高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


ルソン島サンバレス州における大規模鉱山開発が流域や保護地区に与える環境影響:コミュニティによる資源管理と代替生計手段の把握



グループ名 フィリピン民族民主運動(KPD)
代表者氏名 【フィリピン】ピート・ピンラック さん
URL
助成金額 40万円

鉱山から流出する赤土がサンバレスを覆う

露天堀りの現場から採掘後、山積みにされる土壌や岩石(ニッケルラテライト含有)

研究の概要


 サンバレス州のピナトゥボ山を含む山々は、多様な鉱石の産地で、Acoje鉱区およびCoto鉱区では、ニッケルやクロム鉄鉱、プラチナなどを産出している。アロヨ前政権の政策を受けて、ここ10年開発が急増し、現在30社以上の鉱山企業によって83,000ヘクタールの山岳地帯で開発が行われている。それにより水源、農地、森林への影響は著しい。赤土の混ざった水が大量に押し寄せた農地もある。急速な鉱山開発と気候変動という二つの要因により、大規模な台風の度に深刻な大洪水が生じている。また、軍備化が進み、人権侵害も起きている。この地域には63種の植生や50種の熱帯性広葉樹林など、生物多様性豊かな熱帯雨林があり、また西海岸にはウミガメの繁殖地やマングローブがあり、指定保護区もある。また、先住民のアエタ族が生活している。  本調査では6つの自治体に焦点を当て、開発による経済、環境、社会的な影響調査を行い、持続可能な草の根による資源管理の代替案を提示することを目的とする。本調査による情報の蓄積によって、露天堀り(Open-pit mining)のような破壊的な開発の禁止につなげたい。また、先住民族などの人々の経済・社会・文化的な権利を訴えたい。調査実施期間は2011年1月〜12月。

中間報告


 

結果・成果


 ピナトゥボ山などの火山があるフィリピンルソン島・サンバレス州は、ニッケルやクロムなどの多様な鉱石の産地です。アロヨ前政権の政策を受けて鉱山開発が急増し、現在30社もの大企業が8万3000ha の山岳地帯で開発を行っています。しかし、その一帯には、希少な動植物が生息する森林や豊かな河川流域、西海岸にはウミガメの繁殖地やマングローブ林が広がり、先住民アエタ族が暮らす地域があります。  本調査では、サンバレス州で過去10年以上にわたって鉱山開発が行われている6つの自治体(Cabangan、Botolan、Palauig、Masinloc、Camdelaria、Sta.Cruz)を対象に、文献調査や参与観察、FGDや個別インタビューなどを通じて情報収集・分析を行い、鉱山開発が人々の生活や生計手段、生態系全体にもたらした影響評価を行いました。2011 年1 月から実施された調査を通じて、かつて農地やアエタ族の先祖の土地だった場所で、広範囲の表層をはぎ取る大規模な露天堀り(Open-pitmining)やヒープリーチング(HeapLeaching)という技術を用いた掘削が行われていることが分かりました。また、開発の過程で廃棄される大量の岩石や赤土が放置され、土壌の浸食や地滑りが発生し、鉱物由来の赤い埃による皮膚や目、呼吸器疾患などの健康問題が起きていることが報告されました。河川や湖などの水位が下がり、土壌堆積による水質の悪化が起きている他、ヒープリーチングでの硫酸の使用による地下水汚染などへの懸念が上げられました。さらに、軍の駐在による反対派住民に対する人権侵害への懸念も寄せられました。調査を通じて、一連の鉱山開発は富裕層や有力な一族などわずかな人々にしか利益をもたらしていないにも関わらず、小規模な漁民や農民など大多数の住民に負の影響を及ぼしており、貧困を悪化させ、土地を不毛の地に変えていることが明らかとなりました。  この調査結果及び結論をもとに、「環境の回復と自給自足的な開発に重点を置いた持続可能な鉱山資源利用計画の策定」「露天掘りやヒープリーチングなど環境に適さない技術の使用禁止のための政治的意思の行使」「既存の鉱山法や現在の破壊的な開発を許容する政策の廃止及び開発許可権の国から地方自治体レベルへの移行政策の実施」など、9つの提言をまとめました。今後は提言を含んだ報告書や現地の様子を撮影した映像などを広く配布する他、地元政府との対話などを通じて状況の改善を求める活動を引き続き行っていきます。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い