高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007-08年度実施分)


グループ名:穴あきダム特別調査チーム
代表者氏名:遠藤 保男さん
研究テーマ:多目的ダムから治水専用(穴あき)ダムへの
用途・形状変更等に関する調査研究
 助成金額:70万円

研究の概要:2007年12月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から

研究の概要 : 2007年12月の助成申込書から

我が国は、水源開発としてダム建設を続けてきた結果、全国的に需要を上回る水源を保有し、いわゆる「水余り」と言われる時代に入った。現在、新河川法に基づき河川整備基本方針及び河川整備計画の策定が進んでいるが、河川整備計画策定時に見直されるべきダム計画の中には、利水目的を失ってなお中止されずに進められるものがある。

その際、ダム計画の存続を図りたい河川管理者は、従来の建設目的を利水・治水の多目的から治水専用へと変更し、ダム堤体下部に穴を開け、通常時は水をためず、洪水時のみ限定された治水効果を有する「穴あきダム」にするから「環境にやさしい」と宣伝するようになった。しかし、@環境影響、A治水効果、B経済性のいずれの面からも、その有用性に対しては懸念がある。

穴あきダムの問題点1
益田川ダムに見る、上下流を遮断する構造

そこで、先行事例の調査の他、河川工学者、河川管理者(国土交通省、自治体)、地域住民、市民団体などへの聴き取り、資料請求および分析を行い、また、穴あきダムへ変更する経緯、ダム建設の必要性、法的手続なども含めて、批判的な調査・検証を行い、「穴あきダム」化による無用なダム建設を許さないことが、本調査の狙いである。

調査結果は報告書にまとめ、関係団体、河川管理者、報道機関等に発表および配布する。

減少傾向にある日本全国の水需要

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 途中経過:2008年9月の中間報告から

穴あきダム計画は、河川整備計画に位置づけられたものから事業者側が主張しているだけの段階を含め13箇所、北は三笠ぽんべつダム(北海道、国直轄)から、中止の可能性も非常に高い川辺川ダム(熊本県、国直轄)まで各地にある。穴あきダム特別調査チームは08年3月に1回目の現地調査(足羽川ダム事業と辰巳ダム事業)を終えた。また、事業者による穴あきダム実験を見学し、穴の上流側には流木除けの構造が設置され、下流側には魚道、および水の勢いを弱めるための構造が設置され、穴あきダムもまた川の自然な流れや魚類の降下・遡上の障害となることが、明白になってきた。治水効果も通常のダムにも増して限定的である。さらなる調査や関係者ヒアリングを進めていきたい。

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