高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2004年度実施分)


   氏名:越田 清和さん
研究テーマ:伊達火力発電所反対運動の遺したもの
 助成金額: 30万円

研究の概要:2003年12月の助成申込書から
研究の成果:2005年4月の完了報告から


研究の概要 : 2003年12月の助成申込書から

【経過・成果】 1970年から20年近く続いた伊達火力発電所反対運動について、文献・資料収集の後、現地、伊達市を訪ねるなどして、反対運動に関わった人などへのインタビューを行い、運動の特徴を以下のように明らかにした。

@全国に広がった反公害住民運動の一環として、「環境権」裁判などで、大きな役割を果たした。
A「開発主義」への抵抗である。それは「お上」(地域独占企業と行政)への抵抗であり、その背後にある「開発」という支配イデオロギーに対する「正義」の訴えであった。「正義」の根底にあるのは、地域の中に根付いてきた自然と人間の関係、国家から自立して生きてきた自信など、「民衆的」思想である。
Bそこから生まれた思想表現として「海はだれのものでもない。漁師だけのものでもない。地球全体の生物のものである」(野呂儀男さんの最終弁論)などがある。
C自分たちの手による徹底した裁判闘争(24件の訴訟)。とくに「環境権」を前面に出し、公害が出る前に建設を差し止める動きへのさきがけとなった。
D火力発電所の温排水や大気汚染、パイプラインによる影響を、漁民など住民の体験をもとにした調査を行ない、「民衆の科学」を実践し、開発推進にお墨付きを与える「御用学者」に対する批判を展開した。
Eアイヌ民族の復権運動へのインパクト。1960年代後半から若い世代のアイヌを中心に広がったアイヌ民族の権利回復の動きと深いつながりを持っている。このたたかいが、後の伊達市先住民族アイヌ慰霊碑の建設(1992年)やアイヌ共有財産裁判、伝統漁法の復活につながっていく。
Fオルタナティブの提案として住民主体の環境基本条例(1997年〜)につながっていった。

【今後の展望】 反対運動に関わった人たちへのインタビューが中心になり、北海道電力や伊達市への聴き取り調査ができなかったので、今年度の継続調査を行なうつもりである。調査結果は、ブックレットなどの形で公表していく。その第一弾として、反対運動の中心だった斉藤稔さんの話をもとにしたブックレットを計画している。また、伊達市図書館にある「伊達火力発電所関連資料」が老朽化しているので、新しい資料目録の作成およびCD-ROM化などを、伊達市に働きかける。

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研究の成果:2005年4月の完了報告から
◆ 完了報告書PDF 271KB ◆ 会計報告 PDF 50KB
◆ 研究レポート
『抵抗を制度化する―北海道・伊達の経験から考える―』 PDF 1,357KB
<助成報告集Vol.2,2005掲載>


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