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上関原発予定地長島の自然環境と生態系調査



グループ名 長島の自然を守る会 2009年度完了報告[pdf45kb]
代表者氏名 高島 美登里 さん
URL
助成金額 70万円

長島・田ノ浦湾

カンムリウミスズメ(写真撮影:飯田知彦)

田ノ浦のスギモク

スギモクの調査

研究の概要

2008年12月の助成申込書から
 上関原発計画は中国電力が山口県に対し、2008年6月に公有水面埋立許可願書を提出し、2008年10月22日には知事が許可するという切迫した局面にある。長島の自然を守る会は、2008年5月初旬より国の天然記念物でIUCN指定絶滅危惧種であるカンムリウミスズメの生息を確認し、6月25日には緊急記者発表をして、専門家の意見も踏まえ、埋立改変区域内で繁殖の可能性もあると警告を発した。さらに研究者グループにも働きかけ、7月1日に日本生態学会上関アフターケア委員会、9月14日に日本鳥学会がそれぞれ、十分な調査・評価を行うまでは埋立許可をしないよう求める趣旨の要望書や大会決議を山口県知事をはじめとする関係行政機関に提出した。また、埋立許可を出さないよう求める知事宛の大衆署名運動を地元祝島や原水禁などと連携して長島の自然を守る会の署名集約60,000筆、他団体のものとあわせ80.000筆を提出した。しかし、県の「埋立ありき」の中国電力寄りの一方的な決定に押し切られた。  長島の自然を守る会として、2008年12月2日に「上関自然の権利訴訟」の提訴に踏み切った。今回の提訴を通じてこの間の成果で明らかになったことが3点ある。まず1点は原告に祝島島民の会と10人の島民が加わって貰え、強力な布陣に出来たこと。2点は1ヶ月間という短い期間であったが、県内外から原告費用2万円というハードルがある中、101名(祝島島民以外)という原告団を結成できたこと。3点目は「上関原発自然の権利訴訟を応援する研究者グループ」が結成されたこと。裁判闘争はまさに地元住民と市民および科学者が一体となった闘いである。  今後の活動計画として、次の3つを重点にしていく。

…敢左Φ羈萋阿龍化と範囲の拡大がある。特に2008年度の助成で調査研究をしている国の天然記念物でIUCN指定絶滅危惧種であるカンムリウミスズメ調査の結果が埋め立て阻止の実効力となるかどうかの鍵を握っているので、今後も重点的な継続調査が欠かせない。また、法廷の場でより詳細な長島の生態系の論証が必要になる。さらに祝島を調査区域に加え、環境アセスメントの不備を追及する戦力に役立てねばならない。

∈枷銃争と表裏一体のものとして、長島の自然環境や生態系の普及活動がある。長島ガイドブックや時宜に応じた報告集、DVD増補版作成などを検討中である。

7案である自然と共生できる町作りへの具体的提案である。当面は祝島をモデルに未利用海藻や魚類の商品開発などの提言を研究者と共に行って行きたい。また、公有水面埋め立て許可が出されたことで、祝島漁協を除く7漁協に漁業補償金の残り半額が支払われる。これまで漁業補償金を得ることでまとまっていた推進派の中にも不協和音が生じる可能性が大であり、祝島以外の地域での町おこし提案にかかわって行き、町民の意思を変える一助としたい。

中間報告

2009年10月の中間報告から
 上関原発計画に対しては、中国電力の埋め立て工事をめぐり、2009年9月10日より、連日24時間体制で緊迫した攻防戦を行っている。中国電力が平生町田名埠頭に仮置きしている工事区域境界線を示す灯浮標(ブイ)の搬出阻止行動である。昨年、山口県知事が出した公有水面埋め立て許可が失効する10月21日を目前に、あせった中国電力は島根原発で使用した中古のブイ3基を台風の荒天のさなかに別の港から搬出するという姑息な手段で現地に設置し、山口県は着工とみなすと公表した。しかし、残る6基はまだ搬出を阻止しており、実質工事には取り掛かれていない。この間、長島の自然を守る会も実力阻止行動の一翼を担いながら、一方で調査研究活動の成果を背景に埋め立て中止の申入れや世論喚起に努めてきた。2009年6月に予定地から2.5kmに位置する天田島でオオミズナギドリの巣穴を確認し、さらに9月7日には鳥学会の研究者と予定地から5kmにある宇和島でオオミズナギドリのヒナを確認した。内海における繁殖確認は世界初という貴重な知見である。また、昨年、長島の自然を守る会が初確認し、中国電力も追加調査を余儀なくされたカンムリウミスズメについては、他の研究者の調査でも、繁殖期・換羽期などほぼ通年生息することが確認されている。2009年9月8日の中国電力への申入れで、中国電力側は「カンムリウミスズメについて予定地内で繁殖の可能性はほぼないとみなされるので、埋め立て工事は進めつつ、定期調査も行う。」「オオミズナギドリについて調査をする予定はない。」旨の回答をした。  10月12日〜13日に現地視察をした近藤正道参議院議員は、28年間阻止行動を続けてきた祝島の闘いに敬服すると同時に、現地の生物多様性の豊かさに感動し、10月28日に田島環境副大臣と日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会や長島の自然を守る会の面談が設定されることになった。埋め立ては長島の奇跡的とも言える豊かな生態系の息の根をとめることであり、何としてでも阻止せねばならない。希少な海鳥の保護等について中国電力はいくら詭弁を弄しても逃げ切れない新たな科学的知見がどんどん公表されており、来年の生物多様性条約COP10名古屋開催という追い風を背景に、まずは環境問題から風穴を開けて公有水面埋め立てを中止させ、さらに国のエネルギー政策の転換を迫って上関原発計画を白紙撤回させることが当面の課題である。また、自然と共生する町つくりのため、未利用海藻の活用方法など研究者と連携しながら普及させ、町内世論の転換の一助としたい。

結果・成果

2010年6月の完了報告から
 長島の自然を守る会は2009年度(2009.4.1〜2009.3.31.)に計40回、延べ約170名の参加で調査を行った。またスナメリウォッチングツアーやスギモク観察会など自然に親しむイベントを開催して延べ45名の参加者があった。調査活動においてカンムリウミスズメを周年確認できたことにより、繁殖の可能性も含め、上関周辺海域がカンムリウミスズメの生息にとって重要であることが立証できた。また、宇和島において世界で初めてオオミズナギドリの繁殖確認をすることができた。これらの実績をもとに中国電力には埋め立て工事を中断するよう、環境省・経済産業省には電力会社への指導を申し入れた。結果として、埋立工事の中断にはいたらなったが、2009年10月の近藤正道参議院議員、11月の田島一成環境副大臣面談、2010年1月の川田龍平・平山誠参議院議員の現地視察など国政レベルで上関の生物多様性の貴重さに注目が集まった。  2010年1月(広島)、3月(東京)と日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会合同のシンポジウムが開催され、2010年2月15日には合同の要望書が国・県・中国電力・上関町あてに提出された。3学会が横断した取り組みは日本でも初めてのことである。このような動きの結果、環境アセスメントの問題点が参議院環境委員会・衆議院本会議などで取り上げられようになった。  また、10年間の調査の集大成として日本自然保護協会の助成を受けて、ガイドブック“危機に瀕する長島の自然”を発刊した。  2010年度は国の天然記念物でIUCN指定絶滅危惧種であるカンムリウミスズメやオオミズナギドリなど海鳥の調査結果が埋め立て阻止の実効力となるかどうかの鍵を握っているので、重点的な調査を行う。また、法廷の場でより詳細な長島の生態系の論証が必要になる。さらに祝島を調査区域に加え、環境アセスメントの不備を追及する戦力に役立てねばならない。  さらに、日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会の3学会合同による国政への働きかけやシンポジウム開催など研究者集団の社会的なアピールがより広汎に行われるという新たな動きが出ている。長島の自然を守る会も生物多様性COP10に向けて、調査受け入れやシンポジウム開催など従来にも増して世界的に発信していく。  懸案は、自然と共生できる町作りへの具体的提案である。長島の自然を守る会も上関町に拠点を移したので、未利用海藻や魚類の商品開発などの提言を研究者と共に行って行きたい。また、公有水面埋め立て許可が出されたことで、祝島漁協を除く7漁協に漁業補償金の残り半額が支払われた。これまで漁業補償金を得ることでまとまっていた推進派の中にも不協和音が生じる可能性が大であり、祝島以外の地域での町おこし提案にかかわって行き、町民の意思を変える一助としたい。

その他/備考


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