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フィリピンイザベラ州サン・マリアノ町のイザベラバイオエタノール製造コジェネレーション発電工場の環境・健康・社会への影響に関する、地域社会を基盤とするモニタリングおよび草の根教育



グループ名 AGHAM(Advocates of Science and Technology for the People)【フィリピン】
代表者氏名 マリア・フィネサ・コシコ さん
URL
助成金額 50万円

発電工場の裏の河川には人工の沈殿池(テーリングポンド)からあふれた残渣が流れ込む。

水質分析用マルチパラメーターセンサーの使用を想定したワークショップの様子。

研究の概要


 フィリピン・イザベラ州でバイオエタノールコジェネレーション工場が2012年に操業開始しました。サトウキビを原料としたバイオエタノールの生産加工とバイオ燃料製造を一体化したフィリピン最大の再生可能エネルギープロジェクトであり、フィリピン企業に加え、日本から伊藤忠と日揮が参加しています。工場近隣の村からは操業による悪臭と灰の飛散への苦情が寄せられており、呼吸器や消化器の疾病の発症が報告されています。工場に近いイラガン川では2012年に魚の大量死があり、工場からの廃棄物が川に投棄された疑いがあります。  絶滅危惧種フィリピンクロコダイルへの影響も懸念されています。政府や事業者は、環境や人々の生活に及ぶ影響を調査する気配はありません。調査を求めているのは貧困にあえぐ、社会の周縁部にいる人々であり、基本的な科学的技能を持ち合わせていないため、水質や土壌、生態系全体を評価するための基礎的な科学的知識を提供する必要があります。  当団体は地元組織とともに住民からの聞き取りや地域の参与観察を開始していますが、今後、(1)調査グループを立ち上げ、(2)環境教育の提供と意識向上をはかり、(3)地域社会を基盤にモニタリングと科学的分析を実施し、(4)得られた情報は会議や報告書を通して広く社会に提供します。

中間報告


 フィリピン最大規模の再生可能エネルギー事業であるイザベラバイオエタノール製造コジェネレーション発電工場(IBCP)では、1万1千ヘクタールの土地で年間70万トンのサトウキビを生産しています。操業開始後、企業が残渣を液体肥料と偽って農地に廃棄していたこともあり、周辺住民は環境・健康影響に加え、自らの生計手段(暮らし)が脅かされる事態を懸念していますが、政府や企業はその影響について積極的にモニタリングを行おうとはしません。  本調査研究では、周辺コミュニティの住民自身が工場の操業によって影響を受ける水質、土壌、生態系の状態を把握し、企業に情報開示を求められるだけの科学的な知識を身につけられるよう、実験機器(設備)を備えたコミュニティによる環境モニタリングシステムを構築することを目指しています。  当団体は、6月に現地のパートナー団体と会合を持ち、本調査研究における取り組みの確認の他、参加住民やボランティアなどの組織化について協力を得ました。また、環境教育やコミュニティによるモニタリングの設計については、科学者との協議を通じて、テーマや内容、手法への助言を得ながら開発を進めています。  水質調査では、エックステック社製の水質分析用マルチパラメーターセンサーを使って溶存酸素(DO)、濁度、pH、温度の測定を行います。土壌調査では、土壌検査キットを用いて、毒性、pH、窒素、カリウム、亜リン酸を調べます。9月には現地を訪れ、トレーニングの準備を行いました。今後は、モニタリング結果を公表するパブリックフォーラムを開催するとともに、コミュニティによる環境モニタリングシステムを確立し、評価を実施後、報告書を作成します。

結果・成果


2015年10月24ー25日にユースやバランガイカウンシルのメンバーを集めて環境教育ワークショップを開催しました。参加者は地域の環境課題について、実践的な形で対処できるような基礎ー中級レベルの環境科学の知識を身につけられるよう、水に関するレクチャー(水循環、水質のコミュニティや環境への影響など)を受け、水質分析用マルチパラメーターセンサーの使い方、環境悪化の具体的な証拠を示す方法論などを学びました。 水質分析については、水質調査のためのモニタリングチームを構成し、上流、下流、灌漑用水池、工場排水溝近く、干潟など3ー5カ所のポイントを決めて、サンプリングを行いました。 調査の結果、ウォーターヒヤシンスに覆われた灌漑用水池の水質の悪化が認めらました。なお、その周辺地域では呼吸器疾患が依然として流行しているとの報告が上がっていますが、バランガイのクリニックには常駐の医師がおらず、コミュニティの健康不安に応える体制が整っていないようです。 今後、本調査結果は工場周辺地域のコミュニティに開示され、住民の教育啓発に使われたり、工場操業に厳しい規制をかけるよう政府にかけあったり、企業への説明責任を求めていく際の材料になると考えています。

その他/備考


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