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河北潟の再汽水化に向けた基礎研究(1)再汽水化する上での課題の整理



グループ名 河北潟湖沼研究所・再汽水化プロジェクトチーム
代表者氏名 高橋 久 さん
URL http://kahokugata.sakura.ne.jp/
助成金額 50万円

研究の概要

2018年12月の助成申込書から
 日本の多くの汽水域・浅海域で生態系の破壊が進んでいる。河北潟も干拓と淡水化による生態系劣化の問題を抱えている。これまで順応的管理の手法を用いて河北潟の環境改善の取り組みを進め、一定の成果とともに河北潟の環境問題と深い関係にある農家や農業団体、自治体との間に協働の仕組みを作ってきた。しかし、主要な環境問題である水質問題は解決しておらず、この問題の解決には、順応的管理とともに潟のあり方を大きく変更することが必要である。そこで、河北潟を農業用溜池としての限定的な利用から開放し、地域が河北潟の生態系サービスを享受できる潟の再汽水化を展望するために必要な基礎研究を行い提言をまとめる。  以下の調査、研究を実施する。 (1)市民の参加を募り、現場の現状(水質、植生、地下水の流入の有無等)、現場で生じている課題(水質悪化に伴う生物や農業への影響等)を詳細に調査する。 (2)アンケート調査による河北潟の環境問題と再汽水化についての市民の意識を把握する。 (3)以上の調査から問題点の解析を行う。  これらの調査研究により、以下の点を解決、整理することを目指す。 (1)再汽水化によって解決する環境問題 (2)再汽水化にかかる市民の誤解 (3)再汽水によって起こりうる環境問題 (4)再汽水化の上でのその他の困難(社会的・産業的な観点) (5)課題の解決方向と必要な研究課題  上記をまとめて、河北潟の再汽水化に関する提言をとりまとめる。

中間報告

2019年10月の中間報告から
 かつて汽水湖であった石川県の河北潟は国営干拓事業の実施に伴って、残存水面が淡水化されました。淡水化は干拓地や周辺農地への灌漑用水として使用するために行われ、実際に利用されていますが、一貫して農業用水基準を満たすことができず、農家は「汚れた」水を使用しています。  一方、汽水湖の時代には、ヤマトシジミやボラ、フナなどの漁獲が豊富でしたが、淡水化によりヤマトシジミは消失し、漁協の解散と水質の悪化が相まって、潟漁は消滅しました。過去から享受してきた生態系サービスを放棄して、新たな水資源を求めたものの、現在も将来も満足のいく利用は見込まれません。もはや、淡水化した潟を水源として限定したまま水質浄化対策を進めるより、より上流域から取水するなど取水計画を見直す方が、合理的な水利用につながることも考えられます。潟の淡水化を無理に続ける必要はなくなり、再度汽水化を図ることで、かつて存在した潟の生態系サービスを周辺住民が再び享受できる可能性も考えられます。  現在、自治体(石川県)は、周辺住民、特に農家が、潟への海水導入を望んでいないということと、周辺への塩害の可能性とを根拠に、潟を淡水に維持する必要があると主張していますが、市民への聞き取りをしていくと、多少は塩が混ざっても水がきれいになった方が農業にとって良いと考える農家もいます。また、塩害については、汽水湖であった時代にもまれにしか生じたことがないことが分かっています。  市民が真に望むことをまとめ、代替水源を含めて市民が提案することによって、海水導入が検討のテーブルに載る可能があります。自治体は汽水化に向けた調査研究を実施しておらず、汽水化によるメリットの研究は市民が行うしかない状況で、市民科学の立場で市民が主体的にこの問題に取り組むため、以下の調査研究を企画しました。 (1)市民の参加を募り、現場の現状(水質、植生、地下水の流入の有無等)、現場で生じている課題(水質悪化に伴う生物や農業への影響等)を詳細に調査する (2)アンケート調査による河北潟の環境問題と再汽水化についての市民の意識を把握する (3)以上の調査から問題点の解析を行う

結果・成果

完了報告から
 干拓と淡水化による生態系劣化の問題を抱えている河北潟において、これまで順応的管理の手法を用いて河北潟の環境改善の取り組みを進め、一定の成果とともに河北潟の環境問題と深い関係にある農家や農業団体、自治体との間に協働の仕組みをつくってきました。しかし、主要な環境問題である水質問題は解決しておらず、今後、順応的管理とともに潟のあり方を大きく変更することが必要だと考えました。そこで、地域が河北潟の生態系サービスを享受できる潟の再汽水化を展望するために必要な基礎研究を行いました。今回は特に、河北潟を再汽水化する上での課題を整理するため、主に以下のことに取り組みました。 1.河北潟の現状における汽水域の状態とその問題の解析  現在の汽水域である大野川(河北潟防潮水門から金沢港)における海水遡上量は、当初想定よりも大きく、過去の塩分濃度と大野川の河道形態の改変を過去に遡って検証する必要が指摘されました。現在の汽水域の底生動物相は貧弱であり、ヤマトシジミは見つかりませんでした。降雨等により塩分濃度が急激に変化することから生息が困難であり、大野川だけでは、良好な汽水域を形成できないことが指摘されました。 2.河北潟の現状や再汽水化に対しての市民の意識動向の把握  アンケート用紙を河北潟周辺の1020戸へ送付し291の回答を得ました。河北潟が汚れているので改善すべきという意見は63%で、問題ないとする意見は 20%でした。河北潟を再汽水化することのメリットよりもデメリットを感じている傾向がみられました。農家では農業用水や塩害を懸念する声が多く聞かれました。今後、補足調査を実施し、河北潟の再汽水化に関する提言をとりまとめる予定です。その上で、課題解決に向けた調査研究(2)として、再度応募したいと考えています。

その他/備考


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