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自然エネルギープロジェクトにおける市民参加とそれがもたらす地域発展の可能性についての先進事例研究



グループ名 完了報告[pdf327kb]
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代表者氏名 笹川 桃代 さん
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助成金額 50万円

研究の概要

2002年12月の助成申込書から
 地域発展とエネルギー環境問題解決の手段として、ますます自然エネルギーの普及と、それを受け入れる社会体制を構築する必要性が増してきている。  自然エネルギーを普及させ、それが市民・地域のエンパワーメントにつながるためにはどのようなプロジェクトの設計と、それを支える社会的システムの構築が必要なのか。  この問いを明らかにし、民主的なエネルギー政策の策定実施や、市民による自然エネルギー普及が立ち遅れている日本での実践的方策を導き出すために、世界的に注目を集めているデンマークのサムソ島におけるプロジェクトを先進事例として調査研究することを研修の目的とする。  (デンマークでは、70年代の反原発運動を経て、80年代には地域における市民の風車所有が広がったという経緯がある)

中間報告

中間報告から
 自然エネルギーの普及に成功してきたデンマークには、同エネルギーによって100%の供給を目指す島レベルでのプロジェクト(自然エネルギー100%アイランドプロジェクト)があります。世界的に著名な同プロジェクトを実施している2つの島―Samsoe島とAeroe島―において、地域レベルの自然エネルギープロジェクトが、単にエネルギー供給という物理的な意味においてだけでなく、住民参加を伴った民主的なプロセスのもとに進められ、地域社会へ何らかの意義のあるものになりえているのかという点について先進事例研究を実施することがこの研修の目的です。この研究を通じて、自然エネルギーの普及推進が国家政策レベルで滞っている日本への実践的な示唆を得たいと考えています。 【進歩状況と今後の課題】  日本での予備研究を経て、2003年7月から2ヶ月間のデンマークにおけるフィールドワーク調査を実施し、同国内の自然エネルギー政策及び地域のプロジェクト関係者に対するインタビュー、および資料の収集を行いました。今後、日本国内の状況も参照しながら、調査のフォローアップととりまとめを行います。この研究成果が、自然エネルギーをよりよく、より多く普及させるためにはどうしたらいいのかという実践的レベルにおける課題に対しても、学術的レベルにおいても重要性を持つように研究成果をとりまとめていくことが今後の課題です。 下記の2点について、当初予定の変更がありました。 ○調査地について:当初、受け入れ機関をサムソ島環境エネルギー事務所として同島における研究を予定していましたが、サムソ島と同様の目標を掲げるデンマークFyn島の南西に位置するAeroe島においても同様の実績(自然エネルギー100%を目指すプロジェクト)があり、現地事務所の受け入れが可能との回答を得たため、Samso島とAeroe島の2つの島をメインにデンマークにおけるフィールドワークを実施しました。 ○研修の方法について:申請書においては、研修先における日常業務の補助作業等を行うことも予定されていましたが、研修先を足場に自分でフィールドワーク調査を行うという調査研究中心のものとなりました。

結果・成果

完了報告から
●調査の背景:  自然エネルギーの普及は持続可能な社会を実現する上で不可欠です。こうした目的のために、自然エネルギーが単に量的に拡大するだけでなく、導入される地域社会や住民と調和の取れた適切な形で普及する必要があります。  その中で風力発電は、1990年代にかけてもっとも普及拡大が進んだ自然エネルギーです。事業として離陸し、導入地域外からの資本による大規模開発が主流化しつつある中、特筆すべきは世界第4位の導入量を誇るデンマークにおける風力発電の普及拡大です。デンマークでは、1970年代の反原発運動を経て、1980年代以降主に地域住民によって風力発電の導入が担われてきており、量的拡大と住民参加を同時に達成した国と位置づけられます。  こうしたデンマークにおける風力発電の住民所有がいかにして実現され、そのような住民所有型の風力発電事業が地域社会にどのような影響をもたらしてきたのかを調査し、民主的な自然エネルギーの普及がたち遅れている日本に対する示唆を得ることが本調査の目的です。 ●調査方法:  上記の調査課題を明らかにするために、2003年7月から9月までの2ヶ月間、デンマークにおいてフィールドワーク調査を実施しました。主に、住民参加型風力発電プロジェクトにかかわっている当事者に対してインタビューを実施すると同時に、風力発電推進政策にかかわっている政府関係者・NGOなどにもインタビュー調査を実施しました(合計34名)。  具体的には、デンマークにおいて風力発電の普及が離陸する前の1980年代と、離陸後の2002年のそれぞれにおける住民参加型の風車導入プロジェクトについての事例調査実施し、風車の住民所有が促進されたメカニズム(要因)とその社会的影響を導き出しました。 ●調査結果:  デンマークにおける風力発電事業は、住民所有を促す政府の優遇策だけでなく、プロジェクトを実施する地域に根ざした各種の制度によって実現可能となっていることがわかりました。技術進歩による風車の巨大化によって、導入地域に対する景観への影響も同時に大きくなり、景観破壊をめぐって、風力発電推進派と反対派の対立が大きくなっていましたが、住民所有による風力発電事業は、広範な住民・地域に直接的な利益をもたらすことによって、強力な事業賛成派層を形成し、風力発電事業の成功を導いてきたと考えられます。 ●考察と含意:  今回の調査研究を通じて明らかになったことは、2点です。第一に、住民による風力発電事業の実施と所有が可能になったメカニズムを現地当事者のインタビュー調査を通じて明らかにできた点です。また、第二に住民所有型の風力発電事業が地域社会に与える影響を明らかにした点です。  主に第2点目から導き出される含意は、自然エネルギー(本調査における風力発電)事業が地域社会に与える影響は、それが導入されるプロセスや導入形態によって異なっているという点です。つまり、住民参加の促進や地域発展への貢献、合意形成の促進などは、風力発電の導入が誰によってどのように行われたのかによるということです。デンマークでとられていた住民参加という事業形態もそれを規定する一つの要素でした。住民所有による風力発電事業は、地域社会に騒音や景観破壊などの不利益だけでなく、経済的利益をもたらし、結果として風力発電を受け入れる社会的素地を作り出したのです。  こうしたことからも、自然エネルギー導入政策において、地域社会への影響等の社会的側面を政策採用の評価軸として採用することが望ましい自然エネルギー普及政策を考えるにあたっての重要な視点であると考えます。以上の結論は暫定的なものであり、今後さらなる調査が必要となるが、自然エネルギーが単にエネルギー供給の手段としてだけでなく、地域の問題解決の手段として効果的に利用できるような利用方法を模索していくことを今後の課題としたい。

その他/備考

対外的な発表実績
○寄稿、論文等 ・【2003年9月】「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク ニュースレター『Green Energy News 20号』、4頁。 ―「自然エネルギー100%を目指すAeroe島での調査を通じて感じたこと?自然エネルギーvs 省エネルギー?」 ・【2004年1月】東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻国際環境協力コースへ修士論文の提出。 ―「自然エネルギー普及のプロセスとその社会的影響―デンマークにおける住民参加型風力発電事業の事例研究―」 ・【2004年2月】NPO法人北海道グリーンファンド『風車のはなし』、18?19頁。 ―「風車王国デンマーク」 ○発表等 ・【2003年6月】東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻国際環境協力コースにおける修士論文プロポーザル ・【2003年9月】東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻国際環境協力コースにおける修士論文中間発表 ・【2004年2月】東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻国際環境協力コースにおける修士論文最終発表会 ―「自然エネルギー普及のプロセスとその社会的影響―デンマークにおける住民参加型風力発電事業の事例研究―」 ・【2004年6月】(予定)足利工業大学における『第4回風力エネルギー利用総合セミナー』 ―「デンマークの風車導入を促進したコーポラティブ方式」

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