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市民の食生活から市場主義型「有機農業」を再考する:インド・ヨーロッパ・日本における「食の安全性」 【研修先:インド】



グループ名 2007年度完了報告[pdf23kb]
代表者氏名 秋山 晶子 さん
URL
助成金額 50万円

compost class

ICS

italy meeting

pepper harvesting

研究の概要

2006年12月の助成申込書から
 今日、有機食品(オーガニックフード)が「食の安全性」という価値を付随させた商品となり、国際農産物市場に出回っている。  しかし、そもそも有機農業は、1960から1970年代、日本および欧米諸国において土壌劣化や農薬、食品添加物の健康への深刻な被害に怒りを覚えた市民が立ち上がり、化学投入物に依存した近代農業に対する反対運動として展開していた。  しかしそれから40年が過ぎ、有機農産物は当初の問題意識から離れ、差別化商品として世界的規格化が進むとともに、アグリビジネス企業、有機農業資格認定専門家といった多様な利害関係者の参入をみるようになった。  そのように商品化した有機農業および有機農産物は、国境を越えた「緑の革命」後のインドにとって、数ある農業政策の選択肢のなかで魅力のあるものとなる。  中でもそれが顕著にあらわれている南インドのケーララ州では州政府が2002年より有機農業推進政策を立ち上げ、その実行と急いでいる。  しかしそこで推進されているのは、主に欧米市場をターゲットとした有機商品の生産であり、農場において有機農産物を生産している貧農層には手の届かない高額商品の生産である。  そこで有機農業さらには、「食の安全性」を今一度市民の手に戻すために、市場主義化した「有機農業」の生産、流通、消費の実態を地理的領域を横断する、批判的な実証調査を行う必要性があると考える。その研究の一部として貴財団の助成金の助けを借りられるのならば、 .院璽薀藹において政府推奨の有機農業推進政策の実態調査、 ⊇政府の有機農業プログラムに反対し、独自の運動を展開している市民団体および農民団体における研修視察 を行い、そこで得られた情報、見地を検討し、有機農業を取り巻く世界的現状の「ずれ」を修正する一歩としたい。

中間報告


(下記の完了報告にまとめて記載されています)

結果・成果

2008年4月の完了報告から
 南インドのケーララ州の東北部、ワヤナッド県では、州政府や農民自助グループ、NGOなどが協力し、有機農業の普及に努めている。  その活動の中心的存在であるNGOのWayanad Social Service Society(WSSS)にて、研修に参加することとなった。農民との話し合いや農作業への参加を通して、熱帯湿潤地方特有の有機農業の技術とその普及の現状、さらには、食の安全性について理解を深めようというのが目的である。  標高700から800メートルという高地条件を生かし、ワヤナッド県では古くから胡椒を中心とするスパイス、コーヒーの産地である。2月は、その胡椒とコーヒーの収穫期にあたり、農家では収穫作業とあわせて、乾季の土壌管理に忙しい。  1990年代に農民により高揚した有機農業運動が、有機農業が当地に広がったそもそもの発端である。  当時、深刻化した農薬による健康被害、インド政府による農業助成の削減は、多くの農民を苦しめ、ワヤナッド県は、州内で最も多くの農民の自殺者を出した。  こういった状況を受けて、農民の自助努力と環境および食の安全性の回復を掲げて農民による有機農業運動が展開されたのである。  その後、2000年に入ると国際有機認証制度がインドに導入されると、運動は、有機認証を取得し国際有機市場へ進出する方向へと向かっていく。  徐々に運動色が薄れる一方で、プレミア価格を求めて有機農業に転換する農民が増加しはじめたのである。  これが大まかな背景だが、村人たちと交流を深める中で、徐々により複雑な状況が見えるようになってきた。  一例をあげると、ある農民が有機認証制度に参加を希望しても、経済的、そして農業生態的な制約から参加を断念せざるをえないことがある。  支援制度は利用可能だが、それでも1ヘクタールあたり数百ルピーの転換費用がかかってしまう。また、この地域では認証費用軽減のため、Internal Control Systemといわれるグループ認証制度を採用している。  これは、栽培品目、農地条件が類似している10人程度の農民のグループに認証を与えるというものである。  つまり、近隣の複数の農民が有機農業への転換に同意しないとグループを組むことはできない。  さらに、水利設備を共有している農民が一人でも化学投入物を使用している場合は、認証制度の基準を満たさない。  加えて、深刻な問題として、海外の取引先との契約が遅れており、一部の農民運動団体は胡椒のストックを抱え、農民への支払いも滞っている。  研修を通じて、54件の農家を訪問し、農民、運動家、政府関係者などと意見を交わすことができた。  有機農業運動の一時的な高揚が落ち着く中で、営農の安定と環境への配慮を同時に満たすために当該地の農業事情が揺れ動いていることを感じ、継続的な調査の必要性を感じる研修であった。

その他/備考


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