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これまでの助成研究・研修

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米国がん患者支援団体による科学研究費獲得、臨床試験推進に関する研修【研修先:テキサス州立大学付属MDアンダーソンキャンサーセンターほか】



グループ名 []
代表者氏名 桜井 なおみ さん
URL
助成金額 30万円

研究の概要

2010年3月の助成申込書から
 近年、日本では、患者支援団体が政策決定などの現場に関与をし始めているが、科学的な知識の不足、個人的な感情論から政策が議論され、基礎となるがん臨床分野への予算が削減されてしまっている。  米国では、<がん撲滅>の目標のもと、患者団体が医療政策過程、特に医薬品開発に関する政策決定において、積極的な活動を行っている。また、患者団体の強力な後押しにより、臨床試験の推進・協力、並びに研究費の予算獲得などが進められている。 (先日、新聞でも話題になった米国でのメディケイトに関する変更も、NBCCなど患者団体のadvocate活動が結実したものである。)  たとえば、ハーセプチンという分子標的薬の開発に際しては、ひとりの医者の発見を、患者団体が強力に後押しをし、短期間に上市が行われ、何十万人という乳がん患者が生き延び、生還をしている。  そこで、私は、医療者、そして、患者団体がともに集結する、米国を代表する2つの学会を訪問し、臨床試験・政策に関する主張、資金調達、草の根運動について学び、<科学の推進に患者がどのように関与すべきか>について知見を深め、advocaterとして日本の基礎医学研究、がん医療の向上に貢献したい。  また、帰国後は、日本の患者支援団体のリーダーに紹介することを目的とした映画の上映、並びにシンポジウムを開催し、臨床試験推進に関わる患者の役割について報告をする。

中間報告

2010年12月の中間報告から
 MDアンダーソンキャンサーセンター(以下、MDACC)は、患者満足度第一位を獲得している全米を代表する病院である。ここでは莫大な資金力を背景に、数多くの臨床試験が病院主導で行われており、12,000個となっている。日本では、考えられない数である。  この臨床試験を支えているのが、患者支援団体である。中でもとりわけ、<リサーチ・アドボケイト>が果たす役割は大きいが、日本ではこうした団体が存在しないこともあり、臨床試験の意義のみならず、情報すら患者は入手することができない。  サンアントニオ乳がん学会(SABCS)は、全米を代表する学会のひとつであり、日本からも多くの医師が参加をしている。しかしながら、日本の患者が参加をするのは初のことであり、私の参加は注目をされた。  参加をしてみて驚いたのは、朝6時30分から夜22時まで医療従事者による教育セッションや補助セミナーが学術発表の前後で開かれていたこと。Patient Advocateは、こうしたセッションへの参加が義務付けられているが、一定の知識をもったうえで学術セッションに参加することで、難易度の高い発表内容もなんとか理解をすることができるようになっている。  「システマチックな患者教育」が、学会と患者の間で形成されていることがわかる。また、患者も、<学会に患者が何をできるのか>を考え、ともに行動をしていた。  日本の臨床試験推進を考える上で、こうした患者主導の取り組みを知ることができたのは重要な機会であり、次年度のNBCC、ASCOでの参考になる。

結果・成果


 2010年12月、サンアントニオ乳がんシンポジウム(以下、SABCS)へ参加をし、米国の「patient advocate(患者活動家団体)」と学会、医療従事者との関係づくりや患者教育の在り方について視察をしてきました。このシンポジウムの特徴は、^譴弔離札奪轡腑鵑髻患者、研究者、外科医、内科医、放射線科医、看護師、薬剤師など様々な立場にある関係者が一斉にみるということ、患者会主催のメンターセッションの開催、4擬圓セッションに登壇し、患者としての意見を述べる光景、などです。このような運営の工夫により、研究と患者の声とのギャップを埋めようという努力がされています。  今春には、全米乳がん連合(National Breast Cancer Coalition、以下NBCC)が毎春実施している政策研究会議、提言(ロビィング)活動を視察してきました。NBCCは全米にある600以上の草の根グループが連合し、科学的根拠に基づいた政策提言、研究参加を推進している団体です。現在、NBCCは2020年1月1日までに乳がんを撲滅するというキャンペーン(DEADLINE2020)を実施しており、今年の会議では「change your conversation」を合言葉にトレーニングが行われました。DEADLINE2020は、その重点課題として、‥尚棔θがんのメカニズムを解明し、画期的な新薬を開発する、▲肇螢廛襯優ティヴ乳がん*の治療方法を開発する、を目標に定めています。  最新の科学を習得する機会をつくり、市民科学者としての目を患者に芽生えさせること。そうした市民科学者が大きな連合体となって政界へ影響力を持ち、政策実現へつなげる、という一連の流れを学ぶことができたのは、今後の日本の患者会活動を考える上で大変参考になりました。  6月には全米臨床腫瘍学会(以下、ASCO)へ参加をしてきました。ASCOは全米最大、世界最大のがんのカンファレンスです。ここでは米国がん経験者連合(National Coalition for Cancer Survivorship:NCCS)が、臨床試験を推し進めるために学会と強力な関係を組んでいます。学会に患者目線を加えることで、セッションの内容にも影響が生じており、社会的な問題や経済的な問題なども議論にあがっています。  そこで見たのはヾ擬圓罰慍颪互いに敬意をもって接する、⇒諭垢淵好董璽ホルダーと協力関係を築く、がん医療に関する互いの問題を共有する、という姿勢です。  アメリカでも臨床試験に参加する患者は少なくなってきています。しかしながら、学会と患者会が協力しあい、患者の権利を擁護しながら新しいエビデンスをつくり、未来へつなげようという姿のベースには、患者教育とそこから生まれた信頼関係があるということを学びました。

その他/備考


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