カネミ油症被害者支援センター |
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佐藤 禮子 さん | ||
http://blogs.yahoo.co.jp/qzg07170 | ||
100万円 |
2002年12月の助成申込書から
1968年に西日本一帯で発生したカネミ油症被害について、国は、主たる原因物質がダイオキシン類の一種であるジベンゾフランであることを正式に認めました。
カネミ油症被害症状は30数年経過した現在も続いており、ダイオキシン類に代表される環境ホルモンの毒性作用と人体被害の発症メカニズムの解明に役立てることを目的に、日本及び台湾で発生した油症被害に関して、文献検索収集及び調査解析、被害者に対する聞き取り及びアンケ−ト調査、自主検診調査などを実施するともに、日台油症共同研究調査を行います。
【 この助成先は、2007年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2007年度の助成事例 】
中間報告から
カネミ油症とは、35年前に西日本一帯で発生した食品公害事件ですが、同時に日本最大のダイオキシン被害でもあります。したがいまして、日本人の体内に蓄積されつつあるダイオキシンが数十年後に私たちの子孫に及ぼす影響を予測する上で、油症の被害者の調査と共に支援活動は重要な意味を持っています。
カネミ油症被害者支援センターは、昨年より女性被害者生殖影響調査を行っていますが、今回の助成の主なテーマは日本より10年遅れて台湾でも同じく発生した台湾油症と日本の油症との比較調査です。6月に台湾調査を予定していましたが、SARS肺炎が流行したため延期を余儀なくされました。被害の比較調査の他に、言葉の壁を乗り越え、両国の被害者がお互いの状況について情報を得ることもこの調査のひとつの目的です。ようやく来る10月初旬に実施できることになりましたが、この調査は大幅に遅れています。
6月からこれまでの間、さらに男性の生殖影響のアンケート調査をはじめ、現在集計内容の検討の段階にきています。これについては、専門家の協力を得て、ダイオキシンの男性への生殖影響という意味で役立つような形でまとめ、何らかの方法で発表を考えています。
女性調査については、8月末にダイオキシン国際会議で日本の女性油症被害者の35年後の生殖影響について発表をおこないました。被害者支援のための活動としては、省庁交渉の他に、10月中旬に日弁連の人権集会にてカネミ被害者が発言できる機会をえました。また、11月29日には35年後のカネミ油症を新たに見つめ、再出発するための集会を東京で予定しています。
完了報告から
日本では36年前、台湾では25年前、人類が未だ経験をしたことがない、ダイオキシン・PCBの食中毒は極めて類似した被害をもたらしている事が明確になりました。10年を経て同じ原因から台湾で起きた事件である事自体、理解し難い問題を含んでいますが、今回はその事件の結果、人体に如何なる被害が生じているかに焦点をあてた調査を行いました。
両国での面接、検診、聞き取り、アンケート調査の結果、人数的には不充分ではありますが、汚染物質は容易に排出されず、全身病としての症状が現在も明らかにあり、生殖毒性は次世代にも影響していることが判明しました。男性被害者健康実態調査では回答者は少数でしたが、胎児性・2世への被害影響に関わる遺伝毒性に関しての疑いを今後は充分研究すべき課題として提起しました。
いずれの国の被害者も、長い年月、治療法のないまま、国の対応も支援体制も不十分なまま放置されています。社会的化学物質汚染の人体への影響が問題になって来ている現在、油症研究は次世代にも大きく影響する事件として国をはじめ専門家は再認識し本格的に取り組むべきです。治療法の開発、差別を受け諦めと沈黙の状態の埋もれた被害者の人権救済を、遅ればせながら、全力投球せねばならないことを多くの関係者は再確認しました。
両国の本格的追跡調査、疫学調査、研究体制の見直し、診断基準の見直し、被害者の人権救済、地域医療の見直し、埋もれた被害者の救済などに充分に役立てると同時に、国際的には環境ホルモンの人体に与える影響として、ダイオキシン類のTDIの見直しや毒性の発現態様の解明等に油症事件は貢献せねばなりません。
今回の調査を基点としてダイオキシン国際会議と日台環境フォーラムにNGOとして参加出来たことは、被害者、支援者、専門家、マスコミ等の人的交流をはじめ、専門家の今後の研究視点の見直しの一助となったことは、運動にとって非常に大きな成果でした。このことは調査のために思い出したくもない辛い体験を語ってくれた被害者への唯一の償いとも言えましょう。
調査結果の詳細内容はレポートで報告していますが、今回の研究の成果が再び油症を社会問題として喚起させる発端になったことは事実です。高木基金からの金銭的支援のお陰で大きな成果を得ることが出来たと同時に、自信と励みと新たな責任を自覚する機会を与えられたことに、センター一同心から感謝しています。
・台湾では油症被害者に対しての専門的研究は日本より進んでいる部分はあるが、現地の被害者と専門家の直接的交流は乏しかった。また、支援体制はなく、知る人のほとんどない事件になっていた。しかし、今回の日本からの呼び掛けにより、台湾主婦連の多くの女性が被害者と会い、調査に協力してくれることで実態を理解し、支援の必要性を認識し、日台環境フォーラムを共催するまで積極的に油症問題に取り組みはじめた事は調査の成果と考える。
・2003年秋、日本の油症治療研究班は、初めて台湾の油症研究者を日本に招き、意見交換を行い、今後定期的に交流、情報交換することを決めた。NGOが国際会議で台湾や日本の専門家と交流し、台湾まで調査に出向いたことの間接的成果と考える。
・九州朝日テレビは今回の日台環境フォーラムに両国の油症問題を取材するため同行した。その後再度両国の油症被害者の実態を放映し、問題を提起しているが、このことも今回の研究の成果と考える。
・日本弁護士連合会は第46回人権擁護大会「蓄積する化学物質と見えない人権侵害〜
次世代へのリスク〜」にカネミ油症事件が取り上げた。その報告として油症被害者が現状を訴える機会を得た。その後、次世代を含めた146人が人権救済の申し立てを行った。その気付きには今回の健康実態調査結果の成果が影響している。
対外的な発表実績、今後の展望
・03.8 ダイオキシン国際会議に参加 発表論文名
Reproductive Effects on 65 YUSHO Women 〜35 years After PCB's/PCDF's exposures 〜 Organohalogen Compounds 63 2003 カネミ油症被害者支援センター 水野玲子
・03-4 Vol.4『環境ホルモン』 藤原出版
カネミ油症の女たち 〜35年後のダイオキシン被害調査から〜 水野玲子
・03.6 公衆衛生 第67巻 第6号 医学書院
カネミ油症健康実態調査報告 〜最大のダイオキシン被害〜 佐藤禮子
・03.10 月刊「むすぶ」 No.394 カネミ油症事件の真実
〜PCBダイオキシン類・人体汚染の影響は世代を超える〜 佐藤禮子
・03.3-04.1 カネミ油症被害者支援センター ニュース 3号〜6号
・04.4 カネミ油症女性・男性被害者・台湾調査報告会資料
石澤春美 水野玲子 坂下 栄
・03.10 日本弁護士連合会 第46回人権擁護大会(松山)被害者実態報告
・03.10 台湾主婦連合会集会参加・日本カネミ油症被害者の実態調査報告
・04.02 日台環境フォーラム・カネミ油症被害者実態報告 カネミ油症被害者支援センター
国会委員会質問 7回
省庁交渉 5回
テレビ放道 地方局含め 多数局に多数回
新聞報道 地方版含め 多数紙に多数回
週刊誌 多数誌に多数回
今後の展望
高木基金の支援もあり、今回台湾、日本のカネミ油症被害者の健康実態調査を行い、それを機にダイオキシン国際会議、日台環境フォーラムで被害者 専門家 政治家 支援者 メディアはじめ多くの方々と交流を持つ事が出来ました。その結果「油症事件はダイオキシン/PCBの複合汚染被害で予想以上に長期にわたる未知の影響をもたらす」「その社会的影響は未だ終わっていない」ということを共通認識し、社会に発信する機会となりました。
引き続き高木基金の支援をうけ、被害者の現在の悲惨な実態をさらに聞き取り調査し、出版報告などを通じて、ダイオキシン/PCB被害の真実は被害者の内なる環境にのみ存在するという謙虚な態度のNGOとして、市民科学者として広く訴え続ける覚悟です。
これ迄築いて来た関係者(被害者・油症研究班・議員・弁護士・行政担当者・マスメディア・海外の専門家・多方面の研究者・専門家 以前の支援者・公害問題の運動経験者・消費者・生産者など)と協力し、全被害者の医療・生活・社会的救済をはじめ、食品の安全、生産者責任、ダイオキシン、PCBをはじめ全ての有毒化学物質の予防原則の徹底、それに伴なう生産規制など考えられるあらゆる手段を行じて、二度とこのような悲劇が地球上に起きないよう人類に発信し続けます。