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玄海原発事故時における自治体の避難計画の実効性の検証



グループ名 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 石丸 初美 さん
URL http://saga-genkai.jimdo.com/
助成金額 40万円

避難先の市町の『過密状態』を示した図。記者会見を開催し、佐賀県知事宛てに質問・要請を行った。

鹿島市との面談の様子

嬉野市との面談の様子

伊万里市民の受入先となっている太良町のホール(566席の固定イス)。

唐津市から鳥栖市まで6万4310人の避難ルートを検証。交差点の問題から、急傾斜の土砂崩れ、橋の崩壊、冬場の道路凍結、ガソリンスタンドが1カ所しかないなど、多くの困難が浮かび上がる。

研究の概要

2013年12月の助成申込書から
 東京電力福島第一原発事故が起きたにもかかわらず、脱原発を願う国民世論と逆行して、政府・電力事業者は原発再稼働を推し進めている。九州電力玄海原発も再稼働へ向けた動きを加速させている。  地方自治体は、原発政策についても、国まかせにせず、独自に検証した上で、住民を守る立場から国に対してものを言っていく必要がある。原発そのものへの賛否を別にしても、原発は「今そこにある」ので、実効性のある避難計画の策定は、喫緊の課題である。  事故時の放射能の拡散を予測し、住民を放射能被曝から守るためにはどういう手立てが必要か具体的に準備しておかなければならない。  佐賀県原子力防災・避難訓練を見学したが、課題山積で、事故が現実のものとなった時に、大混乱は必至である。実効性のある防災・避難計画がなければ、再稼働は絶対に認められない。  佐賀県内全10市10町と、福岡県糸島市と長崎県松浦市の原子力防災・避難計画について以下の点などを明らかにしたい。 <避難計画・訓練の有無、説明会の開催状況、要援護者1人1人の避難計画、避難経路や避難手段、避難方向の判断、責任の所在>  担当者の見解、住民の声を聞きながら、具体的に検証し、また新潟県など他の原発立地地域の事例を検討したり、福島原発事故で避難を強いられた方のお話も聞いたりすることで、住民を被曝から守るために必要なことは何かを提言したい。  調査研究の成果を、1.報告書作成、2.県市町への要請、3.講演会・報告会の開催、4.市民への広報等を通じて社会に還元する。  以上を通じて、自治体にも、住民一人ひとりにも、避難問題から原発について「わがこと」として考えてもらう契機としたい。

中間報告

2014年10月の中間報告から
 玄海原発から30km 圏内(佐賀県・長崎県・福岡県で合計約26万人)に入る自治体は避難計画を策定することとされています。避難計画が住民を被ばくから守る実効性あるものとなっているか、私たちは市町の担当者と面談したり、要援護者の現場を見たりすることで、検証することとしました。  佐賀県では玄海町、唐津市、伊万里市の19万人の避難先は県内のその他すべての17市町ですが、私たちは県内全市町に質問を出し面談をしてきました。その結果、“鯑饉入先の施設の床面積は、避難者1人あたり2m2。避難者数が受入先市町の人口の3割や4割、多い所で8割の市町もあり“ぎゅうぎゅう詰め”過密避難状態であること。避難期間の想定なし、避難先との協議なし、スクリーニングの場所・方法を知らない、避難方向・避難場所は1つだけ、30km圏外の地域からの避難は想定しないなど、机上の空論であること。H鯑饉綣圓噺世錣譴襦藩弃膰郤圈1万7000人を切り捨てるような計画であること──などが判明しました。この事実を、メディアに大きく報道してもらうとともに、座談会や講演会の開催、ネットでの情報拡散等で広く市民に知らせる活動を展開してきました。  さらに、交通工学の専門家である上岡直見氏の講演会開催、病院・福祉施設への聞き取り調査、再稼働が迫る川内原発周辺市町での取り組みへの参加、全国団体との研修・交流等を通じて、原発避難計画では住民が放射能被ばくを避けることはできないことを、具体的な事実で明らかにしてきました。  引きつづき、「原発避難計画」を現場の視点から検証していきます。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 佐賀県内(10市10町)の玄海原発30km圏内で避難元となる3市町(玄海町、唐津市、伊万里市)と避難受入先となる17市町の避難計画についてアンケート・聞き取り調査をすることから始め、福祉施設、病院、学校等への聞き取り、避難訓練見学など、現場で見聞することを重視しました。その結果、調査を始める矢先の2014年4月、当時の古川佐賀県知事が「ワーク(機能)するだろう」と会見で述べた避難計画について、以下のような問題点が明らかになりました。 (1)避難先は“ぎゅうぎゅう詰め”の過密状態となっていました。避難元市町の各地区の避難者数と、受入市町の人口と比べてみたところ、多くの市町で人口の3割から4割を受け入れることになっていました。太良町は人口9838人の町にその約8割にあたる7644人もの伊万里市民が避難してきます。防災担当職員さえこの事実を知らないことに、私たちはさらに驚きました。施設の収容可能人数は1人2m²という面積から算出したといいます。面積の中にイスが固定されたホールや階段が入っているケース、避難時の共有スペースを考慮していないケースが多々ありました。 (2)避難元市町が「具体的なことは受入れ市町でやっていただく」と言う一方で、受入先は「私たちは場所の提供だけで、あとは避難元と県がやること」と言うなど、避難誘導、駐車場確保、スクリーニング、要援護者受入れ、避難期間などについてほとんど何も把握していないことも分かりました。 (3)避難元から避難先まで避難ルートを実地検証しましたが、道路渋滞、山間部での土砂災害、雪害による通行禁止、地震等による橋脚の落下、ガソリンスタンドの少なさなど、心配材料が山ほどありました。 (4)放射能は風向きなどによって飛散しますが、避難先・ルートが1 つだけだったり、30km 圏外の地域や市町は避難計画をつくらなかったりというのが実情でした。  そのほか、(5)手抜きのスクリーニング、(6)“ 避難弱者”要援護者切り捨て、(7)原子力災害対策特別措置法において「危険区域に避難施設を設定してはならない」とされた避難所が自然災害等の危険区域にあるなど福島原発事故の現実を踏まえていない避難計画の実態が次々と明らかになりました。  また、行動の際にメディアに必ず情報を流すようにしたところ、住民の暮らしに直結する問題として、積極的に報道されました。市町議員とも連携して調査結果等を共有し、議会質問で避難計画問題が取り上げられました。これらを通じて、伊万里市の避難先が99%見直されることにつながるなど、「避難計画は実効性なし」という世論を高めることができました。

その他/備考


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