高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007-08年度実施分)


   氏名:森 明香さん
研究テーマ:ダム計画をめぐる生活史
―熊本県川辺川流域での聞き書き―
 助成金額:20万円

研究の概要:2007年12月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から

研究の概要 : 2007年12月の助成申込書から

本調査研究では、運動当事者へのインタビューを通して、川辺川ダムをめぐる反対運動の「歴史的事実」を記述することを目的としている。

多目的ダム計画である川辺川ダム計画をめぐる今日の反対運動は、90年代初頭にその萌芽が見られる。以来、運動を全国規模に展開させ、裁判闘争や漁業権の強制収用に対して対抗し、勝利をおさめてきた。計画が白紙化した2005年以降、再度国土交通省によってダムを前提とした河川整備計画が策定されたが、ダム利水の最大受益地相良村の事業撤退(2006.8.2)、発電事業の撤退(2007.6.15電源開発による)、利水事業の休止(2007.11.22農水大臣明言)など、ダム計画史上かつダム反対運動史上、類をみない展開をみせているといっても過言ではないだろう。

このような注目すべき展開をみせている川辺川ダム反対運動であるが、この反対運動に焦点をあて具体的な運動展開を論じた調査研究は、ほとんどなく既存の研究は運動の概略を述べるにとどまっている。本調査研究では、具体的な運動展開について、運動が顕在化する以前から今日まで焦点をあて、その「歴史的事実」を記述したい。

申請者が出会った運動当事者からの言葉の、印象的なものの一つに、次の言葉がある。

「社会を変えるのは、思想ではなく、事実である。」

研究者の果たすべきことの一つが、歴史を記述し、考察し、そこから教訓を得るための準備をすることであると、申請者は考えている。振り返るための一つの「歴史的事実」を記述し、その「事実」を考察し、発信していきながら未来へつながる政策を考えていきたい。

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 途中経過:2008年9月の中間報告から

本調査研究は、熊本県南部を流れる川辺川に42年前に計画されたダム事業をめぐる歴史の事実について、数々の成果を挙げてきた下流域住民を担い手とする住民運動に焦点を定め、描き出すことを目指すものである。

高木基金の助成と流域の方のご厚意によって、現地での長期にわたる滞在が可能となった。7月7日から9月14日にかけて現地に滞在し、住民団体と行動を共にさせていただきながらお話を伺った。偶然にも、2008年4月に当選した蒲島郁夫県知事が「9月県議会の冒頭でダム計画に対する見解を表明する」としていた直前から表明まで(厳密に言えば「ダムの最大受益地」とされる下流の人吉市長(07年4月当選)及びダム建設予定地の相良村(08年3月当選)も知事と同様に8月末から9月の間に態度を表明するとしていた)を現地で過ごすことができた。

当初は、例年8月末に中下流域住民の有志による実行委員会が主催していた現地調査について、企画段階から関わり関係者へのインタビューを予定していたが、上述の情勢から、住民団体主催のダム反対集会の企画・運営や要請行動に携わりながら音声やメモといった記録をとることに力点を置くよう計画を変更した。2ヶ月強の滞在から、現在の川辺川ダム問題への社会的関心の高さが下流域を主とした15年にわたる運動によるものであることを再確認すると同時に、この運動を支えてきたのは住民不在の事業計画への疑問と言葉にすると陳腐になってしまうほどの郷土愛であること痛感した。

現在はインタビューデータや収集した資料の整理を行っている。これらのデータを踏まえて、冬に短期の補充調査を実施し、報告書の作成に取り組む予定である。

住み込み調査 2008.07. 有識者現地見聞


住み込み調査 2008.08. 促進協への抗議

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