高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007-08年度実施分)


グループ名:VOC総合研究部会
代表者氏名:森上 展安さん
研究テーマ:簡易分析法によるプラスチック廃棄物処理による
大気汚染の研究
 助成金額:20万円

研究の概要:2007年12月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から
<参考>
助成先のウェブサイト: http://www.pp.iij4u.or.jp/~morigami
これまでの助成研究:2007年度実施分

研究の概要 : 2007年12月の助成申込書から

今まで行ってきた簡易クロマトグラフ型携帯VOCモニターによる大気中の揮発性有機化合物分析法の研究で、大気汚染が測定場所および時間によって著しく変動することが明らかになった。 

2008年度には、具体的な大気汚染防止のためにこの測定器を活用するために必要不可欠な、デ−タベ−スを得ることを目的する。

研究計画は、実験室的研究(A)と現場の調査研究(B)に分けられる。

簡易クロマト型分析器の分離度の限界ではやむを得ず、1つのピークの位置に多くの物質種類が対応するので、定性分析が著しく不明確なものになっている。実験研究Aでは、それぞれのプラスチックごみ処理で発生する揮発性有機化合物群を調べ、クロマトグラフ・ピークのスペクトルとして記録する。この記録されたスペクトルは、実際の複雑な大気汚染を解釈するのに役立つ基礎データとなりうる。

最近、プラスチック廃棄物処理方法が転換する機運でもあるので、現場調査研究Bにおいて、プラスチックの種々な処理施設の環境で、汚染物質群のクロマトグラフ・スペクトルとその変化を継続的に観察して、比較検討する。


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 途中経過:2008年9月の中間報告から


(A)プラスチックを各種の方法で処理したときに発生する物質の測定実験

プラスチック材料というものは、構成する単分子の種類が同じでも用途に合わせた作り方によって成分や構造が違うものなので、実際に身の周りに流通している実物を試料として、発生するVOCガスを調べはじめた。

まず静置したままで、いろいろなプラスチックの袋や家具を測ったが、物によって発生濃度はとても違った。パソコンなど電気製品でも、通電して使用すると時間が経過するにつれてVOCガスはずいぶん出てくることがわかった。

かき回したり滑らせたりする道具を準備して、押付ける力や滑らせる速さ、運転時間などを変えて、発生するVOCガスも変るかどうか試してみた。今回は、果物を包んでいる柔らかい発泡スチレン、段ボール箱の詰め物にしている軽くてやや脆い発泡プラスチックブロックと、輸送ダンボールの中でパソコンを押さえていたゴムのように弾力があり割れ難くやや重い発泡プラスチックを試験片として、回転する鋼またはアルミナセラミックスの円筒面をはさみつけて滑らせ、運転中の試験片の周りをマイラーバッグ(分析用のVOCを出さない袋)で包んで、袋の中に深く携帯型VOCモニターの空気採取管の先端を差し入れて発生VOCを分析しました。空気採取時間は、濃度が高い汚染空気には1分間(100cm3)、大気のように汚染濃度が低いものでは10分間(1000cm3)が適当なのですが、今回は10分間にしました。すべり運動をつづける時間はまた別に、摩擦試験機のほうで設定できます。 今回は、5000回転で停止するようにしてみたり、空気採取と同じ10分間動き続けるようにしてみたり、試してみています。 押付力は今のところ1kgの一定にして、円筒の回転速度を、毎分100回から1000回まで変えています。1000回転でちょうど杉並中継所の運転と同じになりますが、速度や見掛けの押付力を同じにしても、実際の接触条件が同じではありませんから、幅広く運転条件を変えていろいろな場合の現象を調べないと本当のことは推定できません。

実際に運転してみると、身近にあるありあわせ材料を試験片にして具合よく運転するのはかなり難しくて、まだテスト実験しているだけです。 しかしそれでも、プラスチック材料や、同じ材料でもすべり速度や試験片の押付け方が変ると、発生量や発生VOC種類が変るのは確かです。

分析機器が記録したクロマトのピーク位置からVOCの種類を推定したくて、軽油などを標準物質としてクロマトを描かせて、その判読方法の指導を受けているところです。


(B)各地での大気測定実験

所沢や多摩、練馬、寄居、神河町、美浦村など各地でもVOC連続分析をしたいのですが、1台の測定器では間に合わないので、TVOC(全体のVOC濃度)だけを安価なモニターで測らないかと思ってカタログを調べたり、実際に使ってみたりしましたが、しはんのTVOC計は発生源規制に対応する高濃度用に作られていて、残念ながら大気の分析には向かないことがわかりました。

今使っているクロマト型VOCモニターも、まだ十分には使い方を検討していないので、一定場所での落ち着いた実験で基礎を習得することが必要なので、他地区の方には少し我慢していただいて当会事務所で定点観測を続けました。 すると、2年前に比べて驚いたほどの大気の高濃度汚染が日常的になってきていることに気付いたのです。

高濃度が現れるのは、夜間と昼の2タイプあります。 クロマトが示す汚染物質種類は、夜間の高濃度時間帯と昼間の高濃度時間帯とで違うのです。 つまり夜の汚染源と、昼の汚染源が違うと言うことです。 空気汚染を何でも大陸のせいにして、日本での問題には目をつぶる傾向がありますが、実際に測定して見ると、地域的汚染でなくては説明できないことが多いのです。 自分の手で調べて、自分の周りで整えなくてはならない色々なことに気がつきました。

まだまだ検討しなければならないことが山積みですが、調べるたびに、驚くことの連続です。 皆さんもご一緒に研究してみませんか。

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