上関(旧名 長島)の自然を守る会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] 研究成果発表会配布資料[pdf] |
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高島 美登里 さん | ||
http://kaminosekimamoru.seesaa.net/ | ||
50万円 |
2013年7月4日 毎日新聞 山口県版
オオミズナギドリのヒナ
2013年8月、イルカの群れとの出会い
2013年11月04日オオミズナギドリ調査風景
2012年12月の助成申込書から
長島の自然を守る会は上関周辺地域が生物多様性のホット・スポットであることを生態学会等の研究者と解明し、環境面から2年3ヶ月計画を延期させてきました。
上関原発計画をめぐる情勢は2011年3月11日の福島第一原発事故後、埋立工事が中止され動きが止っていました。しかし中国電力が2012年10月5日に延長申請を出したことから埋立て・建設の再開が危惧されます。また、原発計画が中止されても他の大規模開発計画が浮上する恐れがあり生態系の科学的検証が急務です。
2013年度は、以下のような調査を行う予定です。
(1)カンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN絶滅危惧種)/オオミズナギドリ(瀬戸内海における繁殖を世界初確認)/カラスバト(国の天然記念物・IUCN絶滅危惧)の繁殖や生息条件(移動範囲・採餌・海水温との関連etc.)をより深く解明し、保護対策を樹立します。
(2)2013年度は初めてバイオロギング手法によるスナメリ個体群調査を手がけ、これまで明らかにされなかった瀬戸内海産スナメリの生態を明らかにします。
(3)周辺島嶼部に調査範囲を拡大し、海洋公園、ユネスコの生命圏リザーブや世界遺産登録に向けてデータを収集します。
また、こうした調査研究の成果を活かし、以下のことを実現していきます。
1.上関原発計画の不当性の告発
(1)環境アセスメントのずさんさを追及する
(2)海外研究者とのカンムリウミスズメ調査に基付き上関原発計画に反対する国際世論を高める
(3)新たな手法を取り入れたスナメリ調査により、瀬戸内個体群の生態を解明し保護と普及活動に役立てる
2.未利用資源の活用
産直を利用しワカメ・クロモズク・アカモクなどの定量調査をし、商品化する。
3.ポスト上関原発を見据えての普及活動
(1)DVD「長島の自然」改訂版の作成
(2)学習会&シンポジウムの開催
2013年10月の中間報告から
2013年4 月〜9 月末までの活動状況は以下のとおりです。
1.生態系の解明
カンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN 絶滅危惧種)調査
2013年3月に海外研究者と捕獲・テレメトリ調査を開始しました。捕獲調査では捕獲個体3 羽すべてに抱卵斑があり、繁殖可能性に対する期待が高まりました。4月〜5月、追跡調査を継続しましたが、データ受信はできませんでした。しかし、2012年12月〜2013年3月のカンムリウミスズメ確認数が、上関の自然を守る会では111羽であるのに、中国電力は2羽と大きくかけ離れていることを山口県に申し入れ、中国電力に調査方法の改善を余儀なくさせました。その後の定期調査では7月を除き、4、5、6、8、9月と生息確認ができ、原発予定地周辺海域が世界で唯一の周年生息域であることを改めて立証できました。今後、利用域と水温・プランクトンなど生息環境との関連を明らかにし、原発計画による埋め立てや温排水のダメージを科学的に検証していく予定です。
オオミズナギドリ( 瀬戸内海における繁殖を世界初確認)の個体群調査
瀬戸内海で唯一の繁殖地であり、他の外海繁殖地に比べ、コロニーの規模や繁殖成功率が低いことでコロニーの存続も危ぶまれています。2013年度の繁殖状況は繁殖初期の抱卵数48に対し、9月11日現在のヒナ生存確認数は16羽です。共同研究者により、皮脂腺から採取されたPCB 濃度が外海の個体群より高いことが論文発表されました。(“Contaminants in Tracked Seabirds Showing Regional Patterns of Marine Pollution”)
カラスバト(国の天然記念物・IUCN絶滅危惧)の調査充実
カラスバトについて、現段階では繁殖地(天田島/宇和島、いずれも上関町/光市牛島)と生息地(鼻繰島/小祝島/祝島/小島、いずれも上関町/平生町佐合島)を確認しています。今後、繁殖も含め、それぞれの島の利用形態と植生の関係など生息条件を解明してゆく予定です。
2.未利用資源の活用
未利用海藻であるアカモクの商品化にむけ、提携業者との話し合いが進み、来年度からの実施に向け、10月から店頭実演販売を開始し、来店者のモニタリング調査を行います。
3.ポスト上関原発を見据えての普及活動
DVD「長島の自然」改訂版の作成
2013年7月から改訂版DVDの撮影に取りかかりました。カンムリウミスズメやオオミズナギドリを始め、瀬戸内海では珍しいイルカの群れ、スナメリの採餌シーンなど撮影は順調です。
完了報告・研究成果発表会資料より
1.カンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN絶滅危惧種)調査
2012年12月〜2013年3月のカンムリウミスズメ確認数について、上関の自然を守る会は111羽であるのに、中国電力は2 羽と大きくかけ離れていることを山口県に申し入れ、中国電力に調査方法の改善を迫りました。その後の定期調査では、7/10/11/12 月をのぞいては、各月に生息確認ができました。2014 年度はカンムリウミスズメの利用域と水温・稚魚/ プランクトンなど生息環境との関連を調査し、原発計画の温排水によるダメージを科学的に検証する一助としたいと思います。
2.オオミズナギドリ(瀬戸内海における繁殖を世界初確認)の個体群調査
瀬戸内海で唯一の繁殖地であり、他の外海繁殖地に比べ、コロニーの規模や繁殖成功率が低いことでコロニーの存続も危ぶまれています。
今年度の調査によって、以下のようなことがわかりました。
「求愛期(4−6月) のオオミズナギドリは、瀬戸内海を南下した鹿児島県沿岸海域を主に利用した。その間、植物プランクトン濃度は繁殖地周辺より、主な利用海域である太平洋側で高かった。抱卵期から育雛期(7−9月)のオオミズナギドリは、繁殖地南方の伊予灘周辺の海域を主に利用した。その間、植物プランクトン濃度は太平洋側より、主な利用海域だった繁殖地周辺で高かった。(中略)瀬戸内海のような閉鎖的な海域では、植物プランクトンから海鳥までの分布が、短い期間で局地的に同調すると考え
られる。」(福山大学 鳴海雄介さん卒業論文要旨より)
3.オオミズナギドリの営巣が植生に与える影響調査
宇和島のオオミズナギドリの営巣活動による植生への影響を滋賀県立大学の学生と共同調査し、以下の結果を得ました。
「宇和島では、退行遷移や階層構造の単純化といった上層木への影響はみられなかったが、下層植生には種組成の単純化が生じていた。今まで調査されてきた外洋の島と同様に、内海の宇和島でも弱いながらオオミズナギドリによる植生への影響が明らかになった。」(滋賀県立大学 山田直季さん報告より)
これまでの調査結果から得られた成果をもとに、山口(8/16)、京都(8/17)、東京(8/18) で国際シンポジウム「カンムリウミスズメと上関の生物多様性〜“奇跡の海を未来の子どもたちへ”」を開催する予定です。