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ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築可能性に関する研究



グループ名 研究成果発表会配布資料[pdf]
2014年度会計報告[pdf]
代表者氏名 手塚 智子 さん
URL
助成金額 50万円

聞き取りを行った別府電化農業協同組合の別府発電所(鳥取市用瀬、1954年11月発電開始)

研究の概要

2013年12月の助成申込書から
 東京電力・福島第一原発事故を契機に、従来の大規模集約型エネルギーシステムの問題点が露呈し、変革を求める声は根強い。そのあるべき姿のひとつが、分散型の再生可能エネルギーを軸とした、民主的で地方分権的なボトムアップ型のエネルギーシステムと言える。
 昨年7月の再生可能エネルギー法施行を契機に、ボトムアップ型の多彩な再エネ事業が続々と生まれ、これまで大手資本に占有されていた発電事業の一角が、「ご当地電力」などの市民・地域の事業体により共有化されつつある。これら発電事業者のネットワーク化や、エネルギー生協、エネルギー公社等の設立を模索する動きもあり、2016年の電力小売全面自由化に向けて、市民・地域主導の電力小売事業の具体化が期待される。
 一方で、こうした取り組みの推進に向けて、問題は山積している。現行の再生可能エネルギー法は制度設計が十分ではなく、政府の電力システム改革のデザインは不完全で、発送電分離も不十分であり、このままでは自由化後に電力業界の寡占化と新規参入した電力小売事業体の大量廃業を招いたドイツの二の舞になる危険性が懸念される。
 エネルギー転換を揺るぎないものにするためには、望ましい制度設計を働きかけると同時に、創エネルギーおよび小売事業への市民・地域の参加をさらに進め、エネルギー供給システムに対する決定権を市民・地域の手に取り戻す“エネルギー自治”が求められる。近年ドイツではエネルギー供給網の再公営化が著しく、日本でのエネルギー供給分権化の参考になる。“エネルギー自治”社会へと舵を切ることは、さまざまな要素が結びついており、地域での合意を得ていくことが重要だ。そのためにも“エネルギー自治”が、地域に価値を創出し、お金・地域資源・意思決定の流れをもボトムアップ型に変え、地域固有の持続可能な社会づくりにつながるなどの効果の見える化が役に立つ。
 大正時代に全国に800を数えた電燈会社は、戦時中に電力が国家管理される過程で大部分が姿を消していった。地域で地域所有のエネルギー事業を再建することは、化石燃料にも原子力にも依存しない、平和で持続可能な自立した地域と、安全安心の疲弊しない暮らしの実現に向けた一歩でもある。

中間報告

2014年10月の中間報告から
 民主的で地方分権的なエネルギーシステムの構築を日本で推進するには、(1)エネルギー事業の担い手のさらなる多様化、(2)エネルギーシステムの上流から下流まで(電力では発電・送電・配電・小売)の分権化に加え、(1)と(2)のインセンティブとなる(3)“エネルギー自治”の効果(メリット)の見える化、が重要です。
 本調査研究では、“エネルギー自治”によって地域にどのようなメリットが生まれ、そのことでどのように地域固有の持続可能な地域づくり、未来の選択がなされているかを明らかにし、地域のエネルギー政策や運動につなげたいと考えています。
“エネルギー自治”の実例として、戦前の日本での市町村営電気事業や住民出資の電気利用組合の今日的意義は大きく、多大な示唆を受けています。戦後には、主に農山村地域で住民が小水力発電を営み、維持管理の労苦を分かち合いながら売電収入を地域の営みに循環させている電化農協や、島内で住民が電力供給を担う屋久島の事例があり、多くのヒントを得ています。一方、ドイツでは、数年来、エネルギー供給(電力では特に配電・小売)事業の再地域化が全土で進行しています。その主な主体は都市公社や自治体出資の事業体であり、住民出資による協同組合が運営するケースや事業参画するケースなどがみられ、大規模システムから分散型システムへの移行を自ら進めています。
 以上を調べる中で見えてきたのは、“エネルギー自治”の最大のメリットは地域固有の持続可能な社会づくりに資する点であり、そのために有効な、3つの共通項が整理されつつあります。それは、(1)“エネルギー自治”のメリットの再分配が地域で民主的に行われること、(2)持続的な利害が地域で共有されていること、これらにより、(3)土地を含む自然資源の持続可能な利用とそのための意思決定が志向されていることです。
 6月に訪れた鳥取県東部の電化農協の取り組み、9月に訪れた徳島で進む、地域の主体が再生可能エネルギー事業の当事者となり地域の未来を主体的に選択する姿などに、これらを見出すことができました。日本ですすむ地域主導型の再エネ事業に関して、この共通項を検証しながら、先進事例のノウハウや、促進するツール、課題の整理をすすめていきます。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 ボトムアップ型のエネルギーシステムの構築には、(1)エネルギー事業の担い手のさらなる多様化、(2)エネルギーシステムの上流から下流まで(電力では発(送)・配電・小売)の分権化、(3)エネルギー自治 の効果(メリット)の見える化が求められます。本研修では、特に(3)について調査を行い、エネルギー自治が地域経済や合意形成の点からも、地域固有の持続可能な社会づくりに資することを分かりやすく伝えるツールを調べ、地域のエネルギー政策やエネルギー自治の推進に役立てることを目的としました。

【日本】再生可能エネルギー法を追い風に、市民や地域主導による発電事業が活発に行われはじめています。2014年10月には、金沢で開催された「市民・地域共同発電所全国フォーラム2014」に参加し、多様な先進事例を知ることができました。
 今回で第8回目を数える全国フォーラムでは、はじめて自治体(金沢市)が共催団体に名を連ね、フォーラムの運営を担いました。再生可能エネルギー事業を通じて、地域や自治体が主体的にエネルギーに関わることが可能となり、その社会的な意義を共有する輪が広がりつつあることを実感する会議でした。また、鳥取県東部で60年以上つづく別府電化農業協同組合の取り組み、(一般社団)徳島地域エネルギーの全県で展開する取り組みは、エネルギーの自治を通じた持続可能な地域づくりの実践であり、多くの示唆を得ました。

【ドイツ】導入された再エネ発電設備の約半分を市民や地域・農家などが所有し、発電事業の分権化が進んでいます。一方、2014年夏に行われた再エネ法の5度目の大改正は、洋上風力や大規模事業者には有利に、地域密着型の小規模な事業体には不利に働き、事業者の多様性切り捨てにつながると懸念され、非難の声も上がっています。その中で、公営事業体(都市公社等)は、エネルギー自治を通した持続可能な地域づくりの鍵を握っています。エネルギーの上流から下流までの事業主体となることができ、地域経済の好循環を生み、エネルギー自治の効果を可視化できること、多様な主体の合意と参加を促し、戦略的に地域に変化を起こすことができる点がその理由です。そこで、4月に「公営事業体と再生可能エネルギー活用」をテーマとする会議に参加しました。当事者による最新の議論やモデルとなる自治体の動向を聞き、さまざまな示唆をえました。また、市民電力協同組合(地域密着型の発電協同組合のネットワークによる小売事業体)、ヴッパタール研究所(*)などを訪問し、聞きとりを行いました。
 日本は、再エネと電力システム改革をめぐって厳しい状況にありますが、川上と川下で地域と市民がエネルギーの当事者となり、エネルギーの自治と分権化を足元から実現することで、持続可能な地域づくりが可能になること、そのためにはあらゆるステークホルダーが連携し必要な制度設計を求め、世論を喚起することが重要であることを積極的に発信し、鳥取でも取り組みを進めていきたいと思います。

(*)環境先進国ドイツを代表する、気候変動、環境、エネルギー問題の世界的なシンクタンク。

その他/備考


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