高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


アグリビジネスによる土地収奪に関するアフリカ小農主体の国際共同調査研究 -モザンビーク北部を中心事例として-



グループ名 モザンビーク開発を考える市民グループ 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 大林 稔 さん
URL http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/
助成金額 70万円

近くを流れる河川開発の影響や土地収奪の状況、現状の生産状況等についての聞き取り。プロサバンナ事業対象地ナンプーラ州の対象郡内コミュニティにて

プロサバンナ事業対象地ニアサ州の対象郡内にて企業との契約栽培を行っていた農民から被害状況ともともとの生産状況等について、調査メンバーでもある現地市民社会メンバーと聞き取りを行っている様子

海外アグリビジネス企業により収奪された土地に立つ住民。現在企業により大豆が植えられている

公聴会の様子。UNAC下部組織が呼びかけて小農が数多く参加し、発言したMutualiでは発言が抑圧される

研究の概要

2014年12月の助成申込書から
 本研究は、2008年の穀物の国際価格高騰以来、「企業による大規模な農業による穀物生産こそが世界の飢餓を救う」との主張に基づいて世界で急速に進められているアグリビジネスによる土地収奪(ランドグラブ)について、持続可能なコミュニティ発展の視点から、アフリカと日本の当事者・研究者・市民社会が共同で取り組むことにより、当事者である地域の小農の調査提言能力の向上を通じた政策転換を実現するものである。中心事例として、アフリカ2位、世界5位の土地面積が取引の対象とされるモザンビーク(特に土地収奪が急増する北部地域)を取り上げ、現地調査による実態把握を行い、その成果を現地・日本の内外で広く社会に還元し、政策への反映を試みる。  モザンビーク北部地域は、豊富な天然ガスや石炭・肥沃な土地の存在から、近年急速に日本を含む世界の官民の注目を集め、本年1月の安倍首相の訪問時には700億円の援助が約束された。これを受けて、現在日本企業による鉱山・農業投資やアグリビジネスの進出を当て込んだインフラ整備などが官民連携によって進められている。  本研究グループは、2012年来2年にわたり、同国の農民・市民社会組織と共に、同国北部地域における日本の官民の開発事業について調査研究・政策提言活動を行ってきており、本研究はそれを現地の人びとの権利擁護とさらなる発展のため深化させることを企図して実施される。

中間報告

2015年10月の中間報告から
 本調査研究は、アグリビジネスによる土地収奪(ランドグラブ)に関する日本国内での研究蓄積の不足を乗り越えるため、日本・モザンビークの研究者と市民・当事者が協働して、(1)現地調査に基づき、(2)その成果を政府・援助者・企業・研究者らを含む各層に広く還元し、(3)政策転換を志向するものとして計画されました。また、現地の小農らを「援助/研究の対象」「収奪の犠牲者」として捉えるのではなく、(4)地域の発展と調査研究に基づく政策提言プロセスの当事者/主体として位置づけ直し、これを研究の中で実践することで活動の持続性を確保する一方、日本社会にみられる視座の転換を試みています。  具体的事例として、アフリカ・モザンビーク北部における「ナカラ回廊経済開発」と、同じ地域を対象とした日本・ブラジル・モザンビークによる農村開発事業「プロサバンナ」を取り上げ、2015年4月より調査研究活動を行ってきました。モザンビーク北部地域は、豊富な天然ガスや石炭・肥沃な土地の存在から、近年急速に日本を含む世界の官民の注目を集め、2015年1月の安倍首相の訪問時には700億円の援助が約束されました。これを受けて、現在日本企業による鉱山・農業投資やアグリビジネスの進出を当て込んだインフラ整備などが官民連携によって進められています。  計画では共同調査は本年夏に予定されていましたが、現地からの連絡で、プロサバンナ事業による「ナカラ回廊農業開発マスタープラン」の素案が突然発表され、4月20日から農村部で公聴会が開催されることとなったため、日程を前倒ししたいとの希望が出されました。そのため、予定を変更し、4月中に共同調査を実施しました。すでに成果の一部は現地並びに本研究メンバーと共有し分析をした上で、報告会や声明等の形で発表しています。その後、共同調査の関係者やパートナーが6月と7月に相次いで来日する機会を得たため、様々なイベントを通して、これまでの成果をより広い層の人びとに発信するなどしています。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 本研究では、世界7位の土地面積が取引の対象とされるモザンビークの北部地域に焦点をあて、現地小農組織や市民社会組織とともに、アグリビジネスによる土地収奪(ランドグラブ)に関する実態把握調査を行いました。日本政府は、同地域を東西に走る「ナカラ回廊」沿いの地域の開発を「ナカラ経済回廊開発」と銘打ち、官民連携によるインフラ整備やモザンビーク・ブラジルとの三角協力による大規模農業開発事業「プロサバンナ」を2009年より進めてきました。  本研究における共同調査は2015年4月と8月に現地を訪問し、実施しました。4月には、プロサバンナ事業で策定された「ナカラ回廊農業開発マスタープラン」に関する公聴会で参与観察を行いました。8月には、土地収奪の実態と人びとの暮らしへの影響について調査を行いました。その結果、(1)プロサバンナ事業の受益者であるはずの地元小農の公聴会への参加が阻害されたり、「意味ある参加」ができなかったりしたこと、(2)ナカラ経済回廊開発と土地収奪・人権侵害に密接な関係があるといった実態が把握されました。また、小農組織が共同調査を通じて手応えを得て、土地収奪が懸念される地域の小農の組織化を開始しました。  これらの成果については、日本政府やJICAへの直接的な政策提言(共同声明・意見交換会を含む)、メディアに向けた共同記者会見、一般市民の関心喚起のための報告会やソーシャルメディアを使った発信を通じて、広く問題提起を行い、社会に還元しました。また、国際的なレベルでも、共同調査のパートナーである小農組織や市民社会組織とともに共同声明などを発表したほか、国際学会での報告を行いました。これらを通じて、小農組織のエンパワーメントに寄与したほか、政府側よりプロサバンナ事業の改善が約束されました。しかし、現実には小農組織への圧力が増し、事態は懸念される状況にあります。引き続き現地小農・市民社会組織とともに調査を行い、政策転換を目指して活動していきます。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い