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福島原発事故被害からの復興政策の財政分析 -川内村の事例から-



グループ名 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 藤原 遥 さん
URL
助成金額 34万円

川内村に建設中の広大な複合商業施設用地。2015年6月撮影

川内村に完成した災害公営住宅

工業団地の土地造成の様子。国庫補助の割合の高い福島復興加速化交付金が使われている

研究の概要

2014年12月の助成申込書から
 福島県双葉郡川内村は、福島原発事故により自治体ごと避難した9町村のうち、最も早く2012年1月に帰村宣言を出し、4月に行政機能を再開した。「復興のフロントランナー」と呼ばれているが、実際は、復興政策が被害実態と必ずしも一致するものではなく、産業インフラの拡充に傾注しているため、住民の生活再建は遠のいている。  村の復興政策が被害実態と乖離する根底には、国の復興財政制度の問題がある。復興予算の時間的制約および省庁の厳しい査定により、被害実態を重視するよりは、復興事業のスピードと各省庁の条件に合わせることが求められている。そのため、どうしても村行政が主体となり、トップダウン型の施策を実施せざるをえないことになる。時間をかけて住民と議論を行い、住民主体の復興計画を描くことができない状況にある。このように国の復興財政制度が村の復興政策に大きな影響を及ぼしている。  したがって、本調査研究は、川内村の復興政策における問題点を、現地調査を通じて、財政的側面から明らかにすることを目的としている。現地でのヒアリング調査を通じて、復興政策の全体像を把握し、個別の復興事業について計画段階から実施までの経緯および事業内容を詳細に分析するとともに、事業実施にともなう住民への影響を研究する。   本研究の成果は、第1に川内村に還元したいと考えている。これまで申請者が築き上げてきた住民や村行政との関係を生かして、研究成果を発表し、今後の村の地域再生に貢献していきたい。第2に、本研究を通じて国の復興財政制度の問題点を指摘するとともに、代替策を提案したい。そのための学術論文を執筆し、学術誌への投稿、学会での発表を積極的に行っていく予定である。

中間報告

2015年10月の中間報告から
 本研修は、福島県双葉郡川内村の復興政策における問題点を、現地調査を通じて、財政的側面から明らかにすることを目的としています。現地でのヒアリング調査を通じて、復興政策の全体像を把握し、個別の復興事業について計画段階から実施までの経緯および事業内容を詳細に分析するとともに、事業実施にともなう住民の生活への影響を研究しています。川内村は、自治体ごと避難を余儀なくされた福島県9町村の中で最も早く帰村宣言を出し、帰還に向けて復興事業に取り組んできたことから「復興のフロントランナー」と呼ばれています。しかし、実際は、復興政策が被害実態と必ずしも対応するものとなっておらず、産業インフラの拡充に傾注しているため、住民の生活再建は遠のいています。その根底には、国の復興財政制度の問題があります。復興予算の時間的制約および省庁の厳しい査定により、被害実態を重視するよりは、復興事業のスピードと各省庁の条件に合わせることが求められています。そのため、どうしても村行政が主体となり、トップダウン型の施策を実施せざるをえないことになります。時間をかけて住民と議論を行い、住民主体の復興計画を描くことができない状況が生まれています。復興政策の先頭を走る川内村の実態を財政の側面から明らかにすることは、原発事故被災地域が今後住民の生活再建を基軸とした地域再生を行うための政策的課題を提示することに繋がると考えています。  2015年4月-8月の間に4回現地調査を行いました。復興事業の計画から実施までの政策過程と、その具体的な財源と支出項目を調べるために、村行政の担当者に聞き取りを行いました。また、住民には、帰還後の生活再建の状況や復興事業に対する住民の評価と要望についてインタビューを行っています。今後も現地調査を継続し、実態把握につとめます。それと同時に、実態を理論的に整理して研究報告や論文投稿を積極的におこなっていく予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 福島原発事故後、川内村は、「復興のフロントランナー」として、いち早く地域の復旧・復興事業に取り組んできました。しかし、復興事業がインフラの拡充に傾注し、住民の被害実態に十分に対応していないことが問題視されてきました。そうした事態が生じる背景には、復興行財政自体に問題があると考えました。そこで、本調査研究では、復興行財政の問題点を明らかにするべく、川内村の復興政策と国の財政措置を分析しました。  財政資料を入手し、それをもとに復興政策の計画経緯および事業内容について現地で聞き取りをおこないました。ヒアリング対象は、村行政の担当職員と、復興事業で建設された施設や企業の運営主体です。また、住民の被害状況と復興事業による住民生活への影響を調べるために、行政区長および村議会議員、婦人会、神主、住職、一般住民に対してもヒアリングをおこないました。  聞き取り調査をおこなってきた中で、復興事業の計画過程において2つのことが影響したと考えました。第一に、国庫補助率の高い事業を優先的に取り入れてきたことです。第二に、住民と十分に議論する機会を設けずに復興事業を進めてきたことです。  川内村をはじめ被災自治体がそうした事態に陥る背景には、国の復興行財政自体に問題があります。最も大きな問題点は、時間的制約です。財政措置を利用できる期間が限られており、復興事業計画をただちに実行に移すために、住民と十分に議論する時間を設けることができません。さらに、財政措置の対象が限定的であったことです。自主財源が乏しい川内村では、補助率の高い事業を積極的に導入し、その対象が主にインフラ整備とされていたのです。住民の生活再建を考えるならば、時間をかけて住民の意向を尊重する事業がおこなえるような復興行財政でなければならないと考えます。  今後の研究としては、以下の2つの課題についての調査を進めていきたいと思っています。 1.避難者に対する支援政策とその費用負担を把握すること。  川内村では、避難者に対する支援政策はほとんどなされておらず、実質的に避難者支援を受け入れ自治体に委ねている状況にあることがわかりました。今後、受け入れ自治体と避難者に聞き取り調査をおこない、支援政策を包括的に把握し、費用負担の実態を調べていきたいと考えています。 2.原発被災自治体が長期的かつ柔軟に使える財源となる基金制度について研究すること。  今後は、過去の大規模災害の事例から復興基金の財源調達とその運用方法について調べていく予定です。そして、原発被災自治体が今後中長期にわたって地域再生を進めていくための財源として基金制度のあり方を検討していきたいと思います。

その他/備考


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