![]() |
高木仁三郎市民科学基金 研修の概要 (2007年度実施分) |
助成先氏名:古屋 将太さん 研修テーマ:エネルギーパラダイム転換のための
政治メカニズムに関する研究
助成金額: 65万円-スウェーデン「2020年脱石油宣言」の裏側に学ぶ- 【研修先:スウェーデン】 研究の概要:2006年12月の助成申込書から 途中経過:2007年 9月の中間報告から 結果・成果:2008年 4月の完了報告から |
研修の概要 : 2006年12月の助成申込書から |
本研修の主な目的は、スウェーデンが「2020年脱石油宣言」を掲げるに至った政治的背景についての調査から、日本のエネルギーパラダイム転換のための示唆を得ることにある。 今日、地球温暖化やピークオイルを背景に、持続可能なエネルギーへの急速かつ大胆なエネルギー転換が必要な状況にあるが、日本では既存のエネルギー体系を支える政治力学によってそのようなエネルギー転換が妨げられている。それに対して、スウェーデンは2006年6月「石油に依存しないスウェーデンに向けて」を発表し、世界をリードする姿勢を打ち出している。本研修では、この戦略策定の主要なステークホルダーへの調査から、このようなパラダイム転換を可能にした政治的背景を明らかにし、日本の国レベルのエネルギーパラダイム転換のための示唆を得ることを第1の課題とする。 第2の課題は、ローカルレベルのエネルギー転換の実態を明らかにすることである。エネルギー転換は、パラダイム転換とともに現実のエネルギー体系を換えていく試みであり、その現場ではパラダイム転換とは別の利害対立構造が存在する。具体的には風力発電における景観・渡り鳥の問題やバイオマス利用におけるエネルギー作物問題などがある。本研修では、エネルギーパラダイム転換の先にある自然エネルギー導入の社会問題化のメカニズムを解明し、日本のエネルギー転換の実行性を高めるための示唆を得る。 以上の2つの課題を解くため、チャルマーズ大学での研修を予定している。
|
途中経過:2007年9月の中間報告から | ||||||||||||
|
結果・成果:2008年4月の完了報告から | |
今回の調査研究・研修は、紆余曲折を経て、デンマーク・オールボー大学PhDコース進学に向けての準備とPhD Projectの予備調査という位置づけとなりました。当初予定していた受け入れ先からキャンセルされ、他の可能性を探るなかでオールボー大学のAndrew Jamison教授から指導の快諾をいただき、高木基金の助成で2008年2月〜3月にかけてJamison教授の講義に出席するとともに、PhD Projectの予備調査を行いました(オールボー大学には2008年5月に入学予定)。 Jamison教授の講義(「持続可能な発展の政治学」「科学論」)に出席し、欧州および米国の社会科学的環境研究の歴史と主要な理論を学ぶことができ、「変化志向の研究(Change oriented Research)」や「行動志向の研究(Action oriented Research)」という現代の社会科学的環境研究のスタイルを身につけることができました。また、オールボー大学のPhD Studentの情報共有ネットワークに加わることができ、その中で私と近いテーマ設定の学生と知り合い、今後協働して研究を行っていくことになりました。 PhD Projectの予備調査として、デンマーク南部のロラン島で地域エネルギー事業開発を行うBaltic Sea Solutionsを訪問し、インタビューを行いました。Baltic Sea Solutionsは、地域エネルギー事業開発のプロフェッショナル集団であり、これまでデンマークの地域エネルギー事業で典型とされてきた協同組合形式とはやや異なる手法をもちいていることがわかりました。また、スウェーデン南部のマルメ市で持続可能な都市開発を進めるマルメ市環境局とソーラーシティ・マルメ担当者を訪問し、インタビューを行いました。マルメ市は、100%自然エネルギーのモデル地区開発や大規模な太陽光・太陽熱の利用などを推進しており、それらは政治的イニシアティブが実現させた部分が大きいということがわかりました。 今後の展望としては、第一にPhD Projectでの研究のフォーカスをより明確にすること、第二にそのフォーカスに関連する先行研究をフォローすること(特に政治社会学的な環境研究)、第三に今回行った予備調査を手がかりとして、欧州・北欧で行われている地域エネルギー事業の事例をさまざまな前提条件のもとに情報収集することを考えています。 当初の計画から大幅にスケジュールがずれたため、現時点では対外的な発表実績はありませんが、今後PhD Projectを進める中で、今回の調査研究・研修で得られたデータ・知見を生かし、論文の投稿、国際会議での発表などを行っていきたいと考えています。また、学術的なアウトプットだけでなく、社会に「変化」を生み出すようなアウトプットも出していきたいと思います。 |
>> 高木基金のトップページへ >> 第6回助成の一覧へ |
![]() |