高木仁三郎市民科学基金 研修奨励の概要 (2007-08年度実施分)


   氏名:根本 雅也さん
研修テーマ:原爆被害の継承と実践
【研修先:広島医療生協原爆被害者の会】
 助成金額:50万円

研究の概要:2007年12月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から

研究の概要 : 2007年12月の助成申込書から

世界に存在する核兵器は、人々の平和と生命を常に脅かし続けている。核兵器に反対する第一歩として、被害を理解することが重要となる。なかでも、原爆被爆者が自らの体験を話す証言活動は、実際に体験した者の言葉として重視されてきた。

被爆二十年を過ぎて「被爆体験の継承」が叫ばれて以降、証言活動は組織化され、多くの人々が被爆者の話を聞くことができるようになった。しかし、時間の制限、一人当たりの人数の多さ、事前学習の弱さといった弊害が生まれ、そこでは被爆者個々人の戦後の生活や生き様、大勢を前にしては話すことができない経験、証言活動にかける思い、そして今でも日常の様々な折に感じる放射線被害の存在と不安を知るすべはない。被爆者の高齢化が進む今、こうした弊害を乗り越えた理解と実践を早急に行う必要がある。

本研修では、被爆者とともに原爆被害者の会の運営に当たり、また活動(証言活動、被爆者同士の交流など)をともにすることで、個々の被爆者との関係を深めていく。それを通じて、原爆被爆者が抱える不安や証言活動への思いなどを深く理解し、自らが「継承」することを目的とする。

本研修を終えた後、申請者は自らのやり方で「継承」活動を企画・サポートしていく。具体的には、東京に居住する被爆者に対して、少人数での聞き取りを行い、それを継続的に行っていく。また、本研修で理解し、明らかになった事柄を整理し、論文/学会での発表を行う。

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 途中経過:2008年9月の中間報告から

本研修では、被爆者とともに原爆被害者の会の運営に当たり、また活動(証言活動、被爆者同士の交流など)をともにすることで、原爆被爆者が抱える不安などの現状や証言活動への思いなどを深く理解し、まず自らが「継承」することを目的としている。

この目的を達成するため、5月から毎月一回ずつ行われる役員会と会報の発送作業に参加した一方で、会の行う活動に同伴した。6月には原爆被害者の会が姉妹血縁している韓国原爆被害者協会陜川支部を会員とともに訪れ、現地の被爆者と交流した。8月には、原水爆禁止世界大会などの諸行事で会員が発行した手記集の販売を会の被爆者とともに行った。7月から8月にかけては、会の被爆者が行う証言活動に同伴し、被爆の証言に対する人々の反応と証言者の感想などを理解しようとした。また、会員の一人が毎年参加している小学校の慰霊祭に参加するなど、会や会員との関わり方は多岐に及び、かつその関係を深めていった。

こうした会の活動に全般的に参加する一方で、より深くひとりひとりの被爆者の現状や戦後の暮らし、証言活動にかける思いなどを理解するために、会の被爆者やその他で証言活動を行っている被爆者に個別に聞き取りを行った。また、会員と会のおかれてきた状況を把握するために、被害者の会の初期のころから発行されている『会員だより』をすべて複写した。

9月で研修を切り上げ、これまでに得た聞き取りや観察したデータおよび資料を整理していく一方で、これまで得てきたことをもとに在東京の被爆者に対して聞き取りを行っていきたいと考えている。

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