高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2002年度実施分)





   氏名:桑垣 豊さん
研究テーマ:リサイクルをめぐる物質の流れの実態調査とその評価:
プラスチック・コンクリート・食用油を事例として
 助成金額:50万円

結果・成果:2003年5月の完了報告から
調査研究の経過
調査研究の成果
対外的な発表実績
今後の展望
高木基金への意見

調査研究の経過
2002年8月3日 プラスチック工場 ヨネプラ見学
8月22日 廃油リサイクル工場 ロンフォード見学
8月26日 プラスチック工場 大誠樹脂見学
10月17日 手賀沼せっけん工場見学塩ビリサイクル工場見学
2003年2月3日 松井産業、清田商店塩ビ加工工場見学
2月4日 ジーエル化学工業塩ビリサイクル工場見学
3月5日 照和樹脂、菊地化成関西油脂事業協同組合ヒアリング
4月4日 廃油リサイクル工場見学 釜屋製油所
このページの先頭に戻る

調査研究の成果

[プラスチック]

プラスチックごみ原料の手段として、リサイクルの有効性と限界を調べた。結論としては、プラスチックごみ減量の方法としては、リサイクルの有効性はそれほど大きくなく、年間1,000万トン近い排出量を減らすには、使用量の削減が重要であると判明した。プラスチック産業が使い捨て品から耐久品にシフトすることで、付加価値を維持したまま、使用量を削減することが可能である。中でも、塩化ビニールはリサイクルコストは安いものの添加物やダイオキシンの危険性があるため、軟質塩ビを中心に使用削減が必要である。

具体的な研究内容としては、プラスチックリサイクルを考える前提としての基礎データの整理・推定を行い、以下の内容で分析を行った。
1-1 プラスチックの生産から廃棄まで
1-2 プラスチックごみの蓄積
1-3 ポリ塩化ビニールのリサイクル
1-4 プラスチックリサイクルの問題点まとめ

[廃食用油]

廃食用油の排出量を過去20年にわたって推定した。このような推定は今までに行った例はないようだ。家庭では、油の廃棄率が高まって来た。油として廃棄する割合と、材料として食品廃棄物として排出する割合が増えているためである。しかし、家庭での使用量が減っているので、廃棄する絶対量はあまり変化がない。一方、業務用や食品工場では、逆に歩留まりが向上し、廃棄量は減っているようである。

廃食用油のリサイクル先としては、取引が成り立てば工業原料や飼料、燃料(重油、軽油代替)として多様な利用がある。一般にせっけんや軽油代替などが有名であるが、それ以外への使い道について認識している人は少ない。多様な使い道があることが今回の調査で明らかにできたが、具体的に多様な利用ルートをひとつひとつ確認するまでに至らなかった。今後も調査を続ける予定である。これらをもとに廃食用油のマテリアルフローを推定したが、このような研究の例はほとんどなかった。 具体的な研究内容としては、廃食用油リサイクルを考える前提としての基礎データの整理・推定を行い、以下の内容で分析を行った。
2-1 廃食用油発生量の推定
2-2 マテリアルフローの計算
2-3 経年データ
2-4 手賀沼せっけん工場の考察
2-5 廃食用油リサイクルの評価

★いずれも多様な現状を把握するのが主な目的です。仮説検証型研究ではないので、すっきりしたまとめにすることができませんでした。プレゼンテーションでは、おとしどころはどこかと問われましたが、そういうタイプの研究ではないと思います。もちろん、重要な点をいくつかしぼり説明の努力をしたつもりです。

このページの先頭に戻る

対外的な発表実績
[ 発表の場・媒体など ] [ 発表内容など ]
2002年5月号 月刊 社会運動 プラスチックリサイクル
2002年8月号 月刊 社会運動 コンクリートリサイクル
6月4日 大阪自由学学校 講座 コンクリートリサイクル
6月18日 大阪自由学学校 講座 プラスチックリサイクル
6月25日 大阪自由学学校 講座 家電リサイクル
7月3日 滋賀県庁 市町村担当者 廃油リサイクルの実情
9月22日 エントロピー学会 コンクリート廃棄物と公共事業
11月28日 廃棄物学会 廃油のマテリアルフローの推定
2003年2月
 雑誌「おそい・はやい たかい・ひくい」
アルミ缶リサイクルに関する質問への答

このページの先頭に戻る

今後の展望

[廃食用油]
 廃食用油の排出量の推定をさらに正確に推定することで、廃食用油の水系への流出を減らす方法を探りたい。今回、十分明らかにできなかった、工業製品の原料になるルートに関して、現場を調査したい。廃食用油リサイクルについては、農林水産省以外に調査研究の例が少なく、直ちに政策提言できる段階にはいたっていない。政策提言できるレベルをめざして、今後も調査を続けたい。

[プラスチック]
 政策提言として、年間1,000万トン近い排出量を減らすには、使用量の削減が重要である。プラスチック産業が耐久品を中心にすることで付加価値を維持したまま、使用量を削減することが可能である。中でも塩化ビニールは、その危険性から使用量の削減が必要。特に軟質製品の大幅削減が求められる。しかし、政治的にこれらの実現は利権があるため大変むずかしい。今まで市民運動側でも弱かったプラスチックリサイクルの現状把握をさらに積み重ねることで運動を有利にしていきたい。

★いずれも以前から調査して来たテーマです。今後も調査研究をつづけるつもりです。

このページの先頭に戻る

高木基金への意見


1)事務的な判断を担当する事務局長が不在だからだと思いますが、問い合わせに対する反応がかなり遅いと思います。これは事務担当者の問題ではなく、組織のつくり方の問題であると思います。

2)プレゼンテーションでは、選考委員の専門からはずれた分野に関して明るくないからだととは思いますが、申請書に書いてあることをよく読まずに、その点が不明であると説明を求められました。また、居眠りをしている委員もおられました。

3)応募側はプレゼンテーションを選別の場であるととらえて、減点されないように無難な回答をこころがけ、まとはずれの指摘にも反論できません。しかし、選考する基金の側では、対等な意見の場ととらえ、認識にずれがあったと思います。(2回目は欠席しました。改善されているかも知れません。)選考の場である限り、対等の関係はあり得ないという現実を認識していただきたい。

4)昨年のプレゼンテーションの開始時間が事前の通知とは30分違っていた。私に落選通知が届いた。などのミスがありました。改善をはかられたようですが、私たちにはそれが全然伝わって来ません。

5)日程などの決定が遅く、予定がたたなくて困惑します。

6)先日落選理由を受け取りましたが、トラブルの原因になるのでさけるのが常識と思います。私も反論したくなりました。

7)選ばれ、助成される側は立場が弱く、なかなか意見の言いにくいことをご理解ください。

このページの先頭に戻る


>> 高木基金のトップページへ
>> 第1回助成の一覧へ