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ビルマ(ミャンマー)における日本の投資・開発援助事業とその現場における地元住民のニーズ、環境社会影響、人権侵害に関する調査研究・提言



グループ名 メコン・ウォッチ 2013年度会計報告[pdf]
代表者氏名 土川 実鳴 さん
URL http://www.mekongwatch.org/
助成金額 40万円

経済特区(2400ヘクタール)のため、収用されることになる水田

経済特区開発のため、水田への灌漑用水の配給が止められ、空っぽのままの水路

ティラワSEZ予定地の元の居住地。家畜を飼育するスペースも十分にある。

フェーズ1地域の住民68世帯の移転先。隣家との間もなく、家畜の飼育や野菜・樹木等の栽培も不可。

研究の概要

2012年12月の助成申込書から
 国際社会の経済制裁が解除され、ビルマ(ミャンマー)への「投資・援助ラッシュ」が始まろうとしています。日本政府も2013年早期の円借款実施を発表し、官民連携でビルマ進出の準備をする中、日本が真っ先に関与を決めた2案件は、地元住民のニーズ、環境社会影響、人権侵害が軽視されたまま、実施されようとしています。  都市ヤンゴンへの電力供給を目的とした「バルーチャウン第2水力発電所補修事業」では、少数民族が数十年にわたり、施設警備のため駐留中の国軍による強制労働や地雷被害等に苦しんできましたが、これらの問題は未解決のまま、補修が行なわれようとしています。  また、「ティラワ経済特別区開発事業」では、長年、地元で生活を続けてきた農民等のニーズや環境社会面の懸念には目もくれず、「開発ありき」の状態で、日本の官民主導による経済特区開発(約2,400 ha)の準備が進行中です。  本調査では、上述2案件に関し、既存の問題の解決と問題の事前回避を目標とした提言活動につながるよう、事業に伴う問題が生まれた/生まれる要因・背景、現地の人権状況、住民の生活状況、住民のニーズ、住民の各事業への懸念等について、ビルマでの情報収集・聞き取りを行ないます。また、同2案件に関する政府機関の文献を検証し、事業に伴う環境社会影響や人権影響に係る問題点等をまとめます。  調査の結果は、ビルマのNGO・住民や日本の市民に共有するとともに、急増するビルマでの開発事業で、地元住民のニーズ、環境社会影響、人権侵害が軽視されぬよう、日本の各政府機関に警鐘を鳴らす材料にしていきます。

中間報告

2013年10月の中間報告から
 国際社会の経済制裁が解除され、ビルマ(ミャンマー)への「投資・援助ラッシュ」が始まる中、日本政府も、2013年早期に約26年ぶりとなる対ビルマ円借款の実施を発表しました。日本の民間企業も政府資金を活用して、着々とビルマ進出を図ろうとしています。しかし、その投資・援助先の住民のニーズ、環境社会影響、人権は軽視されたまま、開発事業が進められている現状は、日本の市民にほとんど伝わっていません。  本調査・提言活動では、主に、2013年5月に日本の首相が経済界のトップと開発予定地を視察し、関連インフラ事業への円借款供与を決めるなど、日本の旗艦プロジェクトとして進められている「ティラワ経済特別区開発事業」について、環境社会・人権問題の事前回避を目的とした活動を進めています。  これまで、同事業で立ち退きを迫られている住民(約900世帯、3800人超)の生活状況や事業に対する懸念、また、住民協議の実施状況等について現地で聞き取りを行ない、その現地調査の結果に基づく意見書等の提出や個別会合を通じ、日本政府に適切な対応(主に住民協議プロセスや情報公開の改善)を求めてきました。また、事業の動向・環境社会影響や住民の権利について、住民自身がよりよく知り、今後の活動を検討できるよう、住民への情報提供の機会も現地で設けてきました。  同事業は、今年末から来年初めにかけての着工が見込まれ、一部住民の立ち退きが早々にも行なわれる予定であることから、今後も、現場の状況を注視しながら、適宜、現地調査・提言活動を行なっていく予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 ビルマの最大都市ヤンゴン近郊で約2400ha を経済特別区として造成する「ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業」のフェーズ1400ha分)は、2013年11月、三菱商事・住友商事・丸紅など日本企業の関わる共同企業体が、土地造成作業を開始しました。国際協力機構(JICA)も2014年4月、政府開発援助(ODA)の民間向け「海外投融資」制度で、私たち日本の税金を使って同事業への出資を決めています。本調査・提言活動は、この事業による、環境社会・人権問題の事前回避を目的としています。  この事業にともなう立ち退き問題が明るみに出たのは、2013年1月末でした。約1000家族の住民らの家に突然、「14日以内に立ち退かなければ、30日拘禁する」という書面が貼られたときです。このときは、事態を問題視した住民とNGOの働きかけで、強制移転という最悪の事態を回避することができましたが、その後、「協議」や「合意」手続きを経て、68家族(約300人)が移転を強いられました。現在、ビルマ政府当局が用意した移転地では、各家族に割り当てられた区画が116m2と狭いことに加え、同区画の間にスペースはなく、まさに家が密集した状態です。以前は、日雇いの仕事をしながら、家の周辺で野菜等を作ってきた家族は少なくありませ。また、家の周辺で家畜の飼育も可能でしたが、現在は、そうしたことは一切できなくなっています。移転地に用意された井戸等の水は泥や藻が混ざっており、飲料用には適しません。  このような問題は、そもそも、移転が始まる前にしっかりとした移転・補償措置(住民移転計画書)が策定されなかったことが原因の一つに挙げられます。これまで、住民協議や移転・補償に関する合意取得プロセスのなかで、政府高官・役人により、「土地の補償を求めるのであれば、裁判所に行くように」と一方的な説明がなされたり、また、「署名をしなければ、家をブルドーザーで壊されるだけだ」と合意文書への署名を強要されるなど、人権侵害のケースが確認されています。  私たちは、今後も引き続き、この調査結果をもとに、移転により住民の生活が悪化しないよう、日本政府・JICAに適切な対応を求める提言活動を行っていきます。

その他/備考


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