上関の自然を守る会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] 研究成果発表会配布資料[pdf] |
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高島 美登里 さん | ||
http://kaminosekimamoru.jimdo.com/ | ||
50万円 |
2014年6月の稚魚・プランクトン調査の様子。
2013年12月の助成申込書から
上関原発計画をめぐる情勢は福島第一原発事故後、埋立工事は中止している。しかし中国電力が2012/10/5に提出した延長申請を山口県知事は国のエネルギー計画が不確定であるとして2014年4月まで判断を先送りしている。国のエネルギー基本計画(原案)で原発が重要なベース電源であるとの位置付けがなされ、埋立再開や建設への動きも予断を許さない。以下の調査活動で温排水が生態系に与える影響など新しい分野で上関原発中止を訴える科学的論拠を構築する。
1)上関周辺海域はカンムリウミスズメの世界で唯一の周年生息域である。今後、内海繁殖地の可能性/海水温やプランクトン/魚類調査による温排水の影響予測などを行う。
2)宇和島のオオミズナギドリは親鳥の採餌域が世界最小であることなど個体群の特異性を立証してきた。一方、繁殖失敗/親鳥の死亡率の高さなど宇和島個体群の維持が危惧されるので、原因を究明するため体内蓄積物質などの化学分析を行う。
調査結果に基付き中国電力に対し環境アセスメントの不備を追及し申し入れなどを行う。
また、上関原発の不当性を訴える普及活動を行う(1)DVD「奇跡の海と上関原発」への反映(2)2014年8月に山口市/京都府/東京都で海外のパネリストを招き、国際シンポジウムを開催するので調査結果を反映する。(3)2014年度のユネスコの未来遺産登録を目指す。
2014年10月の中間報告から
1.カンムリウミスズメ生態調査
上関周辺はカンムリウミスズメ( 国の天然物/ 環境省絶滅危惧種)の世界で唯一の通年生息域であるので、繁殖期および通年の生態調査を行っています。4月〜9月末まで、のべ16日間の調査で計19羽のカンムリウミスズメを確認しました(4/12(0)、4/17(2)、4/21(0)、4/22(0)、4/23(0)、4/24(0)、4/25(2)、5/3(0)、5/5(0)、5/7(2)、5/14(4)、5/18(5)、6/8(3)、7/21(0)、9/14(1)、9/28(0)、カッコ内は確認した個体数)。このうち、6月8日に確認した3羽のうち1羽が幼鳥でした。現在、他の研究チームによって、カンムリウミスズメ繁殖地の枇榔島/幸島/烏帽子島において、データロガー(小型の自動記録装置)装着による通年の追跡調査が行われており、最新結果では、これらの繁殖地のカンムリウミスズメは、巣立ち後、太平洋や日本海沿岸、沿海州沿岸を移動するルートをたどっているといいます。このデータは、国内外の研究者が指摘しているように、上関海域において既知繁殖地のカンムリウミスズメとは別の個体群が存在している可能性を裏付けるものです。上関近海での繁殖期および通年生息調査の重要性が高まっています。
2.稚魚/プランクトン調査
上関海域は、原発予定地から5.8km にある宇和島のオオミズナギドリ(山口県準絶滅危惧種)の子育て中の親の採餌域(餌を採るために飛ぶ範囲)が世界最小であることを、守る会と研究者の共同調査で確認しています。もし、原発が建設されれば温排水の影響による海洋環境の激変が予想されるので、その基礎調査として、エサ資源である稚魚/プランクトン調査を開始しました。調査は6 月25 日、8 月29 日にこれま
でカンムリウミスズメが多く確認された5 定点で行いました。2回の調査地点近海をオオミズナギドリの群れが飛翔し、彼らのエサ資源としても重要地点であることを物語っていました。8月30日には向井宏氏による初歩的なソーティング研修も行いました。今後スタッフの能力向上と費用軽減効果が期待されます。
3.シンポジウムでの発表
これまでの成果をまとめ、国際シンポジウム「カンムリウミスズメと上関の生物多様性〜奇跡の海を未来の子どもたちへ〜」を開催しました。ウミスズメ類研究の第一人者であるKim Nelson氏、上関で調査に携わっているDarrell Whitworth氏および武石全慈氏、瀬戸内海で唯一の繁殖地である宇和島でオオミズナギドリの個体群研究をする渡辺伸一氏をパネリストに迎え、8/16山口市(参加者250名)、8/17京都市(200名)、8/18東京都(150名)、8/23(世界鳥学会)で開催しました。
完了報告・研究成果発表会資料より
●上関原発計画をめぐる情勢
福島第一原発事故後、上関原発計画の埋め立て工事は中断しています。しかし中国電力が2012 年10月5日に提出した埋め立て免許の延長申請を、山口県知事は国のエネルギー計画が不確定であるとして判断を先送りしています。国のエネルギー基本計画政府案では原発を「重要なベースロード電源」と位置付けており、埋め立て再開や建設への動きは予断を許さない状況です。日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会の研究者が“奇跡の海”と称賛する生物多様性のホット・スポットは、依然、存続の危機にあり、希少海鳥の生態解明や稚魚&プランクトン調査で上関原発中止を訴える科学的論拠を構築するとともに、原発に頼らず自然を活かした町作りに貢献することを目指しています。
●2014年度の調査研究の実績と成果
(1)カンムリウミスズメ調査:スポットライトサーベイ調査2回、ロッククライミング調査2 回、海上センサス24回を実施しました。2014年6月の調査で幼鳥を確認、9月の調査では換羽期の個体を確認しました。スポットライト/ロッククライミング調査で繁殖の確認を目指しましたが、確認はできませんでした。研究者からは、これまでの調査地以外の未知の繁殖地が上関周辺に存在する可能性も示唆されています。
(2)アマツバメ調査:繁殖確認調査2回を実施しました。ハンドウ島においてアマツバメ(山口県のレッドリストで準絶滅危惧種)の繁殖を確認しました。山口県では、叶島についで2例目です。
(3)オオミズナギドリ調査:営巣調査2回、繁殖期調査6回を実施しました。2010〜2014年までの繁殖状況を分析した結果、巣立つ雛の割合(繁殖成功率)が他地域に比べ著しく低いことが分かってきましたが、原因がわかっていません。今年度は、親鳥の帰巣頻度が繁殖成功率と関係があるかを検討しましたが、帰巣頻度との関係は確認できませんでした。周辺環境の餌資源の分布や繁殖地での雛の捕食など他の原因が大きいのではないかと考えています。
(4)プランクトン・稚魚調査:プランクトンネットによる曳網調査4回を実施しました。上関周辺で5カ所の観測点を定めて、稚魚・プランクトンの調査を行い、2014年6月/8月/10月の調査まで同定が終わっています。5地点の中では、祝島周辺の2地点で多くの稚魚が採集されており、祝島周辺の海の高い生物多様性と生物生産性が確認されました。