高木仁三郎市民科学基金 研修奨励の概要 (2007-08年度実施分)


   氏名:小野田 真二
研修テーマ:欧州の空間計画に関するコースへの参加と、
戦略アセスの整理及び発電所の扱いに関する日欧比較研究
【研修先:スウェーデン Blekinge Institute of Technology
 助成金額: 40万円

研究の概要:2007年7月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から

研究の概要 : 2007年7月の助成申込書から

本年3月、環境省主催の戦略的環境アセスメント(SEA)総合研究会により、SEA共通ガイドラインが策定されました。しかし同ガイドラインはSEAと呼ぶよりもむしろ、これまでの事業を対象とする環境アセスメント(EIA)に限りなく近いものとなったと言えます。これまで日本において、意思決定の上位段階(すなわち戦略的レベル)に環境の視点を入れ込むためのSEAについて行政の対応・学術研究が不十分であり、ガイドライン策定によりSEAに関する議論が収束に向かいかねないことに大きな懸念を持っています。

本研修では、EUにおける持続可能な発展戦略を学び、経済成長を目指す一方でEUがどのように環境・社会とのバランスをとろうとしているのかについて検討を加えます。研修の主なものにはEUの役割・各国への影響、域内の国・地域の発展パターン、持続可能な開発(発展)の基礎、革新的政策、公共政策の役割などが含まれます。SEAについては、空間計画の中で環境の持続可能性の確保のための鍵となる政策として紹介されます。

私は修士論文では日本の現行の環境アセスメント制度について検討を加えました。今回の研修では、SEAの基礎的な知識の獲得とともに、各国におけるSEA制度の導入・実施状況、取り組みの違い、課題などについて検証し、今後日本がSEAとどのように向き合っていくべきかの示唆を得たいと思います。本研修が修了した後には、博士課程へ進学し、引き続き日本でのSEA(の本質的部分)の適用可能性を探っていきたいと考えています。

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 途中経過:2008年9月の中間報告から

本研修は、ブレーキンゲ工科大学にあるEuropean Spatial Planning and Regional Developmentと呼ばれる1年間の修士課程のコースで、前期にヨーロッパが一つの地域として経済・社会・環境の3つの柱に対して掲げる政策と、各国/地域がいかにそれに対応しているのかについて学び、後期に論文執筆を行いました。

論文ではエネルギー部門における戦略的環境アセスメント(SEA)に関わる課題を、スウェーデンの風力発電所と日本の発電所全般を事例に比較検討しました。その結果、事業を対象とする環境アセスメントとの混同、SEA実施を妨げている計画策定体系、SEAに対する抵抗・ためらいの原因となっている国家政策、環境情報への不十分なアクセス、が共通的課題として挙げられました。また、本論文作業を通じ、特に日本では市民参加の前提となる環境情報へのアクセスが弱いことが分かりました。今後については、博士課程等で同様の研究を続け、日本での市民参加・環境アセスメントの強化・推進に役立っていきたいと考えています。

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