高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2004年度実施分)


   氏名:岡本 尚さん
研究テーマ:我が国に於けるダムの堆砂進行速度を
決定する要因と法則性の調査・研究
 助成金額: 35万円

研究の概要:2003年12月の助成申込書から
研究の成果:2005年4月の完了報告から


研究の概要 : 2003年12月の助成申込書から

【背景】 我が国では、ほとんどの主要河川にダムが建設されているが、当初予想もされなかった大量の堆砂のために、本来期待されていたダム機能が損なわれたり、河川の自然環境などに大きな影響を与えている。従来、ダムの堆砂量は、類似地域の堆砂実績に、流入河川の流域面積を掛け合わせることで見積もられてきたが、ダム湖内で、どれだけの土砂が沈降し、ダム内に堆積するかは、ダムの容量と水の滞留の具合が無視できないと考え、独自に研究を行ってきた。

【経過】 特に堆砂の著しい50ダムについては既に分析していたが、今回の助成を受け、全国874のダムの中から、分析対象とする70ダムを改めて抽出し、これまで入手できていなかった実際の流入量のデータ(過去10年分)を国交省などから入手して、より精度の高い分析を行った。また、特徴的なダム、12カ所の現地視察を行い、これまでの分析方法と結果の妥当性を検証した。

【成果】 ダムの容量と実際の流入量から算出した「水滞留率」(総貯水容量÷平均流量=ダムの総貯水量の水が入れ替わるのに要する日数)と、ダムの堆砂量(流域面積あたり)が比例することを予想したが、実際にはバラツキが大きかったので、さらに内容を分析した結果、ダムを次のような三つのグループに分けると、水滞留率と堆砂量に比例関係があることが確認できた。

1.流域面積あたりの流量が特に少なく、実際の堆砂速度が遅いダムのグループ
2.1と3の中間的なグループ
3.流域あたりの流量は普通だが、実際の堆砂速度が速いダムのグループ




【今後の展望】 国に対しては、どうしてもダム建設を行う場合には、ダムの総貯水容量や水滞留率を考慮して、今まで以上に正確な堆砂の見積もりを行うことを求めていく。また、静岡県に対しては、太田川ダムの堆砂見積もりが大きく間違っている危険性を指摘し、計画の見直しを求めるとともに、利水の必要性がなく、治水の効果が乏しいこととあわせてダム建設中止を求めていく。今後の調査研究としては、上記の1.(流域面積や年間降水量に比べて流量の少ない事例)について地域的降雨量と伏流水の両面から検討を行うなどして、ダム堆砂についてさらに深く追及したい。

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研究の成果:2005年4月の完了報告から
◆ 完了報告書PDF 348KB ◆ 会計報告 PDF 52KB
◆ 研究レポート
『我が国に於けるダムの堆砂進行速度を決定する要因と法則性の調査研究』 PDF 1,678KB
<助成報告集Vol.2,2005掲載>


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