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人体へのマイクロ波照射と、そのもたらす影響に関する認識の変化に関する社会史的研究



グループ名 研修の概況[pdf352kb]
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代表者氏名 永瀬ライマー桂子 さん
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助成金額 50万円

研究の概要

2002年12月の助成申込書から
 近年、携帯電話が急速に普及しているが、それに利用されるマイクロ波の人体への有害性を指摘する疫学研究や実験は、メカニズムが完全に解明されていないという理由から考慮されていない。  現実に電磁波過敏症に苦しむ人々がいる以上、マイクロ波がもたらし得る悪影響から市民、特に子供を守ることが早急に必要である。  この研究では、マイクロ波が人体に及ぼす影響に関する認識の歴史的変化と同時に、未知の科学技術リスクへの対処法に関する思想の変化を分析する。  それらを通じて、歴史的認識を踏まえた新たな予防思想を提案するとともに、市民に対しても、科学技術の進歩に従って、安全性に対する概念は必ずしも進歩するわけではないこと、そして許容基準値は業界の意向を強く反映するものであり、市民の健康を十分に守れない場合があることを明示する。

中間報告

中間報告から
 近年携帯電話が急速に普及しているが、それに利用されるマイクロ波の人体への影響に関して、研究者の意見は一致していません。現行の許容基準値は明確な科学的証拠にのみに基づくもので、マイクロ波の有害性を指摘する疫学研究や実験は、メカニズムが完全に解明されていないという理由から考慮されていません。一方現実には、マイクロ波を含めた電磁波の影響で頭痛、同期、めまい、不眠症など体調不良を訴える電磁波過敏症に苦しむ人々は増加する傾向あります。この現実に対処するため、マイクロ波の人体への影響に関する研究者の見解の一致を待たずに予防的措置を実施し、マイクロ波がもたらし得る悪影響から市民、特に子供を守ることが即急に必要です。  本研究は、マイクロ波が人体に及ぼす影響に関する認識の歴史的変化を分析し、未知のリスクを含む新科学技術と現代社会の関わり方を明らかにした上で、具体的な予防的措置の提案を目指します。社会的・歴史的側面に注目するのは、例え専門家であっても、科学技術の全てを知り、リスクを絶対的に断定することは不可能であるからです。予防的措置は、科学的証拠のみでなく科学技術と社会の関係をも考慮した、実現可能なものでなければなりません。  同テーマの博士論文執筆に向けて、2000年から歴史的側面に関する研究を続けてきました。今後は現行の問題に取り組んで行きます。本研究を通じて提案される予防的措置が、未知のリスクから市民を守ることのできる社会システムの構築に寄与することを切望します。

結果・成果

完了報告から
 2003年7月に第二子を出産したため、助成期間を半年延長させていただきました。現在(2004年5月)までの約半年間の成果と、助成終了までに到達したいことをまとめます。  科学技術に対する過去の過ちや思慮不足から得た知恵を、今日の問題に反映させようというのが本研究の特徴です。歴史を十分に踏まえるため、引き続き歴史的史料の収集・分析を行いました。これまでの研究経過からは、新しいマイクロ波応用技術が登場するたびに人々はマイクロ波が人体に与える影響を心配しますが、それは一時的なもので、それぞれはつながっていないように見えました。高木基金からの助成を得て、インタビューや歴史史料収集を通じてさらに研究を進めることができた結果、人体へのマイクロ波照射の問題は20世紀前半から今日まで連続性を持つことが認識できました。  歴史研究の成果については、6月にアーヘン工科大学の技術史コロキウムで発表・討論をし、さらに考察を重ねていきたいです。  歴史研究と並行して、携帯電話や中継基地局をめぐる今日の論争についても調査を進めました。この論争に関しては、電磁界への規制を強化しようと考える人々と、その現行の規制で健康は十分に守られると考える人々、両者の意見を聞き、両者の論点を整理し、問題解決の糸口をつかもうと試みました。実際に日本とドイツの両国で、電磁波問題にとりくむNPOの人々や、防護値設定に関わっている学者、携帯電話業界のエンジニアらから、話を聞くことができました。また東京工業大学で開かれた技術者倫理研究会でも、異なる立場にある聴衆の反応を耳にすることができました。  この論争に関しては引き続き、電磁波過敏症の人々や、携帯電話製造業者、NTTドコモやvodafoneなどの携帯電話回線プロバイダに対して、取材を進めていくつもりです。  以上の歴史研究と現在の問題の調査から新たな予防思想を提案するのが、本研究の最終目標です。電磁波問題は、現在の科学的研究結果からは一義的に「健康に対する悪影響なし」とも「悪影響あり」とも断定できない、いわばグレーゾーンにあります。しかし、電磁波が人体に及ぼす影響を一義的に断定できる科学的研究結果が出るまで、安全性問題への対応を繰り延べすることはできません。そこで現時点では、科学からさらに視野を広げて問題解決に望むことが効果的です。  予防思想として提唱されているものの一つに「予防原則」があります。近年この予防原則の定義、長所、導入する際の難点などを巡って、活発な議論がなされています。この議論をさらに発展させ、電磁波問題の現状に見合う、社会的に受容可能な規制政策の提案を目指しています。経済産業省の技術政策に関する会議を見学する機会を得たことは、将来の政策提案を目指す上で勉強になりました。

その他/備考

対外的な発表実績
2003年4月 『環境ホルモン』Vol.3(特集:予防原則)誌上で、論文「電磁界基準値の設定をめぐる科学・思想・政治」を発表 2003年11月 ドイツの電磁波問題を扱う『Elektrosmog Report』誌上に、「Erhöhtes Risiko für Kinderleukämie in japanischer Studie」を掲載 2003年12月 技術者倫理研究会(於:東京工業大学)で「電磁波は危険か??技術者と電磁波論争」のテーマで発表 2004年1月 「『電磁波は危険か??技術者と電磁波論争』技術者倫理研究会で永瀬ライマー桂子さん(ベルリン工科大学)が上記テーマで発表」が電磁波研会報No.26に掲載される (以降予定) 2004年6月 アーヘン工科大学技術史科コロキウムで「日本のマイクロ波研究」を発表予定 今後の展望  本研究が終了した後は、対象を電磁波利用一般に広げ、現実可能な規制政策の提案と、政策論争への持続的な貢献を行いたい。  2005年内に博士論文の執筆を終え、ドイツで出版したい。その後、博士論文をコンパクトにまとめたものを和文でも発表したい。

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