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地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求



グループ名 NPO法人 化学物質による大気汚染から健康を守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 森上 展安 さん
URL http://www.npovoc.org/
助成金額 50万円

簡易分析器による測定の様子。

産廃処理場周辺でのケムキーの観測記録。15分ごとの時間の経過にあわせて、対象物質の反応がテープに丸印で記録される。右がイソシアネート。左がシアン化水素の反応。

研究の概要

2013年12月の助成申込書から
 1990年代の終わりごろから重大な被害が広範な街々で現れてきた新しい大気汚染物質による健康影響汚染物質がある。臭いもなく、非意図的に生成する場合もあり、住民の身近な環境からひそかに攻撃している。外国で開発され、分析で検出することも困難であったため、日本ではその存在が無視されて対策は放置されているので、用途と使用量は急増し、潜在的だった健康被害はすでに重症被害者が多発し原因不明のまま立証を求めている。  当会では、かねてから揮発性有機化合物による空気汚染の実態を、「クロマトグラフ型VOCモニター」で調査してきたが、新たに「比色式有毒化合物モニター」を輸入し、また最も問題な「イソシアネート専用の輸入サンプラーでの精密分析」も試み始めた。これら新しい技術を活用して、この問題に総合的な調査研究を計画した。  具体的には、フィールド調査と発生実験研究で、新建築・土木関係で多量に使われるようになった合成樹脂材料から、現場作業中の原材料および完成材料からの非意図的生成(放射線・日射・暖房、機械的作業など)から、空気中に発生する揮発性有機化合物(イソシアネート、ヒドラジン、シアンなど)について、温度などの環境要因との関係を見ながら居住環境汚染の実態を把握する。これにより、新建築・土木材料起源の揮発性有機化合物によって、揮発性有機化合物が関与する疾病を抑制する対策に役立てたい。

中間報告

2014年10月の中間報告から
 最近の大気環境・空気環境には、従来は存在しなかった揮発性並びに反揮発性の有機化合物で毒性の強いものがあります。それらの発生は、製造・応用工程、使用現場、および廃棄物処理工程の全体にわたっています。種類も多様ですが、名付けるとすれば、合成樹脂系低分子とでも呼ぶことができ、なかでもシアン系やイソシアネート系の含窒素系有機化合物と有機塩素化合物の毒性が強いです。アルデヒド・ケトン類でも根幹に不飽和部を含むものは毒性が強いです。  身近な環境で、そうした毒性が強いものが発生しているので、普通の生活が不可能になった市民からの悲痛な訴えが次々と寄せられました。しかし国内ではそれらについての認識は乏しく、欧米のような規制がないばかりか、分析調査法さえも普及していません。  当会では、相談があった被害者の状況を把握して相談に乗り、また、国際的に40 年の歴史を持つ簡易分析器を輸入して汚染物質の判定をし、さらに専門的な知識を持つ会員と機関の協力を得て詳細分析を加えるなどの調査を行い始めました。調査を始めたばかりではありますが、環境を汚しているはずはないとされてきたイソシアネート類( 特段に希薄でも発症率がきわめて高い) が、当会が予測していた場所では、ほとんど百発百中で検出されました。  被害の救済を求めて司法に訴えている市民は少なくありませんが、これまでの多くの場合、具体的な原因物質として、有害性は強くないが検出されやすい普通の化合物を指摘したために敗訴した例が多いです。真の原因物質を確認することで正確な対策が確立されることを目指して動き始めたところです。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 最近の大気環境・空気環境には、従来は存在しなかった揮発性並びに半揮発性の有機化合物で毒性の強いものが広く見出されています。化学物質過敏症患者らは、特定の場所や特定の物品のそばで不具合の再発を繰り返すことが多く、生活環境空気中の何らかの化学物質が体調に深く影響していると考えざるを得ません。しかし、環境空気による不具合を感じた人が汚染物質の分析調査を専門家に依頼しても、不調の原因と疑われる汚染物質を特定できない場合がほとんどであり、化学物質被害の存在が、医学的にも周囲に信じてもらえず、被害者が社会から疎外されることすら稀ではありません。  これらの原因物質の特定及び汚染実態の解明のため、従来から取り組んでいる簡易クロマトグラフ型VOC(揮発性有機化合物)モニターによる分析及び、新たに導入した毒性化合物簡易分析器「ケムキー」によるイソシアネート汚染の調査を実施しました。  野田市の産業廃棄物処理場から50mほどの民家での調査では、ほぼ継続してイソシアネートとシアン化水素が検出されました。当会が奨めた方法で市が実施した精密分析では、数種の有機シアン化合物と百種を超える含窒素有機化合物が検出され、当初の簡易分析で検出されたシアン化水素と関連あるものと考えられました。この周辺では、化学物質過敏症で中枢神経・自律神経機能障害と診断された人が多いのですが、その中には甲状腺障害を併発した人や心機能障害、I型糖尿病もあり、単なる化学物質過敏症ではなく、検出された有害VOCによる深刻な健康被害であると考えられます。  茨城県の道路工事で生じた被害について、調査資料で説明しながら陳情したところ、翌年からほとんど無毒な材料に変更されました。また、つくば市の住宅団地近くでの産廃破砕工場新設問題では、発生するVOCの勉強会開催で計画が撤回されました。  大気汚染による健康被害の救済を求めて司法に訴えた各種の事例では、具体的な原因物質として、検出されにくい強毒性の化合物に気づかず、普通にもよくあるトルエン、キシレンなどのみを名指ししたために敗訴した例が少なくありません。  当研究のような市民が実施できる簡易な有害化学物質の分析方法とその結果を広く知らせ、健康被害の原因となっている有害物が検出され、明示されるようになれば、医学的にも適切な診断と対処ができるようになると考えています。

その他/備考


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