高木仁三郎市民科学基金 研修奨励の概要 (2007年度実施分)





助成先氏名:胡 冬竹さん
研修テーマ:文化運動としての中国農村再建運動
――中国晏陽初郷村建設学院の事例研究
【研修先:中国】
 助成金額:65万円
研究の概要:2006年12月の助成申込書から
結果・成果:2008年 4月の完了報告から


研究の概要 : 2007年1月の助成申込書から

1949年に新中国が成立してから、1978年のいわゆる「改革開放政策」が始まった時点まで、中国近代化においていわゆる原初的累積が急進的に行われてきた。このプロセスの中、当時の国際事情においては、急進的な工業化が必要であったため、農業は多大な犠牲を払うことを余儀なくされた。さらに1978年から今日に至り、中国は建国以来近代化の「第二の波」に巻き込まれつつ、グローバリゼーションの波に洗われている。「改革開放政策」の引き金にもなった中国農村の改革が二十年近く実施されてきたが、さらに農村はグローバル化する経済過程に飲み込まれながら、徐々に「三農問題」(農民の貧困、農村の疲弊、農業の不振)として意識されるようになって来た。

本調査は具体的な農村再建拠点――(晏陽初郷村建設学院)での研修と調査を通じ、今日における中国農村再建の実態に迫ることを目指す。1920年代の中国でも、「農村再建運動」の実験は、十年間ほど進行していた。その経験は、今日の運動の中でも生かされている。本研究はとくに、農村に対する経済的、法律的支援のほかに、地域の文化活動を通して、農民たちの主体性を再構築し、それによって新たな人間と人間、人間と土地との「品格がある連帯」を促進する働きに注目してみたい。またその際には、日本の三里塚闘争の経験も参考にしたい。

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結果・成果:2008年4月の完了報告から

1978年の「改革開放」が始まって以来、今年北京オリンピックが開催される2008年まで、中国はこれまで、1949年の建国以来、近代化の「第二の波」のプロセスを遂げてきた。このプロセスの中で、中国を巡る激しい変化がおこりつつある国内と国際環境のもとで、中国の農村問題も新たに位置づけさせられるようになった。特に、経済政策的な観点と違って、文化的再建を通して、農村全体の再建を促すことがすこしずつ認識されるようになった。本調査研修は中国農村文化再建の発信地の一つである中国晏陽初郷村建設学院の各地での取り組みへの観察を通して、今中国農村再建の現場を迫ることを目指した。結果としては、国内においても、国際においても、流動的な状況に置かれている中国で、郷村建設学院は積極的に複雑でかつ流動的な状況に応じながら、文化再建の理念を手放さずに、文化的活動を行ってきた。各地の実際の状況に主体的に接近して、エコトイレの建設、テント芝居への協力など、具体的な共同作業を通して、村の住民たちと出稼ぎ労働者たちと有機的な関係を結ぶことになった。それは経済的、イデオロギー的に回収できない真の民衆の間の連帯関係だと考えられる。

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