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埋め立ての危機に瀕する上関原発予定地および周辺海域の生物多様性の立証



グループ名 長島の自然を守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 高島 美登里 さん
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助成金額 70万円

研究の概要

2010年12月の助成申込書から
 上関原発計画は中国電力が2010年9月より海域埋立工事に着手する動きを3度も繰り返すなど非常に緊迫している。祝島を中心とする抗議行動で工事の進捗を遅らせているが、1999年からの10年間の調査成果を踏まえて、日本生態学会などの研究者が“奇跡の海”と称賛する生物多様性のホット・スポットが存続の危機に直面している。  2011年度は特にウミスズメ類について世界最新手法を確立したチームと連携して調査を行い、ウミスズメ類の生息に上関海域の果たす役割を解明する。また新たな分野として魚類の生息状況を把握し、漁業資源・生物の餌資源としての価値を解明する。  これらの結果を踏まえ、生息地の自然環境の変化・採餌条件の悪化・繁殖地の消滅や繁殖環境の悪化など公有水面埋立が長島および周辺の生物多様性に与えるダメージの科学的検証をする。また「上関自然の権利訴訟」で祝島を調査区域に加え、環境アセスメントの不備を追及する戦力に役立てる。  また、2011年4月の国際シンポジウムを皮切りに国際的に上関の生物多様性の価値を広める。国際シンポジウムを「上関をユネスコの自然・文化遺産に!!」する運動の出発点として位置付け、そのための具体的な学習・宣伝活動を行う。  さらに「祝島100パーセントエネルギー構想」の一環としてエコ事業に着手する。専門家をガイドにしたエコツアーを企画して地域活性化の第一段階と位置付ける。自然と共生できる町作りへの具体的提案未利用海藻や魚類の商品開発などの提言を研究者と共に行う。

中間報告

2011年10月の中間報告書から
 上関原発計画をめぐっては、2011.2月末には埋立て工事区域の一部(放水口側)に中国電力が捨石を投入するなど緊迫した情勢であったが、3月11日の福島第一原発事故を受け、中国電力は3月16日に県知事の要請で埋め立て工事を中断した。また原子炉設置許可申請の手続き不備のために行っていた追加調査(発破作業)も6月26日に中止した。上関町は町長でさえ「当面、原発財源が交付されない場合の町政運営」を想定せざるを得なくなっているが、世論の沈静化を狙っての原発建設の再開や原発に変わる大規模開発の浮上も懸念され予断を許さない。  長島の自然を守る会は、こうした情勢を踏まえ「原発に頼らず、自然と共生する町作り」の実現として以下の4点に力を注いでいる。第一は「奇跡の海」と呼ばれる貴重な生態系のよりいっそうの解明である。特にカンムリウミスズメとオオミズナギドリの新たな知見蓄積のための調査を集中的に行った。その結果、カンムリウミスズメの繁殖確認はできなかったが、家族群や換羽期の個体確認をした。オオミズナギドリについては、2009年に予定地から5kmの宇和島で繁殖を初確認したが、2010年からの継続調査で、繁殖阻害要因としてネズミの被害が予測されたので、駆除作業を試験的に行った。2011年の現時点では繁殖率が格段にアップしている。第二にこのホット・スポットを特別に保護する世論作り(海洋保護区やユネスコの生物圏リザーブなど)の第一歩として4月10日に国際シンポジウムを開催した。反響は大きく、今後、国際的な海鳥グループでの発表や日本政府への要望書などが準備されている。第三はエコツアーなど上関の自然の普及活動である。2011年4月〜9月の視察ツアー参加者は約300人にのぼった。会としてツアー船を購入したので、定期的な「上関自然満喫ツアー」を企画する予定である。第四にフトモズクなど海藻生育調査で、商品化に十分なストック量を確認したので、2012年春からの販売を目指している。

結果・成果

完了報告より
 2011年度はカンムリウミスズメ調査(計9回)、オオミズナギドリ調査(計10回)、カラスバト調査(計3回)、海藻調査(計2回)、植生調査(計2回)を実施し、次のような成果を得ました。 1.調査結果から得た新たな確認事項 (1)カンムリウミスズメ調査― カンムリウミスズメの繁殖確認はできなかったが、家族群や換羽期の個体を確認した。中国電力の追加調査結果と比較して、その精度の違いが歴然としており、今後、申し入れ等で追及していく。 (2)オオミズナギドリ調査― オオミズナギドリについて2010年からの継続調査で育雛期の親鳥の採餌域が宇和島から半径50km圏内であることを確認した。これは他の外洋(太平洋や日本海)島嶼部繁殖地の親鳥の行動域が600〜1200kmであるのと比較して極端に狭く、現時点では世界で最小の採餌域であることが明らかになった(渡辺伸一氏発表)。また繁殖阻害要因となっているネズミの駆除作業を行い、繁殖率が格段にアップしている(飯田智彦氏発表)。 (3)カラスバト調査― 予定地から5.8kmの宇和島において、国の天然記念物であるカラスバトの繁殖を確認した。これは瀬戸内海で3番目の確認例である。カラスバトは国の天然記念物、IUCN(国際自然保護連合)指定準絶滅危惧種、環境省レッドデータブック準絶滅危惧種、山口県レッドデータブック絶滅危惧II類であり、宇和島の繁殖確認は大変重要である。 2.国内・国際世論の拡がり  日本自然保護協会から2012年度の沼田眞賞を授賞した。現地視察・各地での講演依頼、PSG(Pacinc Seabird Group:太平洋海鳥グループ)総会での発表や、PSGとJSG(Japan Seabird Group:日本海鳥グループ)による政府への要望書提出などを通じて、国内外で上関の生物多様性の豊かさが認識されつつある。 3.普及活動  普及活動として国際シンポジウム(2011年4月10日広島)、海外発表(2012年2月11日ハワイ)、国内他地域での講演(計14回)を行った。観察会(計10回)や現地視察の受け入れ(計15回)も行い、雑誌等への寄稿も行った。 4.今後の展望と課題 (1)海鳥調査― カンムリウミスズメの繁殖可能性を明らかにするため、海外の研究者との共同研究やオオミズナギドリについてもより広範な研究者との連携で調査内容を拡げ、生態系の解明を進める予定。 (2)カラスバト調査― カラスバトが宇和島以外にも繁殖している可能性が高いので範囲を拡大する。 (3)魚類調査の開始― 長年の課題であった魚類調査を2012年度に実施する予定。 (4)未利用海藻調査と商品化― クロモズクの商品化や未利用海藻調査を行い、町の活性化に寄与する。 (5)福島第一原発事故を受け、上関原発計画を中止させ、上関を世界遺産にする糸口を具体化する。

その他/備考


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