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高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける社会的合意形成手法と安全性確認に関する研究



グループ名 原子力資料情報室
代表者氏名 澤井 正子 さん
URL http://www.cnic.jp/
助成金額 60万円

サイト選定委員会の様子。親委員会(公開):7〜8時間の連続審議。インターネット中継、資料、議事録は公開。しかし、作業部会は非公開。

ゴアレーベン環境保護市民イニシアティブを訪問

ドイツの市民廃棄物問題委員会。多くの脱原発、廃棄物関連団体が参加し、3カ月ごとに全国的に会場を移動しながら、自主的に運営されている。事務局は、コンラッドの住民団体が担う

研究の概要

2014年12月の助成申込書から
 原子力発電利用に伴う高レベル放射性廃棄物の処分問題は、原子力発電に対してどのような立場を取るとしても、重要な課題である。2011年3月の福島第一原発のメルトダウン事故を契機として脱原子力を決定したドイツにおいては、さらにその重要性を増していると言える。実際、「脱原子力法」で定められたことは原子力発電所の運転停止時期であり、ドイツの核エネルギー利用によって生み出された高レベル放射性廃棄物の処分については、何も解決していない。  そのためドイツ連立政府は、3/11以前のすべての高レベル放射性廃棄物対策を撤回し、全16州政府及びすべての政党代表の支持を背景に、2013年7月「発熱性放射性廃棄物処分場のサイト選定手続きを定める法」(以下「サイト選定法」)を成立させ、高レベル放射性廃棄物処分場選定のための具体的作業を開始した。(ドイツでは放射性廃棄物を、発熱性放射性廃棄物=高レベル放射性廃棄物と非発熱性放射性廃棄物に分類している。)  この法律では、住民団体や専門家など33名で構成される「高レベル放射性廃棄物処分委員会」(以下「委員会」)を設置し、この委員会が処分場の安全要件、岩石固有の除外条件などのサイト選定基準を2015年末までに提案することが規定されている。  本調査研究では、活動を開始した「委員会」の作業を注視しながら、ドイツの高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける合意形成、科学技術と安全基準取り入れの整合性・合理性、意思決定における透明性・国民の参加様式等、サイト選定に於ける諸側面を検証し、日本の高レベル放射性廃棄物処分場対策と比較検討を行う予定である。  本研究では、社会的合意形成手続き等については主に澤井正子が、処分場の工学的・科学的安全性の問題については、主に上澤千尋が担当する。

中間報告

2015年10月の中間報告から
 ドイツ連立政府は脱原発の決定後、2011年3月11日以前のすべての高レベル放射性廃棄物政策を撤回しました。そして全16の州政府及びすべての国政政党代表の支持を背景に、2013年7月「発熱性放射性廃棄物(= 高レベル放射性廃棄物)処分場のサイト選定手続きを定める法」(以下「サイト選定法」) を成立させ、高レベル放射性廃棄物処分場選定のための新たな枠組みによる作業を開始しました。この法律は、住民団体や専門家など33名で構成される「高レベル放射性廃棄物処分委員会」(以下「委員会」)を設置し、委員会が処分場の安全要件、岩石固有の除外条件などのサイト選定基準を2016年春までに提案することを規定しています。  一方、「委員会」に市民団体として招聘され、その動向が注目されていたゴアレーベンの市民団体とグリーンピースドイツは、「委員会」への参加を拒否しました。その理由は、「サイト選定法」では、新たに選ばれた候補地とゴアレーベンが、その適性を再評価されることになっているためです。  脱原発を決定したドイツにおいてさえも、高レベル放射性廃棄物最終処分場選定をめぐっては、廃棄物問題への基本的な考え方や、候補地選定方法、社会的合意形成手法等に市民団体と政府の間に様々な相違や論争があります。  本調査研究では、活動を開始した「選定委員会」の作業を注視しながら、ドイツの高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける合意形成、科学技術と安全基準取り入れの整合性・合理性、意思決定における透明性・国民の参加様式等、サイト選定における諸側面を検証します。同時に、市民団体側の動きと、市民側からの「選定委員会」への評価等について、調査・検討します。  さらに、高レベル放射性廃棄物サイト候補地が選定され詳細調査が実施されているフィンランドの「オンカロ」での決定過程、岩盤特性と安全性確保の考え方等も調査し、ドイツの例と比較検討するために、現地調査を実施します。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 2022年までの脱原発を決定したドイツでは、放射性廃棄物対策、特に高レベル放射性廃棄物の処分場選定が大きな課題として残ることになりました。連邦政府は、2013年7月に「発熱性放射性廃棄物(=高レベル放射性廃棄物)処分場のサイト選定手続きを定める法」を成立させ、住民団体や専門家など33名で構成される「高レベル放射性廃棄物処分委員会」を設置しました。  しかし、この「法」では、これまで最終処分場の唯一の候補地とされてきたゴアレーベンが候補地として残され、処分地選定を「白地図」の状態に戻すという建前とは矛盾するものとなっています。そのため住民団体側は、当初「委員会」への参加も拒否した経過があります。  本調査研究では、このように、高レベル放射性廃棄物処分場選定における住民との合意形成はどうあるべきか、という問題意識で関係者へのヒアリング、調査等を行っています。廃棄物処分場現地の調査については、世界で唯一の高レベル放射性廃棄物最終処分場であるフィンランドのオンカロの視察や、地下水の流入が確認され放射性廃棄物を全量回収する方針となったドイツの低レベル放射性廃棄物の処分場アッセIIの調査、アッセIIにかわる新たな低レベル放射性廃棄物最終処分場コンラッドの調査などを行いました。またドイツ連邦議会・サイト選定委員会の傍聴、サイト選定委員会副議長のミューラー氏(社民党)や委員のS・コッテイングウール氏(緑の党)へのインタビュー、ゴアレーベンの市民団体役員数名らと意見交換、市民の運動団体が共同で運営している「市民廃棄物問題委員会」の傍聴などを行いました。  2016年6月末には、議会に対し委員会の報告書が提出され、最終処分場の岩盤の条件、除外条件等が示される予定です。ゴアレーベンの市民団体を中心に、委員会への抗議の動きも広がっています。処分場問題選定作業自体への住民団体との合意もないまま、連邦議会はこの報告をもとに、新たな法律を制定し、処分場選定作業を進めると思われます。このままの選定作業の進展は、処分場候補地をめぐる新たな紛争となる可能性が懸念されます。  私たちは、高レベル放射性廃棄物処分委員会の報告とそれに対応する市民の動き、「運動政党」である「緑の党」の対応等、またアッセ、ゴアレーベンで失敗した廃棄物対策への反省が今後どのように活かされるのか、民主的、透明性のある、開かれた処分地選定を実現する手法について、ドイツの事例研究・調査を今後も継続する予定です。

その他/備考


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