2006年 4月 1日

六ヶ所再処理工場アクティブ試験実施についてのコメント

核燃料サイクル国際評価パネル(ICRC)
 座長:吉岡 斉

昨日、2006年3月31日午後、日本原燃は青森県六ヶ所村にある使用済核燃料再処理工場でアクティブ試験を開始した。

実際に使用済み核燃料を使用するアクティブ試験の実施により、核拡散の誘因やテロ・犯罪の標的となることが懸念されるプルトニウムの大量抽出が始まった。また施設は高度に汚染されたため、解体に要するコストは汚染前の中止と比べ1兆円以上も跳ね上がり、莫大な量の解体廃棄物が発生することが避けられなくなった。さらに環境中への多量の放射能放出も始められた。

そうした多大な損失と危険を国民や国際社会に背負わせるアクティブ試験を開始した日本原燃、及び同社を支配する電力業界、さらには再処理事業の推進を国是とし事業を強力にサポートしてきた日本政府の姿勢は、きわめて憂慮すべきものである。

そもそもアクティブ試験を今始めることには、何の利益もなく、多大の損失と危険のみがある。40トンを超えるプルトニウム在庫の消費のめどが立っていないのに、さらにプルトニウムを抽出する作業を開始するのはまったく道理に合わない。実質的に唯一のプルトニウム消費手段であるプルサーマルの実施は計画段階にとどまっている。

少なくとも在庫プルトニウムの消費が進み、プルトニウム不足によるエネルギー供給への悪影響が懸念される事態が生ずるまで、アクティブ試験を無期凍結することにより、損失や危険の発生を確定させず、その凍結期間を活用して事業や政策の見直しのための検討を行うことが、事業者や政府の取るべき合理的判断である。

にもかかわらず、それと正反対の行動、つまり一刻も早く損失と危険を確定させるという行動に出たことは、関係者の合理的判断能力の不足を窺わせるものである。したがってこの決定により将来、国民や国際社会に対して損失や危険がもたらされた場合、その責任の大部分は事業者が負うべきであり、また事業を強力にサポートしてきた政府も一定の責任を分有すべきである。

核燃料サイクル国際評価パネル(ICRC)は、核燃料サイクルバックエンドに関して、再処理方式を選択することに合理性がないことを指摘し、その立場にたって六ヶ所再処理工場の無期凍結と日本の再処理政策の抜本的な見直しを勧告してきた。アクティブ試験が開始された今からでも、再処理事業凍結と政策見直しを決断する上で、決して手遅れではない。方針転換の判断が早ければ早いほど、損失や危険は少なくて済むからである。

核燃料サイクル国際評価パネル(ICRC)は、事業者や政府が正気を取り戻し、賢明な決断をできるだけ早期に行うことを強く期待するものである。また国民や国際社会、とりわけ再処理実施にともなう損失や危険を直接被る利害関係者が、そうした方向へむけての世論を高めることを期待するものである。                           

以 上




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