高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007年度実施分)





グループ名:埼玉西部・土と水と空気を守る会
代表者氏名:前田 俊宣さん
研究テーマ:ゴミ山(産業廃棄物の不法投棄)土壌の鉛含有
濃度調査
 助成金額: 30万円
研究の概要:2006年12月の助成申込書から
 途中経過:2007年 9月の中間報告から
結果・成果:2008年 4月の完了報告から

<参考>
助成先のウェブサイト:http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/
その後の助成研究:2008年度実施分

研究の概要 : 2006年12月の助成申込書から

廃棄物の不適正処理の一つである不法投棄いわゆるゴミ山は、日本全国の農地や山林、住宅地に極めて多数存在しているが、私たちのこれまでの調査の結果、ゴミ山土壌からは50%の高率で鉛の汚染(土壌汚染対策法の含有濃度基準値150mg/kgを指標とする)が確認されている。

その潜在的な鉛の汚染源であるゴミ山を放置することで、周辺環境への鉛の拡散が始まる/始まっていると強く懸念され、農作物への鉛の蓄積量が増加したり、周辺住民の鉛暴露リスクが高まるおそれがあり、国民の健康への影響が懸念される。

汚染拡散の未然防止には撤去などの対策が必要であるが、まずはゴミ山土壌の調査が必須の前提となる。しかし国も地方自治体も全くこの問題性を認識しておらず、充分な調査もせず無策のまま放置されている事例が極めて多いため、市民によるこのような調査の結果をもって、早急な対策の重要性を提起する必要がある。      

ゴミ山が住環境の中に存在する鉛の汚染源であることを、より多い検体数(土壌、植物、水質の分析調査等)で確認し、全国に点在するゴミ山についても同様のおそれがあるとの警告を発したい。

鉛汚染は、言うなれば「地味で古臭い」汚染問題であり、近年の環境関連の学術研究には報告件数が少ない上、ゴミ山土壌の鉛に関する研究報告はほぼ皆無である。この研究調査により、一般市民、行政、廃棄物処理業者、廃棄物問題専門家のゴミ山の潜在的汚染源性に対する関心を促し、ゴミ山撤去や形成の未然防止対策への推進力となることを期待する。

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 途中経過:2007年9月の中間報告から

不法投棄であるゴミ山は、日本全国の農地や山林、住宅地に多数存在しています。ゴミ山周辺は農地や用水の直近、住宅地・学校周辺などであり、汚染の拡散により、農地の場合は作物への鉛の蓄積量が、また住環境としては汚染土壌の飛散や流出により、周辺住民(特に乳幼児は感受性が強いハイリスク・グループ)の鉛暴露量が高くなるおそれがあります。

このためゴミ山土壌の実態調査が必須ですが、国も地方自治体も全くこの問題性を認識しておらず、調査も行なっておらず、また行なう意向もないとしているため、至急、市民で調査を始め、結果を提示し、早急な対策の重要性を提起する必要があり、私たちの市民団体で独自調査を始めました。

2003年11月〜2007年3月、私たちが行なった第1次〜2次埼玉県内広域ゴミ山実態調査で、調査した26箇所(45検体)のゴミ山の約50%には、鉛汚染(土壌汚染対策法の対策基準を指標とする含有濃度150mg/kgを超える汚染)のあることが判明しました。今年度2007年4月から、高木基金等を得て行なっている第3次調査では、2007年8月までに、19箇所(29検体)の調査を行ない、すべての分析結果は出ていませんが、これまでのところ、ほぼ同様の傾向で鉛汚染があると見られます。また同じ1つのゴミ山でも汚染のある部分とない部分の存在することが確認されました。

なお、今年度後半は、未調査のゴミ山の土壌中鉛分析と並行して、調査済みのゴミ山で鉛汚染の強かった箇所について、6価クロム、カドミウム、水銀、砒素など他の有害金属についても、重要と考えられる項目から順に、分析に供する予定です。これにより、ゴミ山による重金属汚染の全般的な傾向を把握する予定です。



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結果・成果:2008年4月の完了報告から

当会は2005年から、埼玉県内のゴミ山(産業廃棄物の不法投棄)の土壌、および周辺の水質あるいは植物検体中の重金属類濃度(特に鉛含有濃度)を測定してきた。その一環として、2007年度高木基金の助成を受け今回の第3次調査を行なったところ、これまでの調査の傾向と同様に、土壌の鉛含有濃度について高率で鉛汚染(土壌汚染対策法の対策基準である150mg/kgを超える)が確認された。

今回の調査では総数39箇所のゴミ山における、土壌50検体、水質1検体、植物6検体(加えて対照土壌として1検体、対照植物検体として2検体)を採取し定量分析を行なった。鉛については、第2次調査までの50%に達する鉛汚染の検出確率は、第3次調査を加えると37%となったものの、依然として高い率でゴミ山土壌に鉛汚染のあることが確認された。(うち土壌9検体の鉛含有濃度と6検体についてのカドミウム、砒素、六価クロム分析費はサイサン基金充当)

またゴミ山周辺の雨水溜まりの水質を分析したところ、第1次〜第2次調査における傾向と同じく、汚染の強いゴミ山周辺では、環境基準(ただし参考値として。溶出基準0.01r/L)を超える濃度の汚染があることが確認され、ゴミ山からの汚染の拡散がさらに強く懸念された。

植物検体は植物の種類と部位による汚染物質の分布の相異を考え、地上部と地下部に分けて分析したが、今回の検体で汚染は確認されなかった。汚染の極めて高い土壌での植物は採取できず、比較的、低汚染の土壌に生息していた植物であったため、すべてNDとなったと考えられる。

また強い鉛汚染のあった土壌についてカドミウム、砒素、六価クロムの含有濃度を測定した結果、これらの項目については、現在のところ問題となる高濃度汚染は見られなかった(サイサン環境基金充当)。しかし、予算の範囲内で行なったため分析にかけた検体数が少なく、今後も調査が必要であると考えられる。

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