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松野 亮子 さん | ||
60万円 |
2004年12月の助成申込書から
【経過】
上記テーマで、英国に留学し博士課程での研究を行っている。
昨年に続いて高木基金の助成を受けた。
2004年度は、PhD取得の前提となるUpgrading Seminarをクリアした。
【成果】
博士論文の執筆を進めている。
また、英国政府や欧州委員会の化学物質担当者等との接触や、関連のワークショップへの参加等を通じて知見を深め、人脈の開拓に努めている。
【今後の展望】
博士号取得に向けて、今後一年で論文を仕上げ、来年中に口答試問を終えることを目標にしている。
博士号取得後、具体的にどうするかはまだ未定であるが、現行の環境汚染物質の法規制の弱点を検証し、よりよい法規制について提言を行うだけの実力を身につけ、実際に法制度改正に関わる活動を行いたい。
内分泌撹乱物質の問題は、今後、さらに重要性を増すと思われる。
将来的には、POPs条約よりも拘束力のある国際条約を作り上げていく必要があると考えている。
実際にそのような動きがあればそのプロセスにかかわり、効果的な法律が成立するよう力を尽くしたい。
そのためにも市民科学の立場に立って研究を進めている科学者とネットワークを広げ、科学の世界で明らかになりつつある事象を法律に反映できるように、また、それを実現できるだけの実力と人脈を作るのを目標にしている。
【 この助成先は、2004年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2004年度の助成事例 】
中間報告から
従来の毒性メカニズムによるものでなく、ホルモンの機能を乱すことによって生体に多大な影響を与える可能性を指摘されている化学物質が、内分泌撹乱物質である。この問題が表面化したときには生殖機能に対する影響、たとえば、精子の減少などが大きくクローズアップして取り上げられたが、内分泌撹乱物質の問題はそれにとどまらず、免疫系、神経系の発育などに大きく影響を及ぼす可能性がある。これらの物質は、ごく微量で内分泌撹乱作用を持ち、胎児や子供は大人に比べ、特にそれらの化学物質の影響を受けやすいと考えられている。従来は化学物質の規制にあたり、動物実験で無影響濃度、最低影響濃度を求め、それを基準に規制値を算出していたが、内分泌撹乱物質は従来の毒性学では問題にならなかったほど微量の化学物質が、生命を脅かしうることを示した。よって、従来の方法では内分泌撹乱物質の危険性からヒトや野生生物を守ることができない可能性がある。
この春は内分泌撹乱物質の規制に関連する国際条約として、1992年締結のOSPAR条約および2001年に締結された難分解性有機物質を規制するストックホルム条約(POPs条約)に焦点を当てて、研究を行った。OSPAR条約とは北大西洋北東部を囲む国々が参加している条約で、この条約の枠組みの中で、1998年に有害物質に関する戦略(Strategy on Hazardous Substances)が取られることになった。この戦略は内分泌撹乱物質を規制することを明言しているが、実際には内分泌撹乱作用のメカニズムにはまだ不明な点が多いことから、具体的な規制手段が取られている段階には達していない。この戦略を本当の意味で実施するにはどこまで予防原則を取り入れられるかが問われることになるであろう。POPs条約に関しては、現在、規制対象となっている化学物質が12種類のみで、さらにそれらの化学物質に対しても用途を限定して使用が認められているものがほとんどである。この条約が発効してから(2004年5月)からまだ日が浅く、あまり多くが書かれていないということもあり、私の理解がまだ十分ではない。現在は、内分泌撹乱物質をなぜ規制する必要があるか、という、最初の問題提起の部分を書いているが、この分野で行われてきた科学的なリサーチの量は膨大であり、取捨選択に頭を悩ませている。ただ、法規制に関してかかれたものは皆無に等しく、私の研究の重要性を再確認している今日この頃である。