高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007年度実施分)





グループ名:NPO法人メコン・ウォッチ
代表者氏名:後藤 歩さん
研究テーマ:メコン河支流におけるベトナムのダム開発と国境を
越えたカンボジアへの環境社会影響に関する調査
研究
 助成金額:50万円
研究の概要:2006年12月の助成申込書から
結果・成果:2008年 4月の完了報告から

<参考>
助成先のウェブサイト:http://mekongwatch.org

研究の概要 : 2006年12月の助成申込書から

ベトナム中央高地からカンボジア北東部に流れるメコン河の国際支流セサン川では、上流ベトナム領内に建設されたヤリ滝ダムからの放水が、下流のカンボジアに甚大な環境社会被害を及ぼしている(添付1地図参照)。被害住民は、被害への補償と再発防止、川の流れの回復、参加と情報公開が確保された河川開発を求めているが、ベトナム・カンボジア両政府による適切な対策はとられていない。市民グループの自発的な被害の実態調査は「非科学的」として拒否されており、被害住民は「科学的」根拠を示せず補償を受けられない。それにも関わらず、セサン川、またセサン川と並んで流れるスレポック川とセコン川には、同じプロセスで次々と新たなダム建設が計画・実施されている。なお、これらの川のダム開発には、日本の資金が大きく関わっている。

この中で、市民社会による2つの活動が緊急性を持つ。一つは自らの手による「科学的」調査の実施であり、もう一つは被害の未然回避である。本調査研究は、後者を実現する道筋の中で重要な役割を持つ。本調査研究では、国境を越えた被害の実態、問題解決を阻む要因とその政治・歴史的背景、計画・建設中のダムへの懸念、そして援助国・機関の責任を明らかする。日本の資金の影響が強いにも関わらず、市民の視点を持つ日本語の文献は皆無に等しく、日本の政策決定者が問題を十分に認識しないまま、新たな被害を引き起こす事業が支援されることが懸念される。本調査研究の成果によって日本の政策決定者へ適切な判断を促し、安易な河川開発による被害を回避することを試みる。

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結果・成果:2008年4月の完了報告から

担当スタッフの病気療養が長引いたため、助成期間の延長をお願いすることになった。2008年3月には担当スタッフの担当医師から近々復帰することが難しいという見通しを受けたため、メコン・ウォッチの他のスタッフが以下のスケジュールで調査研究活動を行うことになった。活動の内容は申請時と同様である。

2008年3月〜5月
現地訪問を含めた情報収集
2008年5月〜7月
分析と執筆
2008年7月〜8月
編集、写真の選定、校正、ブックレット出版
2008年8月
調査結果の発表

成果は日本の政策決定者の適切な判断を促す材料として活かすことを目指す。具体的な方法として下記の2つを行う予定。

・日本の政府、開発機関などへの情報提供

本調査研究の結果明らかになる体系的な情報、教訓、そして懸念を、財務省や外務省など日本の政策決定者、国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)などの開発機関へ伝えていく。事業の意思決定の上流部分に被害住民の視点からの情報提供を行い、日本の支援による各事業・計画の環境社会配慮や情報公開の改善を求め、開発による被害の回避を目指す。

・日本の市民社会への周知

本調査研究の成果は、ブックレットの広範な配布、およびカンボジアのNGOを招いた東京と関西におけるセミナーを通して、日本の市民社会へ広く知ってもらう。これにより自分たちのお金がもたらしている影響の実態を知ってもらい、開発事業を見るための批判的な視点を提供する。セミナーの開催は2008年8月を予定している。また、ブックレットはメコン・ウォッチのウェブサイトにも掲載する。

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