高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


インドネシアへの原発輸出がもたらしうる影響調査



グループ名 インドネシア民主化支援ネットワーク 2009年度完了報告[pdf24kb]
2009年度完了報告[pdf24kb]
代表者氏名 野川 未央 さん
URL
助成金額 40万円

マドゥラ島の原発建設予定地のひとつ、サンパン県クタパン郡。島の北海岸は、荒涼とした印象だが、目で見える範囲に民家が存在している。

AM2PN(マドゥラ島の反原発団体)の活動家と一緒に地元漁師への聞き取り。サンパン県スコバナ郡にて。

ムリア半島で原発建設の第一候補とされているバロン村のウジュン・ルマ・アバン地区。海岸から村の居住地までの間は、ほぼすべて国営農園会社の所有地だという。

地元の反原発グループメンバーと一緒に、農作業から戻る途中の農民に聞き取り。バロン村にて。

研究の概要

2008年12月の助成申込書から
 日本にとって重要なエネルギー供給国であるインドネシアは、日本の最大援助・投資相手国である。そのいっぽうで、インドネシア国内における「エネルギー危機」が大きな問題となっているのも事実だ。その打開策のひとつとして、2025年までに4つの原子力発電所の建設を予定していることが、インドネシア政府による長期開発計画のなかで明らかになっており、日本政府はここでも投資に積極的な姿勢を見せている。  しかし、地震多発地帯に位置するインドネシアでの安全性に大きな問題があること、すでに巨額の債務を抱えているインドネシアにとってさらなる負担を強いること、など様々な疑問があがっている。実際に、第一の建設候補地であった中ジャワのムリア半島では、市民による反対運動が大きな盛り上がりを見せた。そのため、当初建設開始予定とされていた2008年が終わろうとしている現在も、今後の計画は明らかになっていない。  本調査研究では、原子力発電所建設予定地の住民の声を集め、日本が同プロジェクトに投資した場合に、地元住民にどのような影響を与える可能性があるのか、を明らかにすることを目的としたものである。具体的には、建設候補地として名前のあがっているムリア半島(中ジャワ州)、マドゥラ島(東ジャワ州)、バンテン北海岸(バンテン州)での聞き取り調査をおこなう予定である。また、インドネシアの市民がなかなか手に入れることのできない投資に関する情報を日本で収集し、現地の人びとに少しでも貢献できることを願っている。 【 この助成先は、2008年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2008年度の助成事例 】

中間報告

2009年10月の中間報告から
 日本にとって重要なエネルギー供給国であるインドネシアだが、いっぽうで国内の「エネルギー危機」に直面している。その打開策の一つが、2025年までの原子力発電所建設であり、日本政府からは投資に積極的な姿勢も見え隠れしている。本調査研究では、原発建設候補地の住民の声を集め、日本が同プロジェクトに投資した場合に、地元住民にどのような影響を与える可能性があるのかを明らかにすることを目的とし、10月と3月には現地での聞取り調査を予定している。  4月から8月までは、その事前準備として、現地で反原発運動をおこなうNGOからの情報収集、ならびにインドネシア語のニュース(主に一般メディアがサイトに更新するニュースや政府情報)から原発建設に関する動向を拾い上げる作業を進めてきた。たとえば、研究・技術省からは「当初2016年に予定されていた1号基の運転開始が少なくとも18年に延期となる」「ムリア半島での強力な反対運動を受けて別の候補地を探し出す必要性があるが、あくまで原発建設実現に向けて進める」、環境省からは「莫大な建設費用がかかる原発ではなく、地熱、太陽光、風力、バイオ燃料といった代替エネルギーの開発に力を注ぐべき」といった発言がみられる。なお、インドネシアでは今年4月に総選挙、7月に大統領選挙が実施された(現職ユドヨノ大統領の再選が決定)が、市民による反対運動の高まりを意識してか、各政党・候補ともに、原発建設に関しての具体的な話を出していない。逆を言えば、10月の新政権の発足後に動きがある可能性は高いといえるため、これから予定している第1回目の現地調査でも、そうした要素をふまえて建設予定地の動きを把握してきたいと考えている。特に今回は、中ジャワ州ムリア半島ならびに東ジャワ州マドゥラ島を中心に、現地の住民の思いや反対運動のこれまでの推移をまとめること、今後の動向に関する情報収集を予定している。

結果・成果

2010年5月の完了報告から
 本調査研究は、他国に輸出するほど石油、天然ガスなどのエネルギー資源を豊富に有するインドネシアにおいて、危険性の高い原子力発電所を建設する必要性への疑問を前提として、原発建設予定地の住民からの聞き取りや、地元で住民とともに活動するNGOとの共同調査により、原発建設によって地元コミュニティーにどのような影響がおこりうるのか、その詳細を明らかにすることを目的として実施した。  「エネルギー危機」が叫ばれるインドネシアにおいて、政府はその打開策のひとつとして、2004年〜25年の長期開発計画のなかで、2025年までに4基の原子力発電所の建設を予定していることを表明している。しかし、建設地住民による反対運動の盛り上がりや、2009年に実施された大統領選挙への影響の懸念からか、1基目の原発建設開始予定だった2008年からすでに2年が経過した現在も、インドネシア政府は明確な態度を示すことができていない状況だ。しかし、計画が白紙になったわけではない。だからこそ、建設計画が止まっているいまの間に、原発建設に対しての地元住民の声を集め、人びとの要望を最優先するような世論形成が重要だと考える。  2009年10月と2010年3月の2度にわたり原発建設予定地(ムリア半島とマドゥラ島)での実地調査をおこなったが、地元住民の声を集めるという目的を達成できたこと、さらに地元の反原発活動家とのネットワークが強化できたことは、今後につながる大きな成果だった。今後も動向を注視し、原発輸入/輸出を実現させないために、協力してきたい。  ムリア半島でもマドゥラ島でも、住民の大多数が原発特有の危険性や廃棄物の問題、管理能力の問題、地震の危険性などを理由に、当該地域での原発建設に対して反対していることが確認できた。また、今回の調査によって、インドネシア政府による地元住民への説明責任がまったく果たされていないことが明らかになった。こうした事実は、日本政府が進めようとしている官民連携による原発輸出、国際協力銀行(JBIC)をはじめとした公的金融機関の関与の可能性に対して、問題を提起する上で、大きな役割を果たすはずだと考える。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い