2006年 1月 6日

高木基金委託研究

核燃料サイクル国際評価パネルの経過と今後の取り組みについて

高木基金代表理事 飯田哲也

高木基金では、昨年より、委託研究という初めての試みとして「核燃料サイクル国際評価パネル」(ICRC、座長 吉岡斉 九州大学大学院教授)を行ってきました。国内外の再処理・核燃料サイクルに批判的な学者・研究者で構成されるICRCは、昨年9月の福島県主催の公開シンポジウムや原子力長計策定会議での公表などを通じて、原子力政策大綱(2005年10月14日閣議決定)の核燃料サイクル政策の本質的な問題点を明らかにしており、「公共政策への第三者批判」という市民科学の重大な役割を果たしていると自負しています。これに対して、政府や事業者からは何の正当な反論はなく、反論の姿勢すらなく、説明責任が致命的に欠けています。

この委託研究には、ICRCの他に、再処理に対する現実的な代替案の提案(マイケル・シュナイダー前理事がリーダー)と、これらの政治的な働きかけ(飯田哲也代表理事がリーダー)があります。そのため、今現在、プルサーマル事前了解の先頭に立つ佐賀県および、六カ所再処理工場のアクティブ試験を目前に控える青森県に対して、「公共政策への第三者批判」をもとに、ICRC国内委員の有志による具体的な政策提言を行うこととしました。

佐賀県に対しては、昨年12月17日に高木基金主催の報告会を唐津市で行った上で、12月21日に古川康知事宛(および同日付で寺田司玄海町長と坂井俊之唐津市長)に政策提言を提出しました。青森県知事に対しては、本年2月に働きかける予定です。

言うまでもなく、核燃料サイクルは、原子力政策の中でも、今日、もっとも重要な政策判断です。それは、核不拡散というエネルギー政策とは異なる国際政治的に機微な要素を含むことに加えて、国際的に見渡しても高速炉の実用化の見通しがもはやなくなった今日、日本の原子力政策やエネルギー政策に、合理性や規範性をわずかなりとも取り戻すことができるかどうかの試金石なのです。

現代の戦艦大和たる六カ所再処理工場を「出航」させる愚を犯してはならないのです。

(2006年 1月6日)



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