JCO臨界事故総合評価会議 |
完了報告書[pdf321] 完了報告書[pdf321] 完了報告書[pdf321] |
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古川 路明 さん | ||
http://cnic.jp/jco/jcac/ | ||
30万円 |
2003年12月の助成申込書から
【背景】
JCO臨界事故総合評価会議は、原子力資料情報室と原水爆禁止日本国民会議の呼びかけのもと、在野の専門家によって組織され、1999年以降、JCO臨界事故の原因と影響にかんする調査を続けてきた。
2000年には『JCO臨界事故と日本の原子力行政』(七つ森書館)を発行したが、その後とくに事故原因論についてはトヨタ財団の助成により浩瀚な資料の入手と実証的分析を行ったが、その詳細な情報を広く社会(地元・日本・海外)に還元していくのはこれからの作業課題である。
原子力資料情報室『臨界事故・隠されてきた深層』(岩波ブックレット2004)はその一環であったが、さらに国際発信のための英語ドキュメント作成について、今回、高木基金の助成を受けた。
刑事確定訴訟記録(裁判資料)など新資料にもとづき、まだ広く知られていない最新の知見を海外に紹介し、日本社会へのフィードバックを期するのが趣旨である。
【経過・成果】
テキスト作成・英訳とも04年度後半の作業としていたが、報告書(日本語版)刊行のため補訂作業が遅れたこと、検討し内容に反映すべき英語文献・日本語文献の入手に予想以上の時間を要したことなどから、予定期間である2005年3月までに作業を完了することができなかったため、現在鋭意作業中である。
【今後の展望】
臨界事故に関する情報収集は現在も継続中である(文書開示請求など)。
この取り組みを通じて、日本の原子力がかかえる問題を海外へと伝達する経験を、原子力の諸問題にまつわる今後の対応にも活かしていきたい。
中間報告から
JCO臨界事故総合評価会議は、在野の専門家によって構成された調査組織で、99年の発足以来、臨界事故の原因と影響について原子力行政・産業から独立した立脚点から研究を続けてきました。特にJCO刑事裁判の傍聴および裁判資料の閲覧にもとづく一次資料の調査にもとづいて、事故原因論に新しい知見(JCOによる逸脱操業の歴史や旧科技庁、旧動燃との関係、原子力政策との相互作用など)を提出していますが、その内容を国際的に伝えることが今回の申請の趣旨です。
本申請の進行計画としては「入手した裁判資料を、2004年度前半に解読分析し、2004年秋を目途に報告書(日本語)としてまとめる予定であるが、その作成が完了し次第、英訳の作業を開始し、製本印刷のうえ公表したい」(申請書より)という予定を立てています。具体的には英訳用のテキストを再作成のうえ、英訳することになりますが、いずれも04年度後半の作業となります。報告書(日本語)の作成については実質的に完了しました(トヨタ財団枠)。それにもとづいて10月以降、英訳用のテキストを作成することになります。
■2004年4月〜8月 トヨタ財団の枠での研究活動を継続し(刑事確定訴訟記録の分析、文献渉猟の継続、核燃料サイクル開発機構との質疑など)、報告書(日本語版)の作成作業を行う。
□以下、9月以降(参考)
2004年9月 事故後5年を前に、JCO臨界事故総合評価会議としてメディア取材対応多数。
2004年9月7日 岩波ブックレット『臨界事故 隠されてきた深層―揺らぐ「国策」を問いなおす』を原子力資料情報室として刊行。
2004年9月15〜17日 日本原子力学会JCO事故調査委員会の発表を聴講。
2004年9月25日、JCO臨界事故総合評価会議報告会を江戸東京博物館にて開催するとともに最終報告書を発表。毎日新聞「原子力資料情報室、最終報告書きょう発表」、共同通信”JCO involved in illegal operations for a long time: report”で紹介される。
2004年9月26日、JCO臨界事故五年集会(水戸市)。古川路明(JCO臨界事故総合評価会議代表)が臨界事故と原子力の歴史について基調報告。
完了報告から
調査研究・研修の経過
本プロジェクトはトヨタ財団枠での研究結果の「英訳」にかかわるものであるが、参考としてトヨタ財団枠での調査研究の最近の経緯をふくめて記述する。
・2004年4月〜8月……トヨタ財団の枠での研究活動を継続し(刑事確定訴訟記録の分析、文献渉猟の継続、核燃料サイクル開発機構との質疑など)、報告書(日本語版)の作成作業を行った。
・2004年9月、岩波ブックレット『臨界事故 隠されてきた深層』を原子力資料情報室として刊行した。
・2004年9月……報告会を開催し報告書を配布した。この報告書(日本語版)は補訂のうえ公刊の準備作業中である。
本プロジェクトでは上記報告書(日本語版)のうち原因論の部分を中心として英訳用のテキストを再作成のうえ、英訳する。刑事確定訴訟記録など新資料による知見を海外に紹介するのが申請趣旨であり、原因論を中心としたテキストとなる。テキスト作成・英訳とも04年度後半の作業としていたが、以下の事情により予定期間である2005年3月までに作業を完了することができなかったため、現在鋭意作業中である。すなわち、上記のとおり報告書(日本語版)刊行のため補訂が必要となっており、リライト作業により確定が遅れていること。検討し内容に反映すべき英語文献・日本語文献の入手に予想以上の時間を要したこと(例として下記“Cognition Technology & Work”の入手が冬、日本原子力学会『JCO臨界事故 その全貌の解明』の入手が3月となった)。
従って今まで行なった作業としては文献の確保が主となった。
以下、今後の予定を箇条書きで記す。
・2005年4月?5月……英訳用原文の確定と英訳(資金の有効活用のため下訳まで自主作成)
・2005年5月?6月……英訳のネイティブチェック・確定
・2005年7月……英訳確定版のWEB化・冊子化
調査研究・研修の成果
(成果物としての英語版は現在作成中であるが、そのポイントについて述べる。)
JCO臨界事故に関する基本的な文献で、本プロジェクト上、中心的に参考とすべきものは下記のとおりである。事故にまつわる知見は、いまだ不分明な点も残されているものの、事故直後と比べると相当に拡大しており、再発防止に資するよう、英語版の作成においては最新の知見を最大限に盛り込むようにしたい。
またそのうち、A Review of Criticality Accidents 2000 Revision(LA-13638)には、過去の臨界事故事例から導かれる教訓(Lessons Learned)が列挙されている(別記)。照合してみるとJCO転換試験棟の設備がこれに適合していないことが明らかであり、日本における核燃料サイクル施設の臨界防止対策の、ひいては原子力安全の、後進性が一目瞭然となった。JCO事故にまつわる現時点の知見に照らしてみると、「安全審査」「事故調査」「証拠保存」のいずれについても日本的・ムラ社会的な曖昧さが支配していた。
また欧州では産業施設による災害防止と被害緩和のため、事故予防計画や安全報告書(事故解析を含む)の提出、労働者や地域住民への情報提供を義務づける方向にあるが、JCOでは中濃縮ウランの取扱にかかわる事故解析も労働者や地域住民への危険情報の提供も行なわれていなかった。再発防止のためには安全規制・事故調査の制度を国際水準で確立するほか、労働者や地域社会などの主体的関与を深めることの必要性も導かれる。
英語版ではQ&A形式の採用により、国外はもとより国内でも地元以外ではほとんど知られていない知見をわかりやすく海外に紹介するとともに、証拠保存もままならない日本の状況に国際的な監視の目をはたらかせる契機となるよう、東海村の現状なども追記する。
当初、翻訳に助成全額を投入する予定であったが、英訳は自ら作成してネイティブチェックのみ外注したうえで、紙による冊子版も作成することを考えている。その際、原子力資料情報室の英文情報誌Nuke Info Tokyoでは継続的に臨界事故に関する多面的な記事を掲載してきているので、それらを付録として添付することにより、英語版本体で汲みつくせない情報を補足することとしたい。
■原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会『ウラン加工工場臨界事故調査委員会最終報告書』1999
■JCO刑事裁判の判決確定後に閲覧可能となった刑事記録(裁判資料・トヨタ財団枠で入手)
■核燃料サイクル開発機構東海事業所『JCO臨界事故に関するサイクル機構とJCOとの関係について?改訂版?(調査報告)TN8420 2003-003』2003
■日本原子力学会JCO事故調査委員会も報告書『JCO臨界事故 その全貌の解明?事実・要因・対応』(東海大学出版会・2005年)※学会は同書にもとづいて英語報告書を作成中とのこと
■JCO臨界事故総合評価会議報告書(現在確定作業中・2005公刊予定)
■事故直後に来日したIAEA調査チームによる報告書
Report on the Preliminary fact finding mission following the accident at the nuclear fuel processing facility in Tokaimura, Japan, International Atomic Energy Agency(1999)
■原子力安全委員会(日本)ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告書の日本政府訳(要約のみ)
A Summary of the Report of the Accident Investigation Committee on a Critical Accident in Uranium Fuel Fabrication Plant.”(Provisional Translation) The Nuclear Safety Commission, Japan (December 24, 1999). (http://www.csirc.net/library/la_13638.shtmlにPDF掲載)
■ロス・アラモス国立研究所(米)の文書LA-13638
A Review of Criticality Accidents 2000 Revision(LA-13638)Los Alamos National Laboratory(http://www.csirc.net/library/la_13638.shtmlにPDF掲載)
■LA-13638 Reference Setの一連の論文(http://www.csirc.net/library/la_13638.shtml)
■米エネルギー省(DOE)の来日調査報告
McCoy, F. R. III, T.P. McLaughlin, and L.C. Lewis. “U.S. Department of Energy Trip Report of Visit to Tokyo and Tokai-Mura, Japan on October 18-19, 1999 for Information Exchange with Government of Japan Concerning the September 30, 1999 Tokai-Mura Criticality Accident.” U. S. Department of Energy.
■専門誌“Cognition Technology & Work”による特集「JCO臨界事故のヒューマンファクター分析」(内外の専門家による18本の英語論文を収録した特集である)
Cognition Technology & Work Vol.2 No.4(2000)Special Issue: Human Factor Analysis of JCO Criticality Accident, Springer Verlag(http://www.springerlink.com)
(別記)
Lessons Learned(LA-13638“A Review of Criticality Accidents 2000 Revision”)
Lessons of Operational Importance
----Unfavorable geometry vessels should be avoided in areas where high concentration solutions might be present.
----Important instructions, information, and procedural changes should always be in writing.
----The processes should be familiar and well understood so that abnormal conditions can be recognized.
----Criticality control should be part of an integrated program that includes fissile material accountability.
----Operations personnel should know how to respond to foreseeable equipment malfunctions or their own errors.
----Operations personnel should be trained in the importance of not taking unapproved actions
after an initial evacuation.
----Readouts of radiation levels in areas where accidents may occur should be considered.
----Operations involving both organic and aqueous solutions require extra diligence in understanding possible upset conditions if mixing of the phases is credible.
----Operations personnel should be made aware of criticality hazards and be empowered to implement a stop work policy.
----Operating personnel should be trained to understand the basis for and to adhere to the requirement for always following procedures.
----Hardware that is important to criticality control but whose failure or malfunction would not necessarily be apparent to operations personnel, should be used with caution.
----Criticality alarms and adherence to emergency procedures have saved lives and reduced exposures.
Lessons of Supervisory, Managerial, and Regulatory Importance
----Process supervisors should ensure that the operators under their supervision are knowledgeable and capable.
----Equipment should be designed and configured with ease of operation as a key goal.
----Policies and regulations should encourage self reporting of process upsets and to err on the side of learning more, not punishing more.
----Senior management should be aware of the hazard of accidental criticality and its consequences.
----Regulations should exist which promote safe and efficient operations.
----Regulators, like process supervisors, should ensure that those they regulate are knowledgeable and capable.
対外的な発表実績
主要な成果物である英語版は現在作成中で、デジタルテキストとしてのWEB配布および紙媒体としての冊子配布を行なうべく作業中である。
以下に参考として、トヨタ財団枠での最近の主要な発表・報道について記す。
・原子力資料情報室『臨界事故 隠されてきた深層』岩波ブックレット(2004年9月)
・最終報告書『JCO臨界事故総合評価会議報告書』2004年9月(補訂のうえ2005年秋公刊予定)
・毎日新聞「原子力資料情報室が最終報告書きょう発表」(2004年9月25日)
・最終報告会『JCO臨界事故総合評価会議報告会』2004年9月25日
今後の展望
臨界事故に関する情報収集は現在も継続中である(文書開示請求など)。上記のとおり計画より遅れている英訳確定版の確定に全力をそそぐとともに、日本の原子力がかかえる問題を海外へと伝達する経験を原子力の諸問題にまつわる今後の対応にも活かして生きたい。