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地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求 -続き



グループ名 化学物質による大気汚染から健康を守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 森上 展安 さん
URL http://www.npovoc.org/
助成金額 50万円

研究の概要

2014年12月の助成申込書から
 近年、環境空気を汚染する化学物質は急速に変化し、従来は工場環境などでのみであったものが生活環境に瀰漫してきた。毒性が強い窒素を含む有害有機物のシアンガスやイソシアネートなどは精密分析でも検出し難く分かり難い。施工時のみでなく加熱や加工で発生し、特に廃棄物処理過程で発生するものは絶え間なく排出が続き、広範な地域の大気に複雑に伝播し、それとは気づかずとも住民の健康に重大な影響を及ぼしている。しかし、国内にはその研究者がほとんどなく、医療にも司法にも行政にも市民活動にも理解されず、重大な健康被害者が泣き寝入りしている。 汚染化合物種類の分析は市民には手におえなかったが、当会では国産簡易クロマトグラフ型携帯VOCモニター(VOC1000)、輸入比色式有害ガスモニター(ケムキーTLD)、輸入毒性ガス検知バッジ(セーフエア)を用いて、被害者らと協力して分析を実施し、調査方法を指導し、環境にある筈ないと思われていた毒性化合物の発生しやすい場所や条件を明らかにし始めた。測定データや行政による被害各地の分析データを文献資料と照合した解析、および当会指導による健康アンケートなども行っている。それらを広く知らせ、適切な対策を提言し、市民の健康を守りたい。日本環境化学会や茨城県保険医協会、日本技術士会、土浦市教育委員会生涯学習課セミナー、緑ヶ丘市民の会などで発表した。

中間報告

2015年10月の中間報告から
 近年の新しい種類の化学物質による大気汚染が種々なメカニズムによって各地で発生し、健康被害を生じている市民も急増しています。しかし、汚染の実態を専門機関に依頼することは技術的にも経済的にも困難なので、市民自身で専門家に学びながら被害直感に合わせて簡易分析を実施し、検出された化合物の毒性や性質を学び、各自の健康を守るとともに、地域の大気環境対策に役立てようと下記の事業を実施しています。 1.自主的な分析実施調査  簡易クロマトグラフ型VOC(揮発性有機化合物)モニターと毒性ガス試験紙分析という2種の簡易分析器による連続観察を、千葉県野田市産廃処理施設周辺と千葉県小川町廃棄物リサイクルセンター周辺で実施しました。付近の幹線道路などの立地条件が異なるにもかかわらず、イソシアネートとシアン化水素が検出されるなど、廃棄物処理に共通の汚染であることを確認しました。  また、特に排出施設がない地域の室内で、室内設備由来のイソシアネートは連続的に、近隣工事現場由来のイソシアネート作業時間に限って検出され、格段に有害なイソシアネートが環境を広く汚染していることを確かめました。 2.行政などが実施したデータの解析的研究調査  野田市の産廃処理施設で、千葉県と野田市がそれぞれに実施した大気分析結果と被害症状データを整理検討した結果、有害なVOCは不完全な焼却排気にも残留しているが、焼却準備の差配などで格段に多種類多量に発生している事実を確かめました。 3.文献資料の収集と整理 法規で規制されていないが特段に有害なVOCが新しい発生メカニズムで大気に実在することを確かめました。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 この研究では、急速に用途を拡大している含窒素系合成樹脂に関係して、非常に毒性が高い揮発性含窒素有機化合物(VOCs)が身近な発生源から居住環境に広がり、国民の健康に重大な影響を及ぼしていることを明らかにしてきました。 1.廃棄物処理施設周辺  2015年度には新たに埼玉県小川町のリサイクルセンター「彩の国資源循環工場」周辺の健康被害者たちとの調査を行いました。これまで調査していた柏市の産廃施設周辺と同様に、ここでも芳香族アミンは検出されませんでしたが、イソシアネートとシアン化水素および微かなヒドラジンとホスゲンが検出されました。千葉県による施設内部の揮発性有機化合物合計濃度(TVOC)の分布図を解読して、焼却施設周辺よりも、破砕施設で桁違いなVOC発生があることを確かめました。廃棄物処理における燃やさない準備工程の機械的化学作用で、適切な燃焼よりも著しく多種類で多量な大気汚染を発生させること、しかもその種類が強毒性の含窒素有機化合物をも含むことが明白になりました。 2.土木・建築工事の影響  茨城県のある住宅団地において、定点観測地点から50m離れた旧来工法による木造建築が、また80m離れた大量生産の近代的パネル住宅建築が行われました。その期間のVOCモニターによる簡易クロマトグラフ記録と比色式毒性ガス分析器・ケムキーTLDによるイソシアネートテストテープ記録では、50m地点の旧来工法建築での影響は判明せず、80m離れた量産パネル住宅の作業時間に相当してイソシアネートの検出が記録されました。測定点に住む過敏症患者は、基礎工事開始に気づかずに窓を開放して昼寝していたために激しい発作性咳で救急搬送され、その後の工事期間中は閉め切っていたにもかかわらず咳と声枯れ、脱力と朦朧感が出没していました。クロマトグラフ及びクロマトグラフによるTVOC濃度は、時によってはケムキーでのイソシアネート記録及び体調変化とは関係なくて、TVOCが平常通りに低い値でも体調悪化とイソシアネート検出記録がありました。毒性が強い有害化合物の場合には、はるかに低濃度から反応することの表れだと思われます。 3.柔軟剤多用地域  A市とB市の住宅団地それぞれで、近隣の柔軟剤の匂いと共に体調悪化が著しいと被害者らから分析調査依頼がありました。どちらからも予期せぬイソシアネートが検出され、シアン化水素も希薄に検出されましたが、芳香族アミンとヒドラジンは検出されませんでした。イソシアネートの飛来源を多様に仮定して検討しましたが、それら地域には他に見当たりませんでした。数社の市販柔軟剤、消臭剤、洗剤を水に薄め、鉄片を入れて陽の当たるところで撹拌し、濾紙にとって揮発空気を調べたところイソシアネートが検出され、またクロマトグラフが問題地域と一致しました。文献資料・特許資料を調べたところ、柔軟剤の香料は長く香るように、イソシアネートで作るマイクロカプセルに包むなどで徐放粒子にしてあることが分かり、これが発生源と推定しました。

その他/備考


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