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諫早湾干拓調整池におけるアオコの大発生とアオコ毒の堆積物および水生生物への蓄積と健康リスク



グループ名 諫早湾アオコ研究チーム 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 梅原 亮 さん
URL
助成金額 50万円

左下側が調整池、右上側が諫早湾。

調査地点

採泥調査の様子

研究の概要

2010年12月の助成申込書から
 1997年4月の諫早湾干拓事業により造成された調整池では、近年、春から秋にアオコが大発生している。このアオコはミクロキスティス属の有毒物質(ミクロシスチン:肝臓に対してきわめて高い毒性を有する。)を生産する種であり、世界各地からこの毒による事故の報告が繰り返されてきた。これまでの研究成果より、アオコの発生メカニズムの概要や、産生されたミクロシスチンが調整池内の堆積物や魚類(ボラ)へ高濃度に蓄積され、調整池からの排水と共に諫早湾へ流出し、湾底の堆積物に堆積し、潮受け堤防近傍の海岸の二枚貝(カキ)には生物濃縮の作用によって人体に危険なレベルにまで高濃度に蓄積していることなどをわかっている。調整池がこのままの状態で放置されるならば、アオコがさらに毒性物質の生産を続け、周辺の住民に健康被害が起きる可能性も十分に考えられる。一刻も早く調整池の水門を開いて海水を導入し、塩分の上昇によってアオコの発生を防ぐ必要がある。また、その施策の実現するために、調整池で危険なアオコが大繁殖する実態をさらに明確にして、事の重大性を社会に訴える必要がある。

中間報告

2011年9月の中間報告書から
 本研究チームは、諫早湾干拓事業により造成された調整池で有毒アオコによって産生されたミクロシスチン(肝臓に対して極めて高い毒性を有する物質。)の水系環境における動態と沿岸生態系への影響を明らかにするために、調整池、諫早湾および有明海において水質、底質およびミクロシスチンの定量調査を行っている。潮受け堤防には合計全長約250mにおよぶ排水門(南門、北門)が造られており、有毒アオコを含む調整池の水がこれらの排水門を通して諫早湾へ年間約4億t排出されている。汽水である調整池の水が海水の諫早湾に排出される際に、諫早湾内において密度の違いによる強固な塩分成層が形成されており、調整池からの排水は諫早湾の表層を移流することで、湾口部にまで広がっていたことが新たにわかった。また、諫早湾において、潮受け堤防から約9km離れた地点(湾口部)の堆積物に対する調整池由来の有機物の寄与率は約21%であり、寄与率およびミクロシスチン含量が堤防から離れるにしたがって(湾口部に向かって)減衰しておらず、さらに外側の有明海へのアオコ毒の拡散が示唆された。ミクロシスチンの生物濃縮に関しては、2011年度の春季および夏季における諫早湾潮受け堤防近傍の海岸のマガキに含まれるミクロシスチン量は低い傾向(0.003±0.001 µg/gww)にあるが、2007年、2008年および2009年においては秋季および冬季に高い含量(0.376±0.070 µg/gww)を検出したため、秋季および冬季におけるマガキのモニタリングを継続して行う。また、新たに、調整池内に棲息するナマズの肝臓や諫早湾産のガザミの中腸腺からも微量なミクロシスチンが検出された。アオコが調整池でさらに毒性物質の生産を続け、周辺の住民に健康被害が起きる可能性も十分に考えられるので、堤防の水門を開いて調整池に海水を導入し、塩分の上昇によってアオコの発生を防ぐことが急がれる。

結果・成果

完了報告より
 1997年4月、諫早湾干拓事業の潮受堤防閉切りにより造成された調整池では、近年、春から秋にアオコが大発生しています。このアオコはミクロキスティス属の有毒物質(ミクロシスチン:肝臓に対してきわめて高い毒性を有する)を生産する種であり、世界各地からこの毒による事故の報告が繰り返されてきました。これまでの研究成果より、アオコの発生メカニズムの概要や、生産されたミクロシスチンが調整池内の堆積物や魚類(ボラ)へ高濃度に蓄積され、調整池からの排水と共に諫早湾へ流出し、湾底の堆積物に堆積し、潮受堤防近傍の海岸の二枚貝(カキ)には人体に危険なレベルにまで高濃度に蓄積していることが確認されています。  そこで、本研究では、2011年4月〜2012年3月に調整池、諫早湾および有明海奥部海域において、水質・底質調査を実施し、諫早湾調整池においてアオコによって生産された毒素ミクロシスチンが諫早湾および有明海奥部の堆積物にどのように広がっており、そこに住む底生生物にどれほど蓄積し、生物濃縮しているのかということを明らかにすることを目的としました。  調査方法として、調整池内に4地点、諫早湾において9地点および有明海奥部海域において18地点の調査地点を設け、調整池では9回、諫早湾および有明海奥部においては、2011年9月および11月、2012年3月に、毒素の分布を調べる為に広域的な採泥調査を実施しました。現場での多項目水質計による測定に加え、採取された水、堆積物および生物のミクロシスチン含有量を測定しました。  調整池内でアオコが生産した毒素ミクロシスチンが、年間をとおして排水とともに海域(諫早湾)へと排出されており、諫早湾および有明海奥部の堆積物に蓄積していました。特に諫早湾の潮受堤防南部排水門付近は、ミクロシスチン が溜まりやすい場所(ホットスポット)となっており、堆積物(2.6μg/kgww、2011年11月3日)および自生するマガキ(0.45μg/gww、2007年12月10日)から、高い含有量を検出しています。2010〜11年はマガキのミクロシステン含量が低い傾向でしたが、慢性影響を考慮した場合に安全であるとは言えません。また、調整池および諫早湾に棲息する小さな底生生物に蓄積した微量なミクロシスチンが、食物連鎖を通して、それを摂餌する食物連鎖上位の生物(クモ、トンボおよびガザミ)に生物濃縮していたことが確認されました。

その他/備考


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