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各地におけるVOC汚染物質の変動



グループ名 化学物質による大気汚染から健康を守る会(旧名称 VOC総合研究部会) 20090509公開ミーティング配付資料[pdf99kb]
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代表者氏名 森上 展安 さん
URL http://www.pp.iij4u.or.jp/~morigami/
助成金額 50万円

20090509公開ミーティングにて

20090509公開ミーティングにて

研究の概要

2008年12月の助成申込書から
 簡易クロマトグラフ型携帯VOCモニターを用いて、揮発性有機化合物による大気汚染が測定場所および時間によって著しく変動するものであり、現在もまだ急増中で、外気であるにもかかわらず、しばしば室内汚染規制値を数倍も上回るという大変なことを見出した。  しかし今はまだ、汚れがどんな物品から発生したか、どこから発生したか、どのように届いたのか、などの対策作定に必要な実態を把握するには至っていない。  本年度以降は、よくある物品を測定して化合物群のクロマト・スペクトルのデータバンクを充実させて基準とし、各地域ごとの汚染原因推定に役立てる。  2008年には都内、小川町や日出町、寝屋川市、神立町などプラスチックごみ問題等がある各地での測定要望が相次いだが、基本データの収得のために測定器を貸し出すことを控えざるを得なかった。2009年には、研究協力者も得られる見込みで、それらの地域で、可能な限りの長期間測定で、地域ごとに汚染の種類を見定めると同時に日時や天候による汚染の変化やその汚染分布を調査し、この新しい測定方法の活用方法を考察しつつ知識を広め、汚染実態を解析し、また自立して研究できる市民を多く育てたい。

中間報告

2009年10月の中間報告から
A.工場、農地、住宅地、公共施設、家庭室内、一般ごみ焼却場、小型産業ごみ焼却場、プラスチックごみリサイクル施設などの周辺大気中VOC汚染測定・評価  土浦市長峰焼却場、土浦市青少年の家向かいのプラスチック加工場、土浦市乙戸南の産廃ごみ集積場、土浦市乙戸南の水田近く(除草剤および農薬散布前後)、つくば市谷田部の水田隣り、つくば市大角豆畑近く、所沢市東所沢、所沢松郷4地点、などを新たに長期連続測定し、東京渋谷焼却場、東京光が丘焼却場、および東京不燃ごみ杉並中継所周辺、つくば市および土浦市での野焼き近く、東京都多摩市などの測定結果の一部を整理して比較し検討中である。 B.健康被害状況ならびに標準資料との比較で危険性評価の仮説を立てる  全国的に住居が分散しているあるOB会全員に対して健康不調状況をアンケートで調査し、地域差を調べた。質問項目は、プラスチック由来のVOC汚染が公調委で認められた杉並病中継所周辺で多かった項目に準じた。京浜地域を基準としたオッズ比で比較したところ、東京都内で杉並中継所と類似した作業をしていた3地点周辺3.5kmでは、オッズ比2以上に多い心臓血管系症状があった。また、プラスチックを多用する新建材時代になって急速に造成されたつくば市では、アレルギー症状が著しいことが見出された。他の地域では京浜地区に比べて取り立てて多い症状はなかった。測定中のクロマトグラフに現れたVOC群の特徴と照合しての検討を行う予定である。 C.プラスチックごみの機械的処理および加熱によるVOC発生  包装用プラスチックの代表として数種の発泡ポリエチレンおよび梱包用発泡ウレタンを試験片として、摩擦周辺空気中のVOCを、簡易クロマト型VOCモニターで継続的に測定した。滑り運動せずに押付けただけではVOCの変化は見られないが、滑り始めるとプラスチックに特有なVOC群が生じ、速度や押付け力を高めると種類と濃度が増加した。しかし摩擦を続けると時間とともに帰って濃度が低下した。VOCと同時に発生した微粉塵に吸着したためと推測された。このことは、大気中に浮遊粒子が多いときには、浮遊粒子に付着するために分析器でのVOC濃度は存在するよりも低く示されることが分かった。 これらの実験結果は、本年5月東京での日本トライボロジ学会「トライボケミストリーの新展開」セミナー、洗剤・環境科学研究会などで発表され、また本年9月京都で国際トライボロジ会議で日本からの代表講演(加藤康司・東北大名誉教授)の中でも紹介された。 D.化学物質による大気汚染を防ぐ知識の普及  良好と推奨されている新建材数種についてユーザーおよび建築業の要請で簡易VOCモニターで測定し、安心できない様子を説明した。また8月1日と29日に精密なクロマトグラフによる大気中VOCおよび天谷式NOxの測定法、VOCの伝播のしかた、DNA集積チップを用いての未知VOC毒性試験法などについて、セミナーを実施した。アースデイ東京において当会のブースを設け、VOC分析調査例およびNOx調査方法を展示・指導した。さらに岐阜、兵庫、和歌山、茨城、杉並の各地域の被害症状を集めた「不適切なプラスチック処理による被害症例集」を出版してアースデイ等で配布し、セミナーにおいて沖縄におけるプラスチック系医療廃棄物不法焼却など各地の被害状況を語り合った。

結果・成果

2010年5月の完了報告から
A.各地のVOC測定・評価  各地の種々な排気物処理場、各地の住宅や公共施設の内外、問題工場周辺などでVOC汚染をVOCモニターで調べ、そのクロマトグラフを比較検討した。予期しなかったことに、2箇所の一般ごみ焼却場、建築廃材の破砕施設を併設した焼廃材却場、プラスチック主体ゴミを焼却なしで強力な攪拌を伴う押込み施設(杉並中継所)という4種の排気物処理場付近では、処理の種類が違うに関わらずクロマトグラフで示された化合物種類に共通性が見られた。それらでは自動車排気ガス汚染環境に比べてベンゼンよりも揮発しやすい物質が多量にあり、それらは引火しやすいから焼却炉から排出されるものではないことが明らかと推定された。この分析結果は、当会の指導を受けた住民の要望で初めて実施した千葉県環境課のクロマトグラフの分析でも確認できた。焼却場(渋谷および光が丘)でも、同じくベンゼンより揮発しやすい物質が少し見られ、また、汚染濃度は、焼却以外の処理施設のほうが焼却場と称する施設より汚染濃度が高く、室内ガイドラインをも越えていた。長峰焼却場(土浦)ではマイラーバックで採取し間接測定したので他で実施した直接測定のような高感度での詳細なクロマトは得られなかったが、やはりベンゼンより揮発しやすい物質の存在が示された。各焼却場においては、炉に投入する前処理等としてゴミを動かす施設が併設されていることを疑わせる。  その他に地域での住宅や公共施設の内外は、それぞれ異なった物質群のクロマトを示したが、合計汚染濃度(TVOC)で示す汚染が少ない場合には自動車排気ガス汚染のパターンを示し、合計汚染濃度が多い地域では各地域特有の汚染パターンを示した。また、内外を比べると、一般には室内汚染のほうが合計濃度が高くて物質種類も多いのであるが、合計濃度が高い地域(東所沢・所沢松郷)または日にち(ある日の多摩および乙戸)では、室内よりも室外のほうが濃度が高い場合すらあり、それらの場合のクロマトグラフから室内に室外の汚染物質群が進入していると思われることもあった。  農繁期の田んぼに面した改築前後の旧家の室内空気を連続測定して例では、開放した時間には合計濃度が低下しており、締め切った時間と気温増加の影響が明かに示され、農薬は建材よりは濃度に与える影響が少ないことを示していた。また、良好と推奨されている新建材数種についてユーザーおよび建築業の要請で簡易VOCモニターで測定し、安心できない様子を明かにした。モクセイ、ユリ、チンチョウゲ、など香りが強い花のVOC群も測定し、人的汚染と区別できるようにした。  ホルムアルデヒドメーターによる測定では、VOCモニターで検出された汚染の状態と関係ある数値は得られなかったので、シックハウスのガイドラインとしてホルムアルデヒドに重点をおいても意味がないことが確認できた。 B.健康調査・仮説  全国的に住居が分散しているあるOB会全員300人に対し行った健康不調状況アンケート調査で、地域ごと約30人の群に分けて有症率を比較した。質問項目は、公害等調整委員会(公調委)でプラスチック由来のVOC汚染が認められた症状に準じた。A地域:プラスチック廃棄物攪拌・圧縮施設(杉並・新宿・希望が丘)周辺3kmおよびB地域:つくば周辺地域では、C地域:Bを除く東京・横浜・川崎地域(京浜地域)に比べて著しく有症者が多いことを見出した。D:つくば地域を除く上野から神立までの常磐線沿線、およびE:その他の関東以西の地域はC地域より多いことはなかった。A地域では特に心臓血管系症状とアレルギー症状、B地域ではアレルギー症状が多かった。B地域については、全面的に新建材時代になって急速に造成された市街であることが要因ではないかと疑われる。建築廃材処理場周辺での健康不調は著しく、症状は杉並病に類似し、また、発症者がわずかなウレタン混紡繊維でも苦痛を感じる点でも似ている。杉並で検出されたウレタンモノマーのイソシアネートの存在も疑われる。  健康不調の指標の一つとして、10人がパルスオキシメーターによる血中酸素飽和濃度(SPO2)と脈拍数の5秒ごとの変動を、就寝中と活動中とで記録した。環境による体調不調を訴えるものにおいては、活動の場所によって、脈拍が60から180まで、SPO2が99から70までも極端な変動するものもあった。 測定例を集積すれば、環境に依存して体調不具合を生じるもの病状、および有害環境の客観的な診断に役立つ可能があると思われた。 C.プラスチックからの発生実験  包装用プラスチックの代表として数種の発泡ポリエチレンおよび梱包用発泡ウレタンを試験片として、摩擦周辺空気中のVOCを、簡易クロマト型VOCモニターで継続的に測定した。滑り運動せずに押付けただけではVOCの変化は見られないが、滑り始めるとプラスチックに特有なVOC群が生じ、速度や押付け力を高めると種類と濃度が増加した。また、摩擦を続けると時間とともにかえって濃度が低下する物質もあった。VOCと同時に発生した微粉塵に吸着し、分析器に導入されないためと推測され、大気中に浮遊粒子が多いときには、分析濃度が吸入する濃度よりも低く示されるであろう。摩擦運動条件に依存して発生することが確かめられたこれらのVOCは、攪拌を伴う押込み施設や破砕施設周辺での健康被害の主な原因と考えられる。 D.知識の普及  VOC汚染実態を理解するに必要な広汎な知識を集めるために、当会主催のセミナーを4回開催した。プラスチック摩擦実験の結果、各地でのVOC測定結果および文献による調査結果をまとめて、学会や市民の研究会、アースデイ、高木基金の発表会、当会セミナーなどで口頭発表と文書で普及を図った。また、各地でのVOC被害について情報交換を行い、その一部である6地域の詳細な被害症状を100ページの出版物として配布した。 被害とは認識されてない健康影響を調べるために全国的症状の疫学調査を行って報告書にまとめた。各地のVOC被害停止のために、情報を送付するなどの支援を行って、行政に適切な分析を実施させた。杉並中継所が停止したことにも当会の寄与があったと思われる。

その他/備考


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