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チェルノブイリ原発事故被災地におけるバイオエネルギー生産と農業復興の試み



グループ名 チェルノブイリ救援・中部 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 池田 光司 さん
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助成金額 40万円

研究の概要

チェルノブイリ原発事故被災地におけるバイオエネルギー生産と農業復興の試み
 1986年に発生したチェルノブイリ原発事故は、事故処理作業者や住民に多くの被害をもたらした。当会は1990年に任意団体「チェルノブイリ救援・中部」を創立以来、ウクライナの被災者や病院に医薬品や医療機器の援助を行ってきた。医療支援の成果は一定程度上がったものの、汚染地域であるジトーミル州ナロジチ地区の住民(約10,000人)の発病率は依然として高い。原因は汚染した食品による内部被曝である。当会は、この実情を改善するために、新たなプロジェクトを2007年から開始した。汚染した土地にセシウム137やストロンチウム90を良く吸収するナタネを栽培し土壌汚染を改善する。同時に収穫したナタネの油を加工し、バイオディーゼル燃料(BDF)に転換して農業用に利用する。ナタネの油には放射能が含まれないのは確認済みである。また、ナタネのバイオマスや油粕はメタン発酵させてバイオガスを作り、燃料として利用する。バイオガスには放射能は含まれないが、バイオガス製造で出る廃液に放射能は含まれる。これを吸着剤で吸着処理し、その吸着剤は廃棄物処理場に保管する。放射能が除かれた廃液は液肥としてナタネの栽培に有効利用できる可能性もある。こうしたサイクルを継続し、土壌中の放射能を低減しながら、汚染地域における農業の再生を目指す。

中間報告

2011年10月の中間報告書から
 1986年に発生したチェルノブイリ原発事故により、放射能汚染の被害を受けたウクライナ国ナロジチ地区の支援を行っている。産業基盤であった農業の崩壊により、住民は自家菜園を中心とした自給自足の暮らしを余儀なくされ、放射能で汚染された食糧の摂取が続いている。この内部被曝の影響により、住民のガンや心臓病、脳血管病などの発病率は高く、最近増加傾向にさえある。原発事故から25年経っているのに、汚染の被害は進行しているのである。  当団体では、従来、被災者や病院に医薬品や医療機器の援助を行ってきたが、食糧による内部被曝が続く限りこの状況は改善できないと判断して、2007年に5か年計画で菜の花プロジェクトをスタートさせた。現地農業大学と共同で研究を進め、今までの4年間に、土壌の水分中の放射能を菜の花が吸い上げること、それにより菜の花栽培後の土壌で育てた作物の放射能汚染を軽減できること、ナタネ油には放射能が移行せずバイオディーゼル燃料(BDF)として利用できること、バイオマスや油粕はメタン発酵させてバイオガス(BG)燃料として利用できることを実証してきた。  5年目にあたる今年は、BGのメタン発酵溶液中に含まれるナタネが吸い上げた放射能を取り除き、汚染物質の容量を減らすとともに、溶液を液肥として活用できないか研究を進めている。基礎実験において、模擬廃液中のセシウム137はゼオライトによってほぼ全量吸着できることを確認した。この結果を基にして、放射性廃液処理装置を設計して、現在専門家を現地に派遣して建設中である。発酵溶液中には吸着を阻害するカリウムが含まれるため、最適な溶液のカリウム濃度と溶液を流す速度の関係をつかむことが課題である。

結果・成果

完了報告より
 当団体は、1990年に創立し、チェルノブイリ原発事故被災地ウクライナの被災者や病院に医薬品や医療機器を送る援助を行ってきました。これらの医療支援は一定の成果を挙げたものの、汚染地域では、食品による内部被曝が続いており、発病率は依然として高い状況です。そこで、当団体では、汚染地域であるジトーミル州ナロジチ地区において、「ナロジチ再生・菜の花プロジェクト」を2007年4月に5年計画でスタートさせました。このプロジェクトの目的は、菜の花が汚染された土壌から放射性物質(セシウム137やストロンチウム90)を吸い上げる性質を利用して、汚染農地において次の2つのことを小規模で実証し、住民の内部被曝を防ぎ、農業再生の可能性を探ることです。  1)放射能に汚染されていない作物を栽培する技術  2)ナタネを利用したバイオエネルギー生産技術  今年3月、5年の歳月をかけたこのプロジェクトが終了しましたが、このプロジェクトを通して、以下に示すような成果を得ることができました。 (1)ナタネが1回の栽培で土壌中から吸収できるのは、土壌中にある放射性物質の3〜5%に留まるが、その後裏作で栽培した、小麦、ライ麦、ソバなどの作物は、ほとんど汚染がないか、大幅な汚染の減少があった。これは、土壌の水分中に溶け出している放射性物質をナタネが吸収し、土壌中には土壌に強固に固着した放射性物質のみが残り、その後栽培された作物は、土壌の放射性物質を吸収することはなく育つためと考えられる。 (2)放射性物質を吸い上げた菜種から油を絞った場合、油には放射性物質が移行しないことを確認した。また、この油からBDF(バイオディーゼル燃料)を製造し、農業用のコンバインやトラクターを動かすことができた。 (3)放射性物質が残るナタネの油粕と茎、葉、根をバイオガス発生装置に投入し、バイオガスが発生することを確認した。また、廃液中に含まれる放射性物質をゼオライト吸着剤で取り除くための装置を作製した。なお、バイオガス発生装置の廃液中の放射能を取り除く実験は残ったが、模擬実験の結果からもほぼ間違いなく除去できると考えている。  このプロジェクトを通して、1)の栽培技術と2)のバイオエネルギー生産技術を小規模ながら実証でき、当初の目的を果たすことができました。ナタネ栽培、バイオエネルギー生産および裏作での作物栽培によって、住民の内部被曝を防ぎ、さらに農業を再生できる可能性は十分にあると考えます。今後は、大規模化による実証が課題となりますが、ナロジチ地区において、州行政や地区行政が中心になって大規模化の検討が開始されました。

その他/備考


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