この報告書は、2004年11月に原子力委員会新計画策定会議が決定した「核燃料サイクル政策に関する中間取りまとめ」に対する、国際的かつ専門的な検証として、「核燃料サイクル国際評価パネル」(座長:吉岡 斉 九州大学大学院教授、事務局:環境エネルギー政策研究所)がまとめたものです。 報告書では、「国際評価パネル」の海外委員4名が「中間とりまとめ」に対するレビューを行い、これに国内委員による検討を加えました。(A4判、和文71頁+英文71頁) 研究の経緯と結論については、下記の吉岡座長のコメント(原子力委員会新計画策定会議(第32回)意見書からの抜粋)をご覧下さい。 この報告書が、広く一般の方にも活用され、国の核燃料再処理政策、特に六ヶ所再処理工場操業計画を見直す契機となることを期待しています。 |
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「国際評価パネル」吉岡座長のコメント
原子力委員会新計画策定会議(第32回)意見書(YLTP32)より抜粋
2005年9月16日
吉 岡 斉 1.核燃料サイクル政策国際評価パネル(ICRC)報告書について 1−1.今回、机上配付させて頂く「核燃料サイクル政策国際評価パネル(ICRC,International Critical Review Committee on the Long Term Nuclear Program)報告書」について簡単に説明する。 1−2.それは、新計画策定会議が第12回会議(2004年11月12日)において決定した「核燃料サイクル政策に関する中間取りまとめ」に対する、第三者的立場からのプロフェッショナル・レビューである。 第三者的プロフェッショナル・レビューは、国際的には、学術論文、設計図、公共政策などにおいて、日常的に行われるものであるが、原子力政策大綱(案)の全部又は一部に対しては、まったく行われていない。そうした欠落を埋めるため、高木仁三郎市民科学基金(高木基金)が、「核燃料サイクル政策国際評価パネル(ICRC)」の実施を、専門家グループに委託した。特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)が、その事務局をつとめることとなった。 こうしたレビュー作業は本来、原子力委員会が資金と情報を潤沢に提供して、立場の異なる複数の専門家グループに対して実施してもらうべきものだが、その見込みがないので高木基金が募金と自己資金(これも今までの募金と遺産)によって、実施したものである その場で日本側委員から基本的な評価の目的と視点が提示された。また評価の主たる対象となる「中間取りまとめ」の英訳(原子力資料情報室フィリップ・ワイト氏による労作付表を含む)が渡された。さらに海外側委員3名には、百聞は一見にしかずとの考えに立って、同日の第22回策定会議を傍聴して頂いた。(ただし筆者の随員枠は1名のみで他の2名は一般傍聴枠に回された)。 キックオフ・ミーティングを踏まえて4月より、海外側委員がそれぞれ「中間取りまとめ」に対する評価レビューを作成し、8月までにすべて揃った。この海外レビューに対して、日本側委員が構成や内容に注文をつけ、補筆してもらった。それと並行して6月より日本側委員が集まって「総説」作成作業を進めた。そして海外側委員の承認を得たうえで4本の海外レビューと一緒に束ねた。
「中間取りまとめ」は、従来の核燃料サイクルバックエンド政策が、選択肢の議論を一切排除してきたことを考えれば、再処理の凍結や直接処分の実施をも選択肢として考慮した点で、一歩前進であると評価できる。また経済性分析で、直接処分の方が再処理よりも大幅に経済的であることを認めた点も評価に値する。しかし、その他の判断においては、論理構造と個別項目評価の両面において重大な欠陥がある。したがってそれは、核燃料再処理に関する現行政策が、公共利益の観点から最善であることの論証に成功していない。 国際評価パネルの報告書は、そのことを立証するものである。 報告書においては全体として、日本側委員が感じたのと同様の問題点が、海外側委員によって指摘され、両者が基本的に同じ認識に立つことが確認された。とりわけ、「中間取りまとめ」が粗雑な評価とそれにもとづく決定であるという認識で、両者は一致した。 国際評価パネルの主たる目的は、「中間取りまとめ」の妥当性の検証であり、政策上の代案を出すことではない。それは国際評価パネルの姉妹組織であるBEARグループが、並行して取り組んでおり、国際評価パネルのメンバーの多くも、それに参画・協力している。 国際評価パネルの検討結果から導かれる結論は、原子力委員会は「原子力政策大綱(案)」の核燃料サイクルバックエンドに関する方針を再検討し、六ヶ所再処理工場の操業無期凍結を日本原燃に要請し、その間に適切な政策オプションが何であるかについて、正しい方法論にのっとった検討を進めるべきだ、というものである。 原子力委員会自身が、その再検討の作業を行う場合は、中立的な議長と事務局のもとで現行政策に対する賛否が全体として拮抗するようなバランスで委員を新たに選考し、審議することが必要である。 もし原子力委員会が、適切な政策決定の場を再設定できない場合、政府は原子力委員会以外の機関に、政策決定の場を新たに責任をもって設定し、あらためて審議させることが望ましい。そこでは原子力政策という狭い枠組みではなく、より広いエネルギー政策全体の枠組みに立って、核燃料サイクルバックエンドを含む原子力政策のあり方について審議が行われるべきである。 |
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