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脱原子力の政治過程─ドイツ・ゴアレーベンにおける最終処分場問題─【研修先:ドイツ リューネブルク大学民主主義研究センター】



グループ名 []
代表者氏名 佐藤 温子 さん
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助成金額 30万円

研究の概要

2010年3月の助成申込書から
 地球温暖化対策と安定したエネルギー供給が世界的な課題である現在、原子力の再評価が行われている。しかし、原子力利用には、万が一の事故のリスクに加え、核拡散や安全保障上の問題、さらに放射性廃棄物の処理問題などが不可避的に付随し、世界各国でいまだ未解決のままである。  高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、わが国も含め、地球上のどこにも存在していない。原子力をめぐる問題は、その存在そのものだけに起因するのではなく、民主主義的な手続きがなされるか否かに依存する。わが国で2007年に起きた高知県東洋町の最終処分場候補地をめぐる騒動のように、多くの国で住民の反対により候補地決定のためのあらゆる試みが頓挫しているため、住民参加の重要性が指摘されている。  本研究では、最終処分場問題をめぐり政党と運動がどのような役割を果たしうるのかに着目し、ドイツの連邦と州の緊張関係に関連させて分析したい。原子力をめぐる紛争を研究対象とすることから、分析の際には文理融合的、および学際的な研究が必要となる。放射性廃棄物最終処分場候補地のあるドイツ・ゴアレーベンにおいて、民主主義的な政策の立案・形成の過程を考察し社会科学の見地から政策提言を行うことを目的とする。

中間報告

2010年12月の中間報告から
 2010年4月からドイツ・リューネブルク大学で研究に従事しています。2009年10月にドイツで保守派政党による新政権が発足されて以来、原子力政策が討論の的となってきました。なぜなら、新政権は2000年に社会民主党と緑の党連立政権の下で決められた、原発を2021年までに段階的に閉鎖することを定めた合意をやめ、原発の運転期間を延長する意向だったためです。新政府の動きに対して、2010年4月、9月、11月に大規模な抗議行動が行われました。そこで私はこれらの抗議行動に参加し、資料収集・観察を行い、調査結果をまとめて論稿を公表してきました。  結局、ドイツの脱原子力の方針は、大多数の世論の反対にもかかわらず、大きくその性質を変えることになりました。ドイツ国内の原発は平均12年延命されることになり、さらに長い間論議されてきた高レベル放射性廃棄物の最終処分場予定地ゴアレーベンは、モラトリアム期間を中断して調査が再開されることになりました。この一連の動きの結果、社会運動は何をなしえるのかという問いが自然と浮かんできました。ただ、ある報道によれば、大規模な反対行動によりエネルギー問題が世論の注目を集めた結果、新エネルギー会社への新規利用申し込みが増えたそうで、これは朗報の一つといえるかもしれません。  現在は、世界でスウェーデンと並んで高レベル放射性廃棄物最終処分場の計画を決定したフィンランドにも視座を広げ、なぜフィンランドでは計画が決定され、日本・ドイツでは決定されないのかという疑問をもとに、3カ国の原子力政治をめぐる研究を進めています。

結果・成果


 地球温暖化対策と安定したエネルギー供給が世界的な課題である現在、原子力の再評価が行われています。しかし原子力利用には、万が一の事故のリスクに加え、核拡散や安全保障上の問題、さらに放射性廃棄物の処理問題などが避けられず、世界各国でいまだ未解決のままです。このような問題をふまえ、ドイツでは、段階的に原子力発電所を閉鎖し、放射性廃棄物最終処分場候補地ゴアレーベンにおける岩塩層調査に関しても、10年間のモラトリアムを設けて凍結し、原子力政策を再考する方針が2000年に決定されました。  しかし、2009年のドイツ総選挙の結果、原子力推進派の新政権が誕生しました。新政権樹立により、脱原子力の合意は覆されると大方予想されていましたが、新たな原子力政策の方針はなかなか定まりませんでした。ドイツの原子力政策および放射性廃棄物の最終処分場問題はどのように進捗するのかという疑問を背景に、現地の大学で学ぶことを目的としました。  この研修でリューネブルク大学民主主義研究センターに在籍することにより、原子力と最終処分場問題に関するゼミや研究集会に定期的に参加して意見交換をすることができました。さらに反原発の抗議行動に参加して調査することにより、現地の政治のあり方をより深く理解することができました。研究の成果として、論稿を執筆し、国際学会で報告を行ってきました。今後はリューネブルク大学民主主義研究センターで、フィンランド・ドイツ・日本の放射性廃棄物政策の研究に取り組みます。

その他/備考


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