米国の環境NGOを招き、北谷町でフォーラム「米軍基地の環境問題とその対策」を開催
2002年5月
●石川市漁協具志川支所と具志川市職労へ共同調査を申し入れ
●在沖海兵隊施設部環境保全課の環境セミナーへ参加し、取り組みの紹介と地域レベルでの協議会の設置の必要性について報告。
●沖縄環境ネットワーク通信で「米軍基地の環境調査」プロジェクト報告(1)を発表。
2002年6月
●沖縄環境ネットワーク総会で、プロジェクトの活動を報告。
●日米合同委員会環境文化委員会が実施した「キャンプ・コートニー水域のヒジキに 係る補完的調査結果について」(評価書)を入手。
2002年7月
●福岡県総合射撃場の鉛汚染問題における環境調査、浄化事業に関して関係者へヒアリングを実施。
●衆議院決算行政監視委員会において、県選出の議員を通じて、政府の報告書の問題点 を指摘。当該地域に鉛49トン(推定)が分布という日本政府の認識を確認。
2002年8月
●ヨハネスブルグサミットの市民社会フォーラムで韓国、米国のNGOと共に「軍事活動と環境問題」のワークショップを開催。
米軍基地の環境問題に関して、調査や解決のための社会的枠組み作りを共同で事業化して行うことを確認。
2002年9月
●沖縄環境ネットワーク通信で「米軍基地の環境調査」プロジェクト報告(2)を発表。
●米軍基地の環境調査プロジェクトに関するホームページ (URL http://homepage1.nifty.com/okikan/beigun.htm )を開設。
●「けーし風」(新沖縄フォーラム刊行会議発行)に活動報告を発表。
2002年10月
●ヨハネスブルグ・サミット参加報告会を主催し、サミットでの活動報告とともに、「米軍基地の環境問題」について今後アジアのNGOと共同で取り組む計画を発表。
●沖縄島米軍海兵隊基地キャンプコートニー周辺の海岸域における海藻分布予備調査実施
2002年11月
●沖縄島米軍海兵隊基地キャンプコートニー周辺の海岸域における底生生物相の調査実施
2002年12月
●沖縄島米軍海兵隊基地キャンプコートニー周辺の海岸域における底生生物相調査報告書完成
●アジア市民社会フォーラム(タイ)において韓国、フィリピンのNGOなどと共に国連環境計画の職員を招聘し、軍事活動のか環境問題をテーマに円卓会議を開催。
国連環境計画が行う軍事活動と環境問題に関する世界規模の調査にNGOの参画を要請。
●県議会において議員を通じて、キャンプ・コートニーの鉛汚染問題ついて、県のこの問題に関する取り組みの姿勢を確認。
継続して、鉛除去などを国に求めていく県の方針を確認。
2003年1月
●1973年の日米合同委員会合意「環境に関する協力について」(仮訳)が公開される。
2003年2月
●技術的サポートシステム構築可能性調査のための予備的調査開始(継続中)
2003年3月
●沖縄県環境審議会が沖縄県環境基本計画案で、環境保全のために米軍が果たすべき役割を初めて明記した。
英米軍がイラク攻撃を開始。
日本環境会議などと共に、沖縄県において、第1回軍事活動と環境に関する国際ワークショップ(3月19-23日)を主催。
環境省記者クラブと日本外国特派員協会にて記者会見。
環境省へ国際ワークショップで採択された沖縄宣言を手交。
衆議院第1議員会館にて、国会議員向けに「アジア・太平洋地域の米軍基地とその活動から生じる環境問題に関する勉強会」を主催。
完了報告から
1.在沖米軍基地の環境影響調査結果
(1)キャンプ・コートニーの鉛汚染問題の環境調査について
1961年から37年間、クレー射撃の鉛散弾によって最悪の場合、約49トンの鉛が沿岸域に蓄積していると予想されている在沖海兵隊基地キャンプ・コートニーでは、これまで在沖海兵隊環境部と、日米合同委員会環境分科委員会が、影響地域に生息するヒジキ(海藻)中の鉛濃度を分析しました。
日本政府の発表によって、当該水域のヒジキの鉛含有量は、食品衛生上の観点では、人の健康に影響を与えるものではないとの結論が出され、今年から、地元の漁協や住民の影響地域におけるヒジキ採取が解禁となりました。
しかしながら、鉛の分布調査や、鉛蓄積により生態系への影響調査などが行われておらず、政府の調査の不備が現れています。
沖縄環境ネットワークでは、昨年11月にキャンプ・コートニー周辺の海域において底生生物相の調査を実施しました。
その結果、キャンプ・コートニー周辺海岸域の生物相は、沖縄の岩礁海岸と何ら変わりない種相を呈しているようだが、沖縄の岩礁海岸に広く分布するサザエ科のカンギクやコシタカサザエ等の腹足類を欠いているなど、他地域とはやや異なる点があることが指摘されました。
この現象と鉛汚染との関係はまだ、定かではないものの、今後検討を要する生態系の特長が明らかになりました。
(2)日米合同委員会環境分科委員会の欠陥
昨年6月に日米合同委員会環境分科委員会が発表した「キャンプコートニー水域のヒジキに係る補完的調査結果について」(評価書)では、現在の中央集権的で、情報公開の非公開の委員会の欠陥を示した内容が現れています。
例えば、影響地域の底質中の鉛濃度の比較データーとして、同委員会は、沖縄県の実施している「水質測定結果(公共用水域及び地下水域)」の金武湾(キャンプコートニーは金武湾沿岸に位置しています。
)のデーターを用いずに、我が国の主要な港湾(東京湾や大阪湾など)の底質の鉛濃度と安易に比較しています。
昨年7月に開催された衆議院決算行政監視員会第1分科会において環境大臣は、今後も幅広いデーターとの比較が必要であると、沖縄県が計測してきた金武湾のデーター有効性について認めています。
この不適切なデーターの比較が、沖縄県の地域環境についての情報不足の結果であるならば、それは、日米委員会環境分科委員会に、地域環境を理解している人、例えば地方自治体の職員や地域住民が入っていない、或いは彼らに意見を述べる機会を与えていないという、現在の社会制度自体に欠陥があることの表れです。
2.関係者間の技術的サポートシステム構築可能性調査
(1)在沖海兵隊環境部との協力関係の構築について
本研究の実施を通して、昨年4月には海兵隊環境部主催の「自然資源保全セミナー」で、沖縄環境ネットワークが発表の機会をあたえられるなど、相互のコミュニケーションが生まれてきました。
また、本年3月に当団体が主催した「第1回軍事活動と環境に関する国際ワークショップ」には、海兵隊環境部から5人が参加し、活動報告の紹介や質疑応答が活発に行われました。
また、国際ワークショップでは、環境問題の解決に当たっては、地域住民との協力が不可欠であるという見解が、海兵隊環境部から述べられました。
しかしながら、協力の範囲は、海兵隊環境部の仕事の枠内で権限が与えられている技術面に限られたものであり、具体的には「政治的な問題となっていない」赤土流出防止などの河川域の保全活動や、北部演習場のある「やんばるの森」の移入種の進入防止などです。
キャンプ・コートニーの鉛汚染問題のように日米合同委員会で協議されるような「政治的」問題については、関係者の合意をとり、共同作業を行うことは現段階で難しいことが、環境部次長のヒアリングより予想されています。
(2)基地所在市町村及び関係団体へのアンケートやインタビューについては、2003年度に調査を延期して行うよう準備しています。
環境問題を抱える地域住民を対象にアンケートを実施するために、金武町、北谷町、具志川市、宜野湾市、恩納村などの自治体と公民館を予備調査した結果、宜野湾市の大謝名地域が協力的であったため、この地域を対象に作業を進めるよう準備しています。
(3)地域レベルでの問題解決の可能性
米軍基地の環境問題を協議機関は、日本政府と米政府、米軍の代表で構成される日米合同委員会環境分科委員会という非公開の組織があります。
地域レベルでは、昭和54年に発足された三者連絡協議があります。
構成メンバーは、沖縄県、那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所、米側(在沖米軍沖縄地域調整官及び在沖米軍の各司令官、在沖米国総領事)であり、原則として毎4半期に開催されることになっています。
協議したい事項については、構成メンバーの同意が必要であり、決議された措置についても拘束力を持つものではありません。
一般市民の傍聴は不可。
議事録も公開されていません。
過去に環境問題についても議論されているが、米軍の責任が問われるような、鉛汚染問題や劣化ウラン弾などの問題については、この協議会では議論できていません。
このような性質の協議会のため、協議会の形骸化が指摘されています。
2003年1月23日に、外務省北米局日米地位協定室は、1973年合同委員会合意「環境に関する協力について」(仮約)を合意30年後に公表しました。
この合意は、提供施設・区域内で米軍が使用する際に生じる汚染について、手続きに従い、地元のイニシアティブを通じて解決することが記載されています。
特に、汚染地域における視察やサンプル入手については、米軍の現地司令官がコンタクト・ポイントとなり、当該司令官がそれらを許可することが出来ることが記述されています。
この合意に基づいた地方自治体の要請の事例はないが、今後、この合意が、地域レベルでの問題解決の制度確立の基盤になりうることが期待できます。
(4)問題解決のための国際的なネットワークの構築
昨年8月に開催された、持続可能な開発に関する世界首脳会議において、韓国と米国のNGO等とともに開催した、ワークショップ「軍事活動と環境」において、今後米軍基地を抱える地域の住民やNGOが共同で、問題解決に向けて取り組んでいくことが確認されました。
その具体的な共同行動計画のキックオフ・ミーティングとして「第1回軍事活動と環境問題に関する国際ワークショップ」を本年3月に沖縄で主催しました。
海外からは、ベトナム、韓国、フィリピン、米国から14人のNGOや学者、弁護士などが参加し、国別報告、環境調査方法、法的側面の検証、情報収集と発信などについて、報告と議論を行いました。
このワークショップに続く、第2回国際ワークショップは来年、韓国で開催されることが決定しています。
対外的な発表実績
2002年4月 琉球新報・フォーラム「米軍基地の環境問題とその対策」開催
2002年5月 沖縄環境ネットワーク通信18号・米軍基地の環境調査プロジェクト紹介、キャンプコートニーの鉛問題の紹介、沖縄県環境審議会での取り組み、フォーラム開催など
2002年9月 沖縄環境ネットワーク通信19号・日米合同委員会環境分科委員会が実施した「キャンプコートニー水域のヒジキに係る補完的調査結果について」(評価書)の批判的検証及び調査に関する提言
2002年9月 「けーし風」
(新沖縄フォーラム刊行会議発行)・キャンプコートニー鉛汚染問題の解説と環境回復のシステム作りにむけての提案など
2003年3月 THEDAIRYYOMIURI第1回軍事活動と環境に関する国際ワークショップの紹介
琉球新報・沖縄タイムス第1回軍事活動と環境に関する国際ワークショップ活動紹介
Japan Economic NewswireLA Weekly -NGOs, academics to step up U.S. bases cleanup amid Iraq war-Saving Dugongs The U.S. military faces a battle of another kind in Japan
2003年4月 沖縄環境ネットワーク通信21号国際ワークショップとイラク戦争、国際ワークショップ基地視察同行
2003年5月 軍縮 問題資料5月レポート第1回軍事活動と環境に関する国際ワークショップの紹介
今後の展望
1.関係者間の技術的サポートシステム構築可能性調査:
(1)2001年度の助成事業として計画していた、基地所在市町村及び関係団体へのアンケートやインタビューについては、調査を延長し今年実施します。
環境問題を抱える地域住民を対象にしたアンケートも合わせて実施します。
それをもとに、問題解決に向けて、当事者間の協力関係の構築の可能性についてまとめ、提言したい。
(2)国際ワークショップの参加者のネットワークを強化し、国際的な連携を通して、問題解決に向けて活動していきたい。
2.在沖米軍基地の環境影響調査:
(1)キャンプ・コートニーの鉛汚染問題については引き続き、取り組みます。
鉛問題を金武湾の環境問題の一つとして位置づけ、金武湾沿岸の学校教諭など対象に、学校の環境教育として取り組めるように働きかけ、地域での活動を活性させたい。
住民向けに連続した地域勉強会を開催し、問題について住民が考え、調査し、政策提言できるようなプログラムの実施を計画しています。
(2)キャンプ・コートニーの鉛汚染について、米軍海兵隊環境部とともに鉛の分布調査、生態系への影響を調査するために、大学関係者を巻き込みながら、調査計画を策定中です。
沖縄県が国に要請しているこの問題についての独自調査と補完しあえるような調査の実施を実現させたい。