北限のジュゴンを見守る会 |
2007年度完了報告[pdf20kb] |
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鈴木 雅子 さん | ||
http://sea-dugong.org/ | ||
70万円 |
ジュゴン 食跡調査
2006年12月の助成申込書から
新たな米軍基地建設で生息地破壊の危機にある沖縄のジュゴンは世界的にも極めて希少な「北限」に生息する地域個体群である。
世界のジュゴン保護の現状から見ると、東南アジア各地のジュゴン個体群の中には、すでに絶滅してしまったものもあるが、保護策が成功して絶滅から脱したものも見られる。
これらは、生態学的にも沖縄の個体群と類似点が多いと推察されることから、その保護策から学ぶことは、沖縄のジュゴン個体群保護の方策を検討するにあたっても有用であると考えられる。
そこで2006年に東南アジアのジュゴンに造詣の深い研究者を沖縄に招聘しジュゴン保護に不可欠な基礎データを得るための調査手法を学んだ。
本申請研究では、この予備調査で得られた知見を基礎に、現地で実行可能なジュゴン保護のためのロードマップを描くために必要な各種データ収集のために、以下の活動及び調査を行う。
1)保護活動の先進事例についての文献調査。
2)地域住民主体によるジュゴンの生息環境についての、野外調査(マンタ法など)やリモートセンシングによるモニタリング手法の開発・実施。
3)地域に根ざした持続的な調査への協力を得、また有効な保護方策の受容を可能にするために必要な地域住民の啓発活動。
4)調査手法、保護ロードマップについてのガイドブックの作成:日常的にできる調査・保護活動の方法、そのためのトレーニング方法などについて検討しガイドブックにまとめる。
またジュゴンと共存可能な社会へのロードマップを提案する。
2007年9月の中間報告から
沖縄のジュゴンは世界の最北限に生息する地域個体群ですが、その数は50頭未満と推定され存続の危機にあります。
国の天然記念物であり、沖縄県、環境省のレッドデータブックでは絶滅の恐れが最も高い「絶滅危惧IA類」に指定されていますが、具体的な保護対策は未だにとられていません。
当会は、地元市民および研究者と連携した調査の実施により、科学的バックグラウンドを持って適切な保護方策を見極め実践していくことを目指しています。
今年度は高木基金の助成を得て、(1)住民によるジュゴン保護活動の先行事例についての文献調査、(2)地域住民を主体とした、ジュゴンとその生息環境のモニタリング調査(食跡調査)、(3)地域に根ざした持続的な調査への協力を得、有効な保護方策の受容を可能にするための地域住民の啓発活動、(4)調査およびジュゴン保護ロードマップをまとめたガイドブックの作成を実施中です。
上半期は、特に(2)の「食跡」調査の手法検討とトレーニングを海外および国内の研究者の指導のもとに実施し、今後の調査と保護対策の方向性について研究者、地元住民とともに丸1日をかけたワークショップを行いました。
下半期は、調査データの解析方法、データベースの構築についても重点を置くとともに食跡調査モニタリングの体制を作っていきます。
また、この調査のマニュアルとともに保護方策に関する文献調査から得られる知見を盛り込み、これらの成果を活用できるよう、ジュゴン保護ガイドブックとしてまとめていきます。
2008年4月の完了報告から
沖縄のジュゴンは絶滅の危機に瀕しているが、いまだ行政による具体的な保護方策はほとんどとられていない。
ジュゴンの保護のためには科学的バックグラウンドを持った保護方策が必要との見地から、まず希少すぎて見ることも稀なジュゴンの生息状況を把握するために、ジュゴンが海草を食んだ後に残される食跡の調査を地元市民により長期的に実施していく体制を今回の助成によってほぼ作り上げることができた。
市民による調査活動の体制を作るにあたっては、国内外のジュゴン・海草の研究者の指導を受けるとともに、調査および保護に向けての長期的方向性についても研究者、地元市民と議論し、認識を共有した。
調査やデータ処理の方法についても研究者の指導を受け、その後、現場での試行錯誤を繰り返し、手法を改良していった。
これらの結果は調査マニュアル、ジュゴン保護ガイドブックとしてまとめられた。
今後は、調査を継続するとともに一般市民向け調査等による啓発活動、ガイドブックの改訂を行い、これらの成果をもとに国や沖縄県に向けてジュゴン保護について提言を行っていく。