高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2004年度実施分)


グループ名:ナギの会
代表者氏名:渡辺 寛さん
研究テーマ:江戸期からの慣行的水利用の
実態調査・研究をすすめ、新時代の河川管理、
環境保全の資料として提供する。
 助成金額: 25万円

研究の概要:2003年12月の助成申込書から
研究の成果:2005年4月の完了報告から

<参考>
助成先のウェブサイト:http://nagi.popolo.org/

研究の概要 : 2003年12月の助成申込書から

【背景】 「日本の水収支」に関する資料によれば、2001年度における我が国の水使用量(取水量ベース)は、総降雨量の12%強、約859億m3で、使用目的は、生活用水19%、工業用水15%、農業用水66%と、圧倒的に灌漑用に使われたことになっている。各地の河川は、上流で作られたダム群のため、中流域から水がなくなる姿が見られ、渇水期は水道の節水・断水が頻発し、これを口実に新たな水源開発としてダム建設が進められている。しかしこうした水不足という時期でも、農業用水には水が豊かに流れるという奇妙な現象がある。一方、潅漑面積は各地で激減し、金沢市ではこの50年間で潅漑面積は80%も減少しており、地区によっては10%を切るところも出てくる。しかし農業用水には当時のままの流量が水利権として保障され、実際には水利権以上の流量が入り込んでいる。

【経過】 石川県内23市町535団体の慣行水利権届出書を入手し分析を行った。県内の犀川水系流域委員会を傍聴し、委員会に対して、農業用水の適正利用と水利権についての申し入れを行った。また、犀川主要7用水の流量調査、辰巳用水の水路実態調査などを行なった。

【成果】 「慣行水利権」で守れられた農業用水の問題が、次のように明らかになった。
●各用水への流入状況は、江戸時代の慣行のままで、河川管理者も放置している。
●洪水期以外、取水口は開放されたままで、水利権以上の流量が入りこんでいる。
●ダムで開発された河川維持流量は既存農業用水に入り込み、費用負担もなく利益を生じさせている。
●農業用水の取水堰は水防上危険箇所が多く、見直しが必要である。
●「慣行水利権」の中身は灌漑用だけでなく、様々な水利権の複合体であり、新しい慣行水利権の管理主体は、農業団体だけでは不十分で、実際の「慣行」にみあう新しい管理主体形成が必要である。

【今後の展望】 本会はこうした現状を改善するため、事実と道理に基づいて批判し、日々刻々、金沢市内で続いている河川整備事業と都市計画事業に対して、問題提起を続けていく必要を強く感じている。そのために、法的な検証作業と農業用水の実態調査をさらに継続したい。これまで全国でも、全く取り組まれなかった農業用水の実態解明や、慣行水利権の検討が進めば、利水面での「水不足」は解決するし、河川維持流量の確保によって河川の環境保全にも有効であろうと思う。こうした問題は全国共通であるため、基本高水と慣行水利権の二つを解明することによって、日本の水問題を解決できるかもしれないと感じている。

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研究の成果:2005年4月の完了報告から
◆ 完了報告書PDF 429KB ◆ 会計報告 PDF 45KB


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