調査研究の概要[pdf20kb] 調査研究の概要[pdf20kb] 調査研究の概要[pdf20kb] |
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樋口 倫代 さん | ||
60万円 |
2004年12月の助成申込書から
研究のテーマは、「物的人的資源に限りのある東ティモールの地方の保健所での、医薬品の適切な使用」についてである。
先行研究レビュー、パイロットプロジェクトなど経て、以下の研究目的を設定した。
1)保健所職員による医薬品の使用(処方、投薬)と標準治療ガイドラインに対するadherence(きちんと守られていること)の現状を説明する。
2)adherenceに影響を及ぼす因子を明らかにする。
3)保健所で医薬品をより適切に使用するためのストラテジーを、特に、標準治療ガイドラインとそれを導入するトレーニングの点から提言する。
研究方法は、量的手法と質的手法を併用したケーススタディーとし、現在用いている方法は、
1)2005年の患者台帳からのサンプリング、
2)保健所での直接観察(診察室および投薬カウンターでのチェック、出口での患者の服薬についての理解度確認)、
3)看護師へのインタビュー、の3つである。
調査の主対象は地方無床保健所の看護師である。
飛び地を除く全国の無床保健所からランダムサンプリングした20保健所を対象に、患者台帳からは100ケース/保健所、直接観察は30ケース/保健所、インタビューは3人/保健所とした。
規模は申請時より拡大しているが、これは、高木基金の助成金の後、TravelingScholarship(イギリス)と研究助成金(日本)もいただけることになったことで可能となった。
調査を開始した後の2005年末、保健省は政策を転換した。
すなわち初期(前身)のころより、無床保健所レベルに医師は配置できない、しない、と主張し続け、「物的人的資源に限りある」という前提で新しい保健計画をうち立てていたが、キューバ政府の援助が得られることになり、病院のみならず無床を含めた全ての保健所にキューバ人医師が配置されることになった。
これに伴い、この研究のの重要な対象である臨床看護師と「標準治療ガイドライン」も位置づけが変わる可能性が考えられたため、保健省保健政策計画局長に質問したところ、「職種によって使い方に違いはあるにしても、標準治療ガイドライン自体は今後も継続して使用していく。
本年中に今までのレビューをするので、あなたの研究結果もそのインプットのひとつにしたい。」との回答を得た。
この調査を博士論文としてまとめ、コピーを東ティモール保健省を提出するとともに、インドネシア語サマリーを添付することや(今のところ現地語訳は困難と考える)、対象の保健所マネージャーと管轄の県保健局長も招いてワークショップのようなものも開催するなど、研究対象者へより直接的にフィードバックする手段を工夫したい。
博士論文の内容を学術誌に投稿することは、その後の目標の一つである。
このことは、所属先からも強く推奨されている。
また、2007年に「第3回医薬品向上に関する国際会議」が開催される予定だが、これに演題提出することがもうひとつの目標である。
学術誌や学会への発表はアドボカシーの重要手段であると考えている。
ひとつには、研究内容がレビューされることで対象地での信頼を増し、また、もうひとつには、同様の状況にある地域への一般化、応用のための考察を行うことで、より汎用される可能性が出るからである。
高木基金を含めて、いただいている3つの助成金・奨学金への報告、成果発表を通じて、積極的に専門分野外の人々へもフィードバックを行って行きたい。
中間報告から
保健サービスの質に関わるひとつの局面として近年注目されているトピックに、医薬品の不適切な使用の問題がある。客観的なデータはないものの東ティモールでもしばしば問題となっている。
2002年5月に主権復興を果たした東ティモールでは、深刻な医師不足の中、地方の保健所職員の役割が急激に拡大した。新保健省は、住民に最も近い保健施設である保健所と支所で扱う「Basic Package of Services」を確認し、基本的な疾患の標準治療ガイドラインを導入、現職保健従事者に対しての再トレーニングを行っている。東ティモールには「薬剤使用」に特化したプログラムはないが、各種ガイドラインやトレーニングにはその要素が含まれており、現場での効果が期待されるが、評価は行われていない。このような背景を元に、本研究では東ティモール地方保健所職員の医薬品使用の現状と治療ガイドラインの活用に関する問題を明らかにすることを主な目的としている。
今回私は、高木基金の助成金を得て、6月から8月にかけて東ティモールに滞在した。滞在目的は、東ティモール保健省から調査許可を得ること、関連資料を収集すること、2ヶ所の保健所で予備調査を行うこと、今後の調査・研究の拠点とする事務所を開設すること、などで、予備調査では主にデータ収集ツールの試用・検討を行った。これらの目的は無事果たすことができ、現在、11月から予定の主調査に向けて、最終的な研究プロポーサルを作成中である。
調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項
進捗状況
- 今のところ修正後計画とおりに進行している。
- 8月25日の所属機関でのアドバイザリーコミッティーミーティングでは、調査研究の大まかな方向性には同意を得た。調査手法の細部に関して現在修正を加えている。
- 10月中に所属機関でのプレゼンテーション(プロポーサル審査)を予定しているが日程は未定である。
- 予定通り、11月から東ティモールでの本調査を開始したい。
計画変更
- 調査研究内容自体には大きな変更はない。ただし「トレーニングの及ぼす影響」は中心に据えるのではなく分析の一項目とし、現状分析とそれを基にした提言を主な調査研究目的としたいと考えている。よってタイトルを若干変更した。(プレゼンテーションまでにさらに修正する可能性もある。)
- この間、高木基金の他に、奨学金がひとつ決定、助成金がひとつ内々定した。よって、予算計画は修正後よりさらに大幅に変更し、高木基金を主に1回目滞在(6?8月)の渡航滞在費と事務所開設に伴う出費に使わせていただいた。残額はわずかであるが、東ティモール留守中の電話基本料金などに使用する予定でいる。
- 内々定の助成金は、共同研究に対する助成なので、決定の場合東ティモール保健教育・トレーニングセンター、保健省薬剤課、インドネシアガジャマダ大学臨床薬理学・医薬品政策研究所との共同研究となる。