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埋め立ての危機に瀕する上関原発予定地の生物多様性の立証



グループ名 長島の自然を守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 高島 美登里 さん
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助成金額 70万円

公有水面埋め立て工事が再開され、放水口の一部に砂利を投入され、抗議行動の中で2名の負傷者が出た。

環境省R.D.B.絶滅危惧粁爐任△襯Ε潺侫轡淵轡潺疋蹇(2011年2月15日、撮影;新井省吾)

6月12日の調査において、カンムリウミスズメの水中遊泳シーンの撮影に成功。海に入ってカンムリウミスズメを撮影する新井さん。

撮影後、カンムリウミスズメとピースサインする新井さん。遊泳シーンとしては世界で2例目ですが、至近距離で真横から泳ぐ姿を捉えたものとしては、世界初という貴重な映像。

研究の概要

2009年12月の助成申込書から
 上関原発計画は中国電力が2009年9月10日に公有水面埋め立て工事に着手したことで非常に緊迫している。現在、祝島や全国の支援者による阻止行動で何とか工事の進捗を遅らせているが、森林伐採など陸域の改変が著しい。瀬戸内海で奇跡的に残された生物多様性の宝庫が存続の危機に瀕している。その生物多様性を支えるメカニズムが、最近の我々と研究者の調査で明らかになりつつある。  2010年度は四季を通じた調査研究によって以下のような結果を獲得することを目標とする。

1.公有水面埋立を中止させるための中国電力に対する告発や、行政が中止を指導せざるを得ないような自然環境・生態系の価値の科学的検証をする。

.ンムリウミスズメ(国の天然記念物でIUCN指定絶滅危惧種)やオオミズナギドリ(内海における繁殖を世界初確認)の集中調査を行い、生息実態を解明することで公有水面埋立に対する実効力として機能させる。

△海譴蕕寮果を反映させるCOP10に向けた国際シンポジウムを開催する。

「上関自然の権利訴訟」における長島の生態系の価値と環境アセスメントの不備を論証するための科学的データを蓄積し、法廷の場で明らかにする。

2.2010年は環境アセスメント見直し年であるので、研究者と共に環境省に働きかけ、現地視察を実現させ、環境アセスメントの問題点を洗いなおさせる。

3.生物多様性条約COP10にあわせ、長島の生態系の価値を広く広める。

4.自然と共生する町作りを地元保護団体として具体化する。

中間報告

2010年10月の中間報告から
 2010年度上半期は主に海鳥生態調査を集中的に行った。その結果、カンムリウミスズメが原発予定地あるいはその近隣で繁殖している可能性が非常に高いことが立証できた。世界で最も至近距離での水中遊泳の撮影にも成功した。また、原発予定地から5kmにある宇和島がオオミズナギドリの世界で唯一の内海にある繁殖地であることを昨年度の調査で確認したが、今年は新たに営巣調査を行った。宇和島の繁殖地が48巣と小規模で、我が国できわめて貴重で保護が必要な場所であること確認した。これらの結果とともに中国電力に申し入れたが、埋め立て工事を中断し追加調査をさせるまでに至っていない。  しかし、その後のオオミズナギドリの行動域調査で採餌域が上関を中心とする周防灘西部であるデータも得て、上関周辺が必要不可欠な生息域であることも確認した。今後、新しい知見も踏まえ、山口県や国に事業者への指導を求め、働きかける予定である。  春季・夏季定期調査では陸域工事によって生存が危惧されたナメクジウオ(水産庁危急種)の生息、アカテガニの放仔などを例年通り確認した。しかし、アカテガニについては個体サイズが祝島や宇和島に比較して小さく、放仔個体数も減少していた。またナメクジウオ採取個体数も少なく海底の泥質化が進んでおり、原因究明が必要である。一方で長島田ノ浦湾の潮下帯で希少なミドリシャミセンガイを初確認した。多様性がかろうじて保たれていることも示している。下半期はカンムリウミスズメの継続調査、予定地対岸500mにある鼻繰島や宇和島で生息するカラスバト(国の天然記念物)の繁殖調査、環境変化による生物への負荷についても注意深く調査を続ける予定である。

結果・成果


1.調査により得られた新たな知見  2010年度は定期調査を5回、海鳥調査を25回行いました。海鳥調査では、 ̄和島におけるオオミズナギドリの行動域の特異性を解明、▲ンムリウミスズメの繁殖可能性の確認と水中撮影の成功、M縦蠱浪500mの鼻繰島でクロサギ(山口県準絶滅危惧種)のものらしき巣を確認したことが今年度の成果です。定期調査では、.Ε潺侫轡淵轡潺疋蹇粉超省絶滅危惧I類)の確認、経年調査によるナメクジウオ・アカテガニ放子の確認が成果として挙げられます。 2.上関原発計画における埋立再開の攻防  中国電力は2010年9月から埋立工事を再開するため、祝島の漁業者の抗議にもかかわらず、大型台船を再三にわたり予定地海域に進入させようとしました。特に、生物多様性条約COP10開催日の前日にも同じ行為に及んだため、批判の的となり、本会議で発表されたNGO声明に、上関原発埋立工事に対する非難が盛り込まれました。しかし、祝島を中心とする現地での抗議行動や、国会議員・文化人などの働きかけにもかかわらず、中国電力は2011年2月21日に放水口埋め立て予定地内に土砂を投入しました。  3月11日の福島第一原発事故の不幸な事態を受けて、埋立工事は一時中断しています。しかし、原子炉設置許可申請書の審査で不備が指摘されたための追加調査(発破作業)は依然続けています。今後、6月の県議会で知事が埋立免許の延長を認めるかどうかが大きな分岐点になります。 3.長島の生物多様性に注目が集まる  以上の成果やこれまでの蓄積を基に、埋立の不当性を訴える2つの柱として、祝島島民の生活を守る闘いと並んで、長島や上関周辺の自然環境や生態系の素晴らしさが位置付けられたことは大きいと思います。2010年10月に開催された生物多様性COP10では、ブース出展やフォーラム発表・抗議の記者会見などを行い、また、全国各地からの視察受け入れや講演も行いました。 4.上関原発計画の今後と長島の自然を守る会の役割  福島原発事故を受けて、原発に対する安全神話が崩れ、新規立地についても見直し論議が始まっており、建設計画の中止を実現することが第一義だと考えています。しかし、原発計画が中止になったとしても、新たな大規模開発計画が便乗して企画される可能性は非常に濃厚です。上関周辺を生物多様性ホット・スポットとして保護する特別な地域に指定しなくてはなりません。いかなる大規模開発もさせず、埋め立ては絶対させないというスタンスで祝島の人たちと協力し、祝島自然エネルギー100%プロジェクトを上関町内全域に拡大できるように、未利用海藻の商品化やエコツーリズム事業などに具体的に着手していきます。そのための資源調査や生態調査の継続はこれまでにもまして重要だと考えています。

その他/備考


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