高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2006年度実施分)


   氏名:関根 彩子さん
研究テーマ:アナログ式ブラウン管TV受像機器
廃棄物(バーゼル条約対象廃棄物)の発生の予測と、環境リスクおよびとるべき対策について
 助成金額: 30万円

研究の概要:2005年12月の助成申込書から
 途中経過:2006年10月の中間報告から
結果・成果:2007年4月の完了報告から


2007年6月の成果発表会にて

研究の概要 : 2005年12月の助成申込書から


2010年末までに、テレビの放送が全面的に地上デジタル波に切り替わる。このため、現在使われているアナログ式の受像機器が大量に廃棄物となることが予測される。

ブラウン管には鉛を含むガラスが使用されており、鉛を含む廃棄物はバーゼル条約によってOECD諸国から非OECD諸国への輸出が禁止されている有害廃棄物に該当する。しかし日本ではすにブラウン管TVの製造は終了しており、日本政府を初めG8の主導する「3Rイニシアティブ」の下、途上国輸出してのリサイクルが拡大する事が見込まれる。この危険性の規模と採りうる対策について下記の要領で調査を行いたいと考える。

1.将来アナログ式ブラウン管TV廃棄物の発生する量を過去の販売台数や買い換え傾向、関係者への聞き取り調査等から予測する。

2.輸出実体を把握する。税関の実行関税率表では、TV廃棄物は独立の項目立てがなされていないため、税関統計による数字は得られない。よってメーカー、リサイクル業者、輸出業者、税関等への聞き取りを主として、輸出先や量を調査する。

3. 輸出先のリサイクル現場の一つを、環境上、衛生上の視点から視察する

4. 採るべき国内および輸出先国で採られるべき対策について考察を行う

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 途中経過:2006年10月の中間報告から

ブラウンテレビの廃棄物は、今後短期間に大量発生すると予想されますが、国内ではブラウン管がもう製造されていないので、途上国へ輸出されていきます。しかし、ブラウン管のガラスには鉛が含まれているため,先進国から途上国への輸出が禁止されている有害廃棄物にあたります。

この調査では、その量や形態、どのような環境的、社会的問題があるのかを明らかにし、既存の国内法や国際的な枠組みの中で、当該廃棄物についてどのような対応が必要か、を考察しようとしています。

現在までに、
・家電リサイクル(テレビ)のルートや国内のリサイクル工場についての概略(場所、処理量など)
・公表されているデータで、どこまで具体的な量やお国内ルートが把握できるか
・国外へ出されている輸出先の仮定
・最適な発生量の試算方法の検討 などの調査を行っています。

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結果・成果:2007年4月の完了報告から


(目的)

アジアの途上国を中心に、日本から輸出される中古ブラウン管テレビの輸出量と輸出傾向を調査した。ブラウン管のガラスには鉛が含まれているため,先進国から途上国への輸出がバーゼル条約で禁止されている有害廃棄物にあたる。しかし、廃棄物ではなく「中古品」として輸出されることで、バーゼル条約の手続きを経ずに大量の有害廃棄物がアジアを中心とした途上国へ流出している。この実態を、統計から把握し、排出量や移動ルートなどに関する既存研究との比較検討を行い、今後の輸出予測を出すことが本研究の目的である。


(数量の傾向)

ブラウン管TVについて、単価が8000円未満のものを中古とみなし、その輸出数量を見ると、輸出全体に占める割合が2000年時点でも85%と大きいが、その後ブラウン管TVの国内生産が終了する2004年以降は、ほぼ全てが中古品の輸出となっている。


(輸出先)

輸出先では香港が圧倒的に多く年間百数十万台で推移し、次いでフィリピン、カンボジアとなっている。

香港については、積み替えて他に再輸出される数値も含まれているという報告があり※、香港から先可能性のあるルートとしては中国へ持ち込まれている、他へ海路再輸出されているといった情報が得られているが、数字は把握できていない。


(税関別傾向)

ブラウン管テレビを輸出する税関のうち、中古品と想定した8000円未満のテレビを輸出しているところは2000年から2006年の間平均約15カ所である。各年とも最も多かったのが横浜、次いで大阪であった。3位は2004年までが神戸で、2005年以降は博多となり、神戸は4位となっている。大貿易港の中で、名古屋、東京は2004年までは主に新品のTVの輸出であったが、東京は2005年からは中古TV輸出が急増し、5番目となっている。

当初の研究計画では、廃テレビの発生量を予測することを中心としていたが、2007年3月に、業界(JEITA)より、予測結果が発表された。これを受けて、本研究では、その予測結果の示唆すること(実績ベースで)を確認し、さらに、輸出量とその結果を予測することとした。この変更のため、完了報告作成時点では、結論に至っていない。

今後、行う予定の作業は以下の通りである。
a. 既存の排出実績データ(900万台のうち、284万台)と比較する。ただし、ブラウン管であることに留意。
b. 他の機関による排出予測(2010〜2013年に1428万台)から、全体・国別の日本からの中古品輸出総量を推計する。


◆  助成研究の完了報告書 PDF 22KB ◆  会計報告 PDF 6KB


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