高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


マニラ湾埋め立て計画が湾岸沿いのパラニャーケ市とラスピニャス市に与える社会・経済・環境影響:「期待される経済効果は事業費を上回るのか?」



グループ名 フィリピン漁民進歩同盟(PANGISDA)
代表者氏名 パウロ・ロサレス さん
URL
助成金額 25万円

マニラ湾中心地に残された最後の自然海岸

女性を対象としたFGDの様子(パラニャーケ市)

漁民を対象としたFGDの様子(ラスピニャス市)

埋め立て計画があるパラニャーケ市・ラスピニャス市沿岸

研究の概要


 マニラ湾沿岸は過去30〜40年で大半が埋め立てられましたが、パラニャーケ市とラスピニャス市にはマニラ湾中心地の最後の自然海岸が残されています。マングローブ、塩性湿地が広がる豊かな生態系は絶滅危惧種を含む80種の鳥類の生息地となり、魚介類は漁民の生活の糧となっています。しかし現在、両市の海岸635haを埋め立てる計画が進められています。この事業により、流域全体の環境・社会影響、沿岸改変による生態系の喪失や河川水系の分断の他、2009年の台風後に実施された水文学調査では、埋め立て後、同じ規模の台風に襲われれば、両市の36村が洪水被害を受けることなどが指摘されています。  本調査研究では、事業の社会・経済・環境コスト調査を行い、沿岸住民の生活の質や経済に与える真の影響を明らかにします。このような埋め立ては沿岸コミュニティの利益になるのか、強制立ち退きや自然環境の劣化を招かないのか、埋め立てによる社会・経済・文化・環境的な見返りは何なのか、期待される利益は失われるものより大きいのかといった問いを投げかけます。調査結果によって、住民が失うコストの規模を自ら知り、意見を持つことを支援します。これらの意見を中央・地元政府や事業者に伝え、事業の進行における意思決定プロセスに影響を与えます。

中間報告


結果・成果


 1970年代以後、マニラ湾沿岸では開発が進められ、その大半が埋め立てられましたが、パラニャーケ市とラスピニャス市には、マニラ湾中心部の最後の自然海岸が残されています。2007 年にはその一部が「パラニャーケ・ラスピニャス重要生息地・エコツーリズムエリア(LPPCHEA)」に指定されました。絶滅危惧種を含む80 種の鳥類の生息地として、最近では、ラムサール条約のリストにも登録されました。  しかし現在、両市の海岸635haを埋め立てる計画が進められています。「パラニャーケ市・ラスピニャス市沿岸埋め立て計画」では、両市に将来建設されるビジネスセンターとマニラ首都圏を結ぶ高速道路などが建設されます。この計画により、漁場や鳥類生息地などの破壊、住民の立ち退きや生計手段の喪失、洪水などの自然災害による被害の悪化が懸念されます。マニラ湾沿岸では、漁業や養殖が人々の生計を支えていますが、すでに生産量は年々減少しています。また地元政府は、LPPCHEAは保全されるとしていますが、埋め立てられれば水はせき止められ、LPPCHEAは干上がり、生態系は失われるでしょう。また、2つの市を流れる川の河口は湿地となっており、台風などの被害を軽減する自然の盾になっているのです。 本調査研究では、こうした計画が社会的に受け入れ可能か否かの評価を行うため、文献調査の他、影響を受ける住民の個別インタビュー、参加型のフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)(*)による聞き取り調査を行いました。FGDは、漁民、都市貧困者、女性、若者、地元経営者、教会関係者、学者を対象に合計8回開催し、その内容を分析した結果を再び住民に報告し、再評価やデータの精査を行いました。その結果、下記のようなことが裏付けられました。  ・埋め立て計画が、地元住民の生計手段に深刻な影響を与えること。  ・特に環境破壊や生態系の喪失につながること──洪水による災害リスクを高め、マングローブや渡り鳥の重要な生息地を破壊すること。  ・地元政府が民間企業とのパートナーシップの名のもとに、人々のためにならない開発を進めていること。 そして、人々によって、埋め立て計画の中止を求めるための次のような提言がまとめられました。  ・フォーラムや集会などの議論の場を持ち、埋め立て計画による悪影響に関する情報を普及し、反対のための団結と行動を呼びかける。  ・計画中止を求めて、地元政府や国、関係省庁との対話や署名活動を行い、請願書を提出する。  ・労働者、都市貧困者、教会関係者、学者、地元の諸団体などと連携し、強固な反対運動を形成し、「パラニャーケ市・ラスピニャス市沿岸埋め   立て計画」中止を求め、人々の利益や生計手段、環境の保全につながるマニラ湾の真の再生を実現する。 また、当団体は、調査結果をもとに教材や冊子をタガログ語で作成し、人々の主張や埋め立て計画による社会環境コストの周知のため、コミュニティなどに配付をしました。さらに、地元政府や国会での対話やロビー活動にも使用しました。 (*)フォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)とは、あるテーマに関して特定のカテゴリーに所属する少人数のグループを集い、参加者が議論を進める中で行われる聞き取り調査。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い